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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
  【第11節】背景設定2: ミッドの地理と歴史について。(後編)



 なお、この作品では、『現段階で公式に登場しているミッドの地名は「大半が」ミッド第一大陸の〈中央部〉の地名である』という設定で行きます。
(前述の「レゾナ」が唯一の例外です。この作品では、『レゾナは〈東半部〉の北東区画の、東の外洋に面した地方名である』という設定にしておきます。)

【ちなみに、英語には一語(いちご)で「四分の一」を意味する「quarter」という単語があるのと同じように、ミッド語には一語で「三分の一」を意味する単語があり、実際に多用されています。
 この作品では、便宜的に〈中央部〉・〈東半部〉・〈西半部〉と翻訳していますが、実際のミッド語では、この「一語で『三分の一』を意味する単語」が使われているので、直訳をすれば、それぞれ〈中央の三分の一〉・〈東側の三分の一〉・〈西側の三分の一〉という表現になります。
 しかし、この直訳では「用語」としてあまりにも扱いづらいので、いささか「誤訳」であることは承知の上で、この作品では、あえて〈中央部〉・〈東半部〉・〈西半部〉という「訳語」を使わせていただきました。 ……という裏設定です。(苦笑)】

 それでは、その〈中央部〉(およそ1800キロメートル四方)を3×3の「九区画」に分けて、一部に「劇場版の設定」や「独自の設定」も取り入れつつ、ここで少し「ミッドの地名」をまとめておきましょう。

【設定としては、それぞれの「区画」が、さらに3×3で九個ほどの「地方」に分かれています。平均すると、各「地方」の面積は三万数千平方キロメートル。日本で言ったら、九州か、それよりも少し狭いぐらいの広さでしょうか。
 また、Vividのコミックス第3巻には『ミッドチルダ南部 エルセア(地方の)第9地区』という表現があるので、『それぞれの「地方」は、またさらに九個ほどの「地区」に分かれている』という設定で行きます。
 ここでは『この「地区」が「面積としては」日本の県とおおよそ同じぐらいの感覚で、普通は、そうした「地区」ごとに日本で言う県庁所在地のような「中心的な都市」が一つずつある』と考えておくことにします。
 時間に余裕のある人は、将棋盤のような9×9のマス目を用意して、個々のマスに「地方名」をひとつずつ書き込んでいってみてください。(笑)】

 まず、ミッドチルダ世界の第一大陸の〈中央部〉は、それぞれ「東の大海廊」と「西の大海廊」とを直線的に結び付けているところの「北の大運河」と「南の大運河」によって、「北側・中程(なかほど)・南側」の三つの土地にほぼ等分されています。
(それら三つの土地を、さらに東西にも三等分したものが、上記の「九区画」です。)
 そして、「中程(なかほど)」の土地の中央部には、広大な「内海(うちうみ)」が広がっています。
 これは、かつての「内陸湖」が(運河によって外海と直接につなげられていたため)海面上昇によって大幅に拡張されたモノで、今では「南北が120キロメートルあまり、東西が400キロメートルほど」にも達しています。

 また、現在では、この「内海(うちうみ)」の東端部と西端部からさらに東西へと伸びた「幹線運河」が、それぞれ100キロメートルほど進んだところで南北に分かれ、そのまま「北の大運河」と「南の大運河」にまでつながっています。
 そのため、この「内海」へは、東西どちらの「大海廊」からも、南北いずれかの「大運河」と「幹線運河」とを経由して、たとえどれほどの大型船であったとしても、直接に乗り入れることができます。
(ミッドでは伝統的にテロ対策の一環として、地球で言う「ジェット機」や「ドローン」がすべて禁止されているため、現在でも、海路は「物資や人員の運搬」にとても重要な役割を果たしているのです。)

【なお、「大海廊」の幅は、最も狭い箇所(かしょ)でも軽く6キロメートルを超えているのですが、幅2キロメートルたらずの「中央ライン」の部分(海面上昇が始まる以前から「大陸縦断運河」として機能していた部分)を除くと、その水深は、当然ながら、最大でも20メートルほど、大半の場所では数メートルしかありません。
 そうした「浅さ」のため、大海廊の「局所的な水位」は、意外なほど暴風や豪雨の影響を受けやすく、また、外海と直接につながっているため、「二つの衛星(つき)による複雑な(しお)の満ち引き」や海流などの影響も受けやすくなっています。
 同様の理由によって、「大運河」や「幹線運河」や「内海(うちうみ)」もまた、それらの影響を受けやすくなっており……要するに、「条件さえ揃えば、たとえ内陸部でも意外なほど波が高くなる構造」になっています。
 StrikerSのアニメ最終話における「後日譚」の部分でも、スバルが活躍するシーンとして「海難事故」の現場が描写されていましたが、ミッドの「内海(うちうみ)」では、この種の海難事故が全く(あと)を絶ちません。
 波が高くなる原因は、基本的に『広さの割には、水深が浅い』という構造上の問題なので、なかなか「抜本的な対策」を立てることができないのです。
(言うまでもなく、レスキュー活動は「対症療法的な対策」でしかありません。とても嫌な言い方になってしまいますが、スバルたちがいくら人命救助に(はげ)んでも、「事故による犠牲者」が減るだけで、「事故そのもの」が減る訳では無いのです。)】


 さて、この東西に伸びた内海(うちうみ)と幹線運河によって、「中央区画」は南北にほぼ等分されているため、この「中央区画」だけは例外的に(九個ではなく)大きく六個の「地方」に分けられています。
 内海の北側には(西から順に)フォルガネア地方、タナグミィ地方(広義の首都圏地方)、クヴァルニス地方があり、同様に、内海の南側には(西から順に)ジェガニィ地方、プロトラム地方、ナードヴァル地方があります。
 また、この「中央区画」は、今もなお、政治的経済的に「ミッドチルダの心臓部」であり続けています。
(ちなみに、「プロトラム」という単語は、彼等自身の古典語で「最初の場所」を意味しており、要するに、「始まりの土地」の同義語です。)
【ミッドとか、プロトとか、ヨーロッパの言語と「偶然にも」音感がとても()(かよ)ってしまっている点については……まあ、御愛嬌ということで。(苦笑)】

 そして、首都圏地方の南岸部、中央やや西寄りに「首都クラナガン」があります。
 旧市街と新市街を合わせて全48区から成り、『総人口は軽く1200万を超える』という、ミッドで最大の都市です。

【なお、Vividのコミックスには、第1巻にも『ミッドチルダ 中央市街地』という記述があり、また第5巻にも『ミッドチルダ市内 魔法練習場』という記述があるのですが、『ミッドチルダという名前の「世界」の中に、また同じ名前の「都市」がある』という状況は、どう考えても不自然です。
 そこで、私も最初は『取りあえず、これらの「ミッドチルダ」は、すべて「クラナガン」の誤植であると考えておけば良いのではないか』と思っていたのですが、よくよく考えてみると、(こと)はそれほど単純ではありません。
 さらには……実に些末(さまつ)な話で恐縮なのですが……第8巻のMemory ; 39では「ミッドチルダ南地区 高町家」と書かれているのに、第16巻のMemory ; 81では(家の外観は「あからさまなコピー絵」であるにもかかわらず!)「ミッド中央区 高町家」と書かれています。(困惑)
 本当はどちらなのか、と自分なりにアレコレ考えてみたりもしたのですが……まあ、結論としては、『あまり細かな地理にはこだわらない方が良い』ということですね!(笑)

 と言いつつ、もう少しだけこだわってみると(苦笑)、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ04」によれば、St.ヒルデ魔法学院は『首都から快速レールウェイで1時間』ほどの場所にあるはずです。
 わざわざ「快速」と言っている以上、おそらくは、リニアのような代物でしょうから、普通に考えて「300キロメートル」どころの距離ではないはずです。
 どう考えても「徒歩で通える距離」ではないのですが、Vividのシリーズには、ヴィヴィオたちが通学に「乗り物」を利用しているような描写が全くありません。
(無印のなのはたちは、海鳴市内でもバスで通学していたというのに!)
 そう考えると、Vividにおける「高町家」の所在地は、実際には、『首都クラナガンよりもずっと北方の、St.ヒルデ魔法学院やベルカ自治領にも(ほど)近い場所(ところ)にある』と想定した方が良いのでしょうか?
 それでも、IMCSの試合会場やナカジマジムなどは、明らかに首都クラナガンの近辺に存在しているはずなので……あるいは、「同サウンドステージ04」で紹介されていたSt.ヒルデ魔法学院と、ヴィヴィオたちが実際に通っているSt.ヒルデ魔法学院とは「別のキャンパス」であるものと想定した方が良いのでしょうか?

 自分なりにアレコレ悩んだりもしてみたのですが……Vividのコミックス第1巻のラストには、「アラル港湾(こうわん)埠頭(ふとう)」などという地名も出て来ますので……この作品では、取りあえず、以下のような設定で行こうと思います。
『新暦72年の3月に地球を離れてミッドに転居して以来、なのはとフェイトはずっと「管理局の官舎」や「機動六課の隊舎」などで生活していたが、76年3月、機動六課の解散と(翌月からの)ヴィヴィオの就学に合わせて、なのはは私費で、St.ヒルデ魔法学院の「首都圏キャンパス」にも(ほど)近い「アラル市の南東地区」に自宅を購入した』
(なお、アラル市の具体的な位置については下記のとおりです。)】

 新暦32年の「遷都百五十年祭」の後、首都クラナガンの市街地は「東側に」大きく拡張されましたが、実のところ、他の方角にはもう拡げようがありませんでした。
 と言うのも、旧市街の南側は、内海(うちうみ)に面しており、西側と北側は、幅の広い運河にぐるりと囲まれていたからです。
 かつて「ほぼ無人の土地」に新たな首都が造営され始めた時点では、『将来、この首都の人口が一千万人をも超えることになる』などとは誰も予想しておらず、内海に面した「ほぼ正方形」の市街地の、南西端から北西端を経由してほとんど北東端にまで至る「相当な規模の運河」が、新首都の物流のために新たに掘り抜かれたのでした。
 レールウェイの終着駅(ターミナル)や空港や次元港などは、すべて、この市街地の東側の郊外に築かれ、後に、それらの施設を呑み込んでゆくような形で「新市街」が造営されていきました。
 そして、今も「人間の居住地」は新市街の東側へ、さらに東側へと海岸沿いに拡張を続けているのです。

【なお、この運河を(はさ)んで、首都「旧市街」の北側に隣接しているのが「アラル市」です。なのはの自宅は、この運河の終着点である「アラル港湾埠頭」の近く、『少し南東へ行けば、すぐに首都クラナガンの「新市街」にも出られる』という絶好の立地にあります。】

 また、タナグミィ地方(広義の首都圏地方)の人口は、おおむね「内海(うちうみ)に面した南端部」と「北の大運河に面した北端部」に集中しており、両者の間には、意外にも(?)首都の巨大な人口を支えるための「広大な農地」が広がっています。
 また、タナグミィ地方の西側にあるフォルガネア地方は、アルト・クラエッタが新暦82年から所属している「陸士147部隊」の所在地であり、タナグミィ地方の東側にあるクヴァルニス地方は、「プロローグ 第8章」にも登場する「メルドラージャ家」(コロナの(とつ)ぎ先)の所在地です。

 一方、内海の南岸部、ちょうど「その内海を(はさ)んで、首都クラナガンと南北に向き合っている場所」には、今も「旧都パドマーレ」と呼ばれる都市があります。
 大昔からの伝統的な市街地は、もうすべて内海(うちうみ)の底に沈んでしまっていますが、『もはや海面の上昇は避けられない』と解った時、パドマーレの人々は、市街地の南側に広がる「ちょうど良い高さの高台(たかだい)」の上に「新市街」を築いて、そちらへ移り住んだのです。
 ミッドチルダは現在、地理上の区分に合わせて、行政的にも三つの「州」に分かれているのですが、パドマーレの人々は今でも、東半部の州都ヴァストーラを「東都」と呼び、西半部の州都ラムゼリエを「西都」と呼び、首都クラナガンを「北都」と呼び、自分たちの都市のことを(あたかもクラナガンと対等の存在であるかのように)「南都」と呼んでいます。
(実際には、もう二百年も前に、新首都クラナガンへの「遷都」が実行されて以来、パドマーレは単に「中央州の州都」であるに過ぎないのですが。)

【なお、これら三つの「州都」の人口はそれぞれ600万人を超えており、「第五位の都市」の人口はせいぜい300万人たらずですから、軽く倍以上の開きがあります。
 そのため、これらの都市圏は「狭義の首都圏」と合わせて、ミッドでは今でも「四大都市圏」と呼び(なら)わされています。
また、人口が100万人を超える「中核都市」は、ミッド全体でも二百個たらずしかありません。
(ごく大雑把に言って、「大半の地方に一個ずつ」といったところでしょうか。)
 実のところ、ミッドは、巨大な都市が意外と少なく、総人口が十数万人から数十万人程度の小さな「地方(いなか)都市(まち)」が非常に多い世界なのです。】

【ちなみに、かつてミッドの「南極大陸」は全面的に氷床に(おお)われていた訳ですが、その大陸がそのような姿になったのは、地質学的には「およそ八百万年前」以降のことで、それ以前の時代には(現在と同様に)その大陸に氷床など全くありませんでした。
 当然ながら、その時代には海水面も現在とほぼ同じ(正確に言えば、もう少しだけ高いぐらいの)水準であり、〈第一大陸〉でもその海水面に合わせた高さで「沖積(ちゅうせき)平野」が発達して行きました。
 その後、惑星ミッドチルダの寒冷化は、何万年もかけてゆっくりと進行していったため、地震の度に液状化していたような軟弱な地盤も、地下水位が(海水面の下降に合わせて)ゆっくりと下降して水分が抜けて行くとともに、次第に「それなりに」堅固な地盤へと変わって行きました。
 もちろん、それから「およそ八百万年」の間に、それらの地盤も、多くが隆起したり、逆に沈下したり、あるいは風雨に浸食されたりもしましたが、「大昔の沖積平野」のうちの何割かは、そのまま「海抜20メートルあまりの高台」となって生き残りました。
(昔、ミッドの人々は、『なぜ、大陸の随所(いたるところ)に「同じような高さの」高台ばかりがあるのだろうか?』と首をひねっていたようですが、実は、そういう理由があったのです。)

 旧暦の時代に海水面が再び上昇すると、当然ながら、それらの高台は「新しく人間が住むのに、ちょうど良い高さの土地」となりました。だからこそ、パドマーレの人々もそちらに新市街を築いて移り住むことができた訳ですが……実際のところ、他にも「故郷の土地が水没しても、すぐ近くにある高台に移り住むだけで済んだ人々」は、相当な数に(のぼ)りました。
 ミッドチルダで、海面上昇に(ともな)う社会的な混乱が最低限に(おさ)えられたのも、ひとつには、これが原因だったのです。
(もうひとつの原因に関しては、また「第一部」で述べます。)】

 次に、「北部区画」の北側の三分の二ほど(普通であれば、「地方」六つ分の土地)は、実に広大な「ベルカ自治領」となっており、外洋に面した北岸部には峻険な〈ヴァニセイム山脈〉がそびえ立っています。
 大昔から、北極圏の「海洋プレート」が南下して、こちらの「大陸プレート」の下に(もぐ)り込み続けているため、双方の大陸地殻同士が衝突し、結果として、その衝突している部分(大陸の北辺部)が隆起しているのです。
(当然に、火山や地震も、他の地域より多くなっています。)

【ちなみに、この自治領の総面積は、20万平方キロメートルを超えており、日本で言うと、ほとんど「本州」にも匹敵しそうなほどの広さです。
「SSX」には『聖王教の信者たちが、ベルカ自治領の中で(それなりにキツい)巡礼の旅を続けており、シスター・シャッハとセインがそれに付き添っている』という描写があるので、私も『この「ベルカ自治領」というのは、それなりの広さなんだろうなあ』と思い、こうした設定を組んでみたのですが……正直、ちょっと広く設定しすぎたかも知れません。(苦笑)】

 そして、ベルカ自治領の南側には(西から順に)ヘレニゼア地方、ヴァゼルガム地方、トゥヴァリエ地方があります。
 まず、西側のヘレニゼア地方は、「キャラ設定1」でも述べたとおり、ニドルス・ラッカードやミゼット・クローベルの故郷であり、また、ルキノやディアルディアの生まれ故郷でもあります。
(ディアルディアについては、「プロローグ 第8章」を御参照ください。)

 次に、ヴァゼルガム地方は、首都圏とベルカ自治領とを結ぶ交通の要衝であり、「北の大運河」に面した南側の土地には、幾つもの港湾都市が並んでいます。
 また、首都クラナガンの「中央ターミナル」からは、ベルカ自治領の入り口まで(大運河の下をくぐって)一直線に「快速レールウェイ」が走っており、ヴィヴィオたちはしばしばこの「中央幹線」に乗り、一時間以上かけてベルカ自治領の南端部にある「聖王教会本部」を訪れていました。
(一般車両用の「中央幹線道」もまた、この線路の西側を並走する形で首都と自治領とを一直線につないでいます。また、この作品では、St.ヒルデ魔法学院の「本部キャンパス」も、ヴァゼルガム地方の中央部、この「中央幹線」および「中央幹線道」の沿線にあるものと考えておきます。)
 一方、トゥヴァリエ地方では、広大な森林の中に(首都圏地方やクヴァルニス地方やザスカーラ地方などでもよく見られる種類の)堅固な岩盤でできた「ドーム状の丘」が点在しており、かつてファビアが祖母とともに暮らしていた「魔女の家」も、その森の奥にあります。

 また、「北東区画」の南西部(トゥヴァリエ地方の東隣)にはザスカーラ地方(ダールグリュン家やサラサール家などの所在地)が、「東の大海廊」に面した中東部には人口の多いリガーテ地方(アイシスの故郷)があります。

 次に、「東部区画」の中央部には〈ゆりかご〉が眠っていた「ほぼ無人の」自然保護区であるオルスタリエ地方があり、その北側にはベガティス地方(後述)が、南側にはセレムディ地方(後述)が、西側にはかつて「スカリエッティの研究所」が存在していたゲランダン地方があります。

【なお、セレムディ地方は、シャーリーやグリフィスや、(のち)に述べるエトラ・ヴァグーザの生まれ故郷であり、また、「いろいろな世界からの移民」やその子孫たちが、意外なほど数多くバラバラと住んでいる地方でもあります。
(エトラについては、「プロローグ 第7章」を御参照ください。)
また、新暦93年には「なのはの娘たち」が初めてベガティス地方の陸士245部隊に配属され、翌年には、それなりの活躍をするのですが……その件に関しては、「プロローグ 第10章」を御参照ください。】

なお、「南東区画」の南岸部の西側にあるアラミィ地方には、早くから〈最初の人々〉の分派が住み着き、それから数百年後には(今から二千年以上も前には)彼等はその土地の気候風土に根差した「独自の文化」を形成するに至りました。
 しかし、その土地の気候風土は「偶然にも」日本列島の太平洋岸の気候風土と酷似していたために、結果として、アラミィ地方の伝統文化は「意外なほど」日本の(南方系の)伝統文化とよく似た代物になりました。
 実のところ、今では首都圏地方でも時おり見られる「高床式の木造建築、板張りの床に(たたみ)を敷く習慣、食事に(はし)を用いる習慣、前で合わせて帯で締める形式の衣服、米と魚を中心とした食文化、居酒屋、抜刀術」などは、すべて、このアラミィ地方の伝統文化に由来するものなのです。
【私は『あれほど多くの文物が「すべて、日本から直接に伝来した」と考えるのは、さすがに無理がある』と思い、こうした設定を組んでみました。】

 そして、「南部区画」の中央やや北寄りには、東西に長く〈アルトセイム山脈〉が走っており、その北側は標高もやや低く中央区画にも接しているため、随分と開けているのですが、一方、南側の(ふもと)は標高もやや高く、一面に森林や草原が広がる自然の豊かな土地になっており、まとめて「南部辺境」と呼ばれています。
 その「南部辺境」の中の、西側がパルテリス地方(フェイトやアルフの故郷)で、中央がシュラウマン地方で、東側がアルマナック地方(エーデルガルトの故郷)です。

【なお、ユーノの生まれ故郷も「表向きは」この南部区画ということになっています。スクライア一族がミッドに滞在する際には、大体いつも、この区画の南岸部(シュラウマン地方のさらに南側)にキャンプ地を設営することになっているからです。
 そのため、ユーノも実際に6歳の春から二年の間は「一族にとっては馴染(なじ)みの深い、その南岸部」にある魔法学校の寮で生活をしていました。】

 一方、「北西区画」の中央部には「フランカルディ家(旧総督家)の本拠地」たるラグジャナム地方があり、その北西区画の南側には(東から順に)クラムディン地方(ヘレニゼア地方の西隣。ルーテシアの生まれ故郷)、アンクレス地方(プレシアとアリシアの故郷)、クルメア地方(山猫としてのリニスの故郷)があります。

【なお、アンクレス地方は、アインハルトの祖先が「ハインツからニコラスまで」13世代に亘って住み続けた土地でもあります。イングヴァルト家は、アインハルトの祖父エーリクの代になって、初めて首都クラナガンの近郊に移り住みました。】

 また、「西部区画」の北東部(フォルガネア地方の西隣、クラムディン地方の南隣)には森林の多いメブレムザ地方(メガーヌの生まれ故郷)があり、また、「西の大海廊」に面した中西部には人口の多いソルダミス地方が、さらに、その南側には何かと問題の多いキルバラ地方があります。

【なお、公式では、エイミィの故郷は「ミッドチルダ中央・西部都市群」という設定になっているのですが、表現が妙に抽象的なので、この作品では、もっと単純に「ソルダミス地方」ということにしておきます。
 この作品では、『エイミィの実家は今もそこにあり、彼女の両親と弟夫婦とその子供たち(実際には、養子)が、三世代で普通に仲良く暮らしている』という設定です。】

 そして、「南西区画」の北東部にはドーブリス地方(カウラ・ゼレミードたちが、かつてギンガとスバルを「製作」した違法研究施設の所在地)があり、また、「西の大海廊」に面した中西部には、原作にも頻繁(ひんぱん)に登場するエルセア地方(クイントやティアナの故郷)があります。
 この地方の総人口は軽く一千万人を超えており、(リガーテ地方やソルダミス地方と並んで)今では「ミッド中央部」の中でも「中央区画の六つの地方」に()ぐほどの人口規模となっています。
 また、クイントやティーダの墓がある「ポートフォール・メモリアルガーデン」は、西の大海廊に面した高台の上にあり、天気さえ良ければ、大海廊の対岸(西半部のヴァイゼラム地方)まで肉眼で確認することができます。

【原作では、エルセア地方は「ミッド西部」と表現されることも多いのですが、この作品では、上記のような設定で行きます。
 なお、「リリカルなのはStrikerS サウンドステージ04」には、『六課の休日に、スバルとティアナがヴァイス陸曹からバイクを借りて、二人で墓参りに行って帰って来る』という描写があるのですが……私が独自に設定した地図をよく見ると、クラナガンとエルセア地方は、軽く1000キロメートル以上も離れています。
『……あれ? この距離をタンデムで一両日中に往復するなんて無理なんじゃね?』
 という訳で、誠に勝手ながら、この作品では、『ミッドには、バイクごと乗り込むことができる夜行列車(快速レールウェイ)が普及していて、スバルとティアナもエルセアまでの道程(みちのり)の大半はそれに乗って移動をした』という設定にさせていただきます。(苦笑)】


 ちなみに、とてもよく似た名前の「オルセア」は、「SSX」に登場する「ルネッサ・マグナス」の故郷で、もう長らく内戦が続いている管理外世界の名前なのですが……。
 この作品では、『オルセアで内戦が始まる前、今から何百年も昔に、その世界から大量の移民が「ヴァイゼン経由で」ミッドにもやって来て、今で言うエルセア地方に住み着いた。「エルセア」という名前も、元来は「オルセア」が(なま)ったものである』という設定で行きます。

【この「SSX」には、『ギンガが、ただ「ルネッサ」という名前を聞いただけで、彼女の出身はオルセアの方か、と推測できてしまう』という描写があり、それに続けて『マグナスという苗字は、ミッドでもよくある苗字だ』という意味内容の会話があります。その二点から、私は上記のような設定を思いつきました。
 なお、この作品では、『マグナスだけではなく、ランスターも「オルセアではよくある苗字」のひとつだ』ということにしておきます。
 さらに、『エルセア地方の対岸にあるヴァイゼラム地方は、その名のとおり〈管3ヴァイゼン〉からの移民が多く住み着いた土地であり、「西部区画」のキルバラ地方も、やはり大昔に〈外1キルバリス〉からやって来た大量の難民が住み着いた土地である』という設定で行きます。】

 また、「ルーフェン」という地名(?)について、ですが……。
 Vividのコミックス第13巻の冒頭では、セインがイクスヴェリアの小さな分身に関して、『次元移動とかしない限りは(本体との)通信が切れたりはしないだろう』と述べているので、私はそれを読んで、『要するに、「この分身が動ける範囲は、ミッドチルダの中だけ」という設定なのだろう』と思いました。
 一方、同13巻の後半では、ルーフェン紀行に関して、コロナとイクスヴェリアの分身が『イクスさんもいっしょに行きましょうね!』→『コクコク』という会話(?)をしているので、私は当然に、『それならば、きっと「ルーフェン地方」はミッドチルダの中の「地域名」なのだろう』と考え、最初は、その判断に基づいてこの作品の基本設定を組み立てていました。
【その段階では、『ルーフェンはミッドの〈東半部〉にあって、〈外35号天〉からの移民が大量に暮らしている地方の名前である』と想定していました。】

 しかし、第14巻を読むと、冒頭の場面でも、全員の集合場所が「ミッド中央次元港」になっており、ルーフェンは「ミッドとは別の世界」として描かれています。
【ヴィジュアルとしては、原作内に「次元航行船」の描写が全く無いので、ちょっと解りづらいのですが、ミカヤの刀が遅れて現地に届けられた時、彼女が『刀剣は次元船でも列車でも持ち運べませんから……発送をお願いしていたんです』と述べているので、「実際には、ヴィヴィオたちは次元航行船と列車を乗り継いで、リオの故郷までやって来たのだ」と解ります。】

 にもかかわらず、イクスヴェリアの分身も、ごく普通にルーフェンに来てしまっているんですが……これは「次元移動」ではないのでしょうか?(困惑)
 さらには、エドガーの妹クレアが、ルーフェンでフツーに働いているんですが……もしかして、ミッドとルーフェンは「とても近い」のでしょうか?(引き続き、困惑中)
 あれこれ考えましたが……この作品では、『イクスヴェリアの分身は「自立型の端末」なので、他の世界へ行っても普通に「活動」をすることはできたが、実は、その間は本体との「連絡」は切れてしまっていた。また、ルーフェンは〈第10管理世界〉で、ミッドからもそれなりに近い』という設定にしておきます。

 なお、第16巻には、ルーフェン在住のキャラクターが『主要世界じゃ(伝統武術よりも)魔法戦競技の方が主流だからね~』とやや寂しげに語るシーンがあり、この言い方だと、『ルーフェンは「主要な世界」のうちには入っていない』という意味にも受け取れてしまうのですが……。
 第一に、民間人がミッドとルーフェンの間をあれだけ自由に行き来している以上、ルーフェンも決して「管理外世界」という扱いではないはずです。第二に、コミックスの描写を見る限り、ミッドからの所要時間もさほど長くはありません。
 ルーフェンが『ミッドの近くに在る管理世界だが、主要な世界ではない』ということは……特定の管理世界が「主要な世界」と呼ばれるためには、やはり、一定の経済力とか技術力とかが要求される、ということなのでしょうか?
あれこれ悩みましたが……やはり、この作品では、『ルーフェンもまた「主要な世界」のうちの一つであり、ただ単に「リオの故郷がルーフェンの中でも割と田舎(いなか)の方だった」というだけのことだ』という設定にしておきます。
 これもまた、悪しからず御了承ください。


 ところで、また話はがらりと変わりますが……最後に「出身世界による髪の色の違い」についても、少しだけ述べておきましょう。

【なお、アニメ版の無印やA’sを観ていると、なのはのクラスメートの中にも「とても地球人とは思えない色合いの髪をした子たち」が何人か混じっているのですが……今回、「地球での描写」に関しては、目をつむっていただければ幸いです。(苦笑)】

 どうやら、ミッドチルダにおける〈最初の人々〉は、頭髪に関しては、ほぼ赤系の色素と黒系の色素しか持っていなかったようです。
 そのため、今でも「生粋のミッド人」は、大半が(各々、シャンテ、ノーヴェ、エイミィ、ミカヤのような)「橙~赤~茶~黒」といった色合いの髪をしています。
 もう少し黄色がかった栗色の髪などもさほど珍しくはありませんが、同じ「赤系統」でも、さらに色の淡い(ミウラのような)桜色の髪や(セッテのような)ピンク色の髪などは、割と珍しい部類に属します。

【なお……地球でも、『小さい頃には金髪だった人が、成長とともに髪の色が濃くなり、最終的には茶髪になる』という話はさほど珍しくもないのですが……ミウラやセッテも、大人になると、もう少し髪の色が濃くなります。この点もまた、悪しからず御了承ください。】

 また、さらに珍しい「鮮やかな金髪」や「青系~紫系の髪」や「緑色の髪」の人たちは皆、他の世界の血筋が混じっているものと考えて、ほぼ間違いないでしょう。
(もちろん、昔から多くの移民を受け入れて来たミッドでは、「それによる差別」などは全く無いのですが。)

 さて、ミッド以外の諸世界に目を向ければ、(クレモナを始めとして)金髪などさほど珍しくもないのですが、ミッドの中で金髪と言えば、それはもっぱら「ベルカ系」の人々です。
【ヴィヴィオやファビアは、もちろんのこと、フェイト(と言うか、アリシア)も、実は、ベルカ系の血筋をかなり色濃く受け継いでいた、という設定で行きます。】

 ベルカ世界では、「北方および東方」と「南方および西方」との間には、民族的にも文化的にも相当な違いがありました。
 髪の色に関しても、北方や東方では色素の薄い人が多く、カリムのような金髪、ヴィクトーリアのような淡い金髪、チンク(と言うか、エリーゼ・エスクラーナ)のような銀髪、ゼストのような灰色の髪の他にも、コロナのような亜麻色の髪、アインハルトのような銀緑色の髪、エドガーのような灰青色の髪なども、よくある色合いでした。
 また、レティやルキノやシャッハやジャニスやウーノ(と言うか、ドーラ・ザロネア)のような紫系の髪も、ベルカの北方や東方では、割とよくある色合いでした。
 一方、南方や西方では(ミッドと同様に)赤系と黒系が多く、イクスヴェリアのような明るい橙色の髪から、ジークリンデのような漆黒の髪まで、さまざまな色合いがあったようです。

【なお、コミックス第10巻には、ヴィクトーリアから『(あなたは)どこか良家のお嬢様だったりするのかしら』と問われたコロナが、慌てて『うちは先祖代々、普通の家庭です!』と答える場面があるのですが……。
 ここで言う「普通」は、『あくまでも、ダールグリュン家のような「元々は貴族だった名家」に比べれば、の話である』という「解釈」をしておきます。
 そして、この作品では、『コロナの実家は相当に裕福な家庭だが、決して「元を正せば貴族」などという家柄では無い。父系の祖先をたどれば確かにベルカ系だが、古代ベルカでは、IRで終わる苗字は典型的な「職人階級(平民)の苗字」だった』という設定で行きます。

 また、「ティミル」の他、「アヴェニール」や「シェンドリール」も、こうしたベルカ系の苗字であり、IRのIが短母音で発音されたり長母音で発音されたりしているのは、ただ単に、ミッド語では『単語の最後の音節の母音が単母音で、その母音にアクセントがついた場合、語尾が単子音であれば、その母音は少し長めに発音される』というのが「一般則」だからです。
(つまり、ティミルは「ティ」の方にアクセントがある、ということになります。)
 もちろん、実際には、「アヴェニール」という名前は(アルカンシェルなどと同様)フランス語の単語から取って来た名前なのですが、この作品では、その点に関しては目をつむらせていただくことにします。(苦笑)】

 そして、ミッドチルダにおいて、ベルカ系以外で「青系~紫系の髪」と言うと、それはおおむね「オルセア系」の人々か、さもなくば「号天系」の人々、ということになります。

【エルセア出身のクイントやハリーは、当然に、オルセア系の血筋を色濃く受け継いでおり、クイントの「()のクローン」であるギンガやスバルも同様です。
 ただし、オルセア全体としては、ティーダやティアナやルネッサのような「茶色、橙色、黄土色」といった色合いの髪の方が、むしろ多数派のようです。】

 なお、リオはルーフェン生まれですが、ルーフェンは元々〈号天〉の植民地だったため、彼女も号天系の血筋を強く受け継いでおり、(従姉(いとこ)のリンナと同様に)紫系の髪になっています。
【また、メガーヌとルーテシアも、実際には「単なるベルカ系」ではなく、号天系の血筋をもかなり色濃く受け継いでいた、という設定で行きます。】

 一方、リンディやセイン、マリエルやラッドのような緑色の髪は、おおむね「ファストラウム系」か、さもなくば「ヴァイゼン系」です。
 ただし、両世界とも、多数派はミッドと同様、(ヴァイスやラグナ、アルトやトーマのように)「茶色ないしは黒」であり、緑色の髪は割と少数派のようです。

【一般には、『ファストラウムやヴァイゼンにおける緑色の髪は、「今から1400年あまり前に滅び去った〈無4ゲボルニィ〉からの大量の難民」に由来する特殊な形質だ』などとも言われていますが、詳しい事実関係はよく解っていません。
(ゲボルニィからの難民は、相当な人数がゼナドリィにも渡ったはずなのですが、ゼナドリィには古来、緑色の髪の人間など一人もいませんでした。あるいは、同じゲボルニィ人の中にも「人種の違い」のようなものがあったのでしょうか。)
 ともかく、この作品では、『リンディやセインは、ファストラウム系の血を、マリエル・アテンザやラッド・カルタス(陸士108部隊で、ギンガの上官だった二等陸尉)は、ヴァイゼン系の血を、それぞれ色濃く受け継いでいる』という設定で行きます。】


 なお、ヴェロッサ・アコースに関しては、『彼は査察官になって以来、日常的に髪を染めて生活をしている』という設定で行きます。
 彼も血筋の上ではベルカ北方系の人間なので、本当はもっと淡い色合いの(アインハルトと同じような銀緑色の)髪をしているのですが、査察官はしばしば正体を隠して行動しなければいけないので、彼は「ちょっとした変装」のつもりで、普段から髪を濃い緑色に染めているのです。
(時には、必要に応じて、もっと違う色に染めることもあるようです。)


 
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