神々の塔
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第四十四話 狐狸その一
第四十四話 狐狸
鬼と聞いてだ、羅は平安京を思わせる階の中で言った。左右の民家からは人の気配は全くせず不気味なものである。
「最初は幽霊やと思ったわ」
「そやな」
施も言ってきた。
「中国人の感覚でな」
「日本での鬼と聞いてな」
「それやと思ったが」
「それが角があって金棒持ってる」
「大柄で虎の服着てて毛深い」
「それで大暴れするな」
「悪い妖怪のことやってんな」
こう話すのだった。
「中国で鬼って幽霊のことで」
「それやと思ったら」
「そうした妖怪やてな」
「聞いた時これが国の違いかって思ったわ、それでや」
羅はこうも言った。
「日本の狸もな」
「中国にもおるけどな」
「中国は狐やからな」
「化かしたりするのは」
「それで狸はむしろヤマネコで」
「あの狸やないしな」
「あの狸の話が多いのも」
このこともというのだ。
「日本独特やな」
「そやな」
「何かな」
トウェインも言ってきた。
「中華街でも狐で鬼は幽霊やけどな」
「ほんま日本やとちゃうからな」
メルヴィルも話に入った。
「鬼は角生えてて」
「狸はイヌ科で多い」
「四国なんか特にやな」
「狸多いらしいな」
「八百八狸っていう位で」
「兎角多いな」
「貉とも混ざってて」
この生きものの話もするのだった。
「貉はアナグマや」
「狸とそっくりで同居してることもあるから」
「間違えられもするな」
「それで一緒にもなるな」
「それも日本やねんね」
綾乃も言って来た。
「鬼は妖怪で狸のお話も多いのも」
「そうやな」
「茶釜にもなったり」
「悪戯するけど憎めへんで」
「狐と一緒に童話にもよお出る」
「そんな役どころやで、うちも好きやで」
綾乃は笑顔でこうも言った。
「狸は」
「そやな、綾乃ちゃん狸見る目暖かいし」
「狐にも他の生きものにもやけど」
「狸にもそやな」
「優しい目で見てるな」
「何かと愛嬌あるし」
そうした生きものだからだというのだ。
「それにたぬきそばも好きやし」
「揚げが入ったお蕎麦な」
「あれやな」
「あれがうどんやときつねうどんで」
「蕎麦やとたぬきそばやな」
「関西はハイカラうどんとハイカラそばがあって」
綾乃は四人に自分達が住んでいる地域から話した。
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