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第二章

「NTR上等さんって何者なんだろうな」
「自分のこと一切言わないからな」
「どんなイラストか説明する位で」
「プライバシーとか言わないしな」
「具体的にどんな人か」
「全くわからないな」
「女の人か?」
 誰かが言った。
「若しかして」
「ネットじゃわからないからな」
「配信でやらかさない限りな」
「そうしたものだからな」
「NTR上等さんだってな」
「一切わかってないんだよな」
 プライバシーを語らない彼女はというのだ。
「これがな」
「そうなんだよな」
「果たして何もなんだろうな」
「男か女か」
「仕事は何か」
「全くな」
 こう話すのだった、そしてだった。
 この絵師の正体について思った、だが。
 彼等にとっては驚くまでにいやらしいイラスをが観れればそれで充分だった、だからこの絵師について思うことはそれ位でこうした話をしても基本どうでもよかった、だが。
 沙弓は自宅の自分のパソコンの前で一枚の淫靡極まるイラスを完成させて投稿してから微笑んで言った。
「NTR上等の今週の投稿これで終わりね」
「沙弓お風呂よ」
 ここで同居している母の声がした、実は実家で両親と暮らしているのだ。
「早く入りなさい」
「わかったわお母さん」
 娘はすぐに席を立って母に応えた。
「今から入るわ」
「そうしなさい、しかしね」 
 母は部屋を出て自分のところに来た娘に言った。
「あんた部屋着もね」
「どうしたの?」
「真面目ね」
 ファッションだけでなく着こなしも見て言った、スラックスとセーターというラフだが確かに真面目なものである。
「本当に」
「そうかしら」
「子供の頃から何をするにもね」
「真面目っていうのね」
「お勉強も部活も家事も。それでお仕事でもだし」
 それにというのだった。
「SNSでもよね、本当に何でも真面目ね」
「そうかしら」
 母に真相を隠して微笑んで応えた。
「私は」
「凄くね、そんな娘だからお母さんも安心よ」
「そう言ってくれて嬉しいわ。じゃあお風呂に入るわね」
「そうしてね」
 こうした話をした、そしてだった。
 沙弓は風呂に入った、その間イラストのことを考えていたがそのことは誰にも言わなかった。そして。
 誰もが彼女を真面目と言う中で暮らしていきやがていい人と出会い結婚した。だが夫だけはわかった。彼女は真面目でももう一つの顔があると。夜のことでわかったのだった。


別のハンドルネームでは   完


                    2023・11・19 
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