英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第162話
8月1日――――――
~レボリューション・通路~
並行世界のリィン達を元の世界に帰す日、ヘイムダルの空港からレボリューションに仲間達と共に乗り込んだリィンは通路を歩きながらルシエルとベアトリースから報告を受けていた。
「事前に乗船嘆願の申請があった特務支援課、ブライト家一行、そして”空の女神”の一族、”空の女神”の一族の護衛の”星杯騎士”達の乗船は既に完了したとの事です。」
「メンフィル側の戦力としてはプリネ皇女並びにレン皇女とそれぞれの親衛隊、サンドロット将軍を含めた鉄機隊、そして”斑鳩”からはミスルギと彼女の側近であるクロガネも既に乗船している。」
「わかった。サンドロット卿とシズナ達まで同行してくれるのは少し驚いたが、心強い話だ。」
「そうですね。並行世界の”零の至宝”の話によれば、並行世界のリィンさん達を元の世界に送り返した際に戦闘が発生する可能性が高いと言っていましたから、それを考えると戦力は多いに越した事はありませんからね。」
ルシエルとベアトリースの報告を聞いて頷いた後呟いたリィンの言葉に同意したアルティナは静かな表情で並行世界のヴァリマール達を見送った後に”零の至宝”キーアで伝えられたある忠告を思い返してた。
リィン達を元の世界に帰した時に出てくる場所はクロスベルなのだけど、その際クロスベルではクロスベルの人々が様々な勢力の人達の手を借りてクロスベルを支配していた”エレボニアやカルバードでもなく、結社でもない敵勢力”から解放する為の戦闘が発生しているから、貴方達もその戦闘に巻き込まれた際に備えてある程度の戦力を揃えておいた方がいいよ。
「並行世界のキーアさんの話によると、並行世界の兄様達を元の世界に帰した際の時系列はあちらの世界の”巨イナル黄昏”の件が終わってから約半年後との事ですが……一体、”黄昏を超えた本来の歴史のクロスベル”では何が起こっているのでしょうね……?」
「それもそのクロスベルを支配しているのは”エレボニアやカルバードでもなく、結社でもない敵勢力”と仰っていましたが、一体どのような勢力がクロスベルを………」
”零の至宝”キーアの話を思い返したエリスとアルフィンはそれぞれ不安そうな表情で疑問を口にし
「……兄様。Ⅶ組の方々からはロイドさん達のように申請が無かった事もそうですが、兄様も彼らに乗船の誘いの為の声をかけなかったようですが、よろしかったのですか?」
二人と違ってある事が気になっていたエリゼは静かな表情でリィンに訊ねた。
「ああ。――――――ようやく”かけがえのない毎日”を取り戻す事ができたアリサ達をこれ以上戦いに巻き込みたくないからな。」
「そのⅦ組の件ですが、わたしは未だ理解できません。今までの彼らの行動や思考を考えれば、間違いなく彼らの方からリィンさん達の同行を申し出るはずなのに………」
エリゼの疑問にリィンが答えるとアルティナが戸惑い気味で疑問を口にした。
「Ⅶ組が動く大義名分は”身内の保護”か”身内が関わっている何らかの事件”だし、オリヴァルト殿下によるⅦ組を結成した本来の目的はエレボニアに”第三の風”を吹かせる事だ。今回の件にはそのどちらにも該当しないと、アリサ達も理解しているから同行の――――」
そしてアルティナの疑問にリィンが答えながらブリッジに入ったその時
~ブリッジ~
「”同行の申し出をする訳がない”と本気で思っていたのかしら?」
「へ――――――」
自分の言葉の続きを口にしたリィンにとって聞き覚えがある娘の声――――――アリサの声が聞こえ、声を聞いたリィンは呆けた後ブリッジにいる予定外の面々――――――Ⅶ組の面々にシャロン、トワ、アンゼリカ、ジョルジュ、セドリック、クルト、ミュゼ、アッシュ、クレア、レクターがいる事を確認すると更に石化したかのように固まった。
「な、Ⅶ組の皆さんにトワ会長達……!?」
「それにセドリックやクルトさん、クレアさん達まで………」
「………………――――――ミルディーヌ。この”不意打ち”はもしかしなくても貴女の仕業かしら?」
予定外の面々がいる事にセレーネとアルフィンは驚きの表情で周囲の予定外の面々を見回し、目を丸くして周囲の予定外の面々を見回したエリスは少しの間黙った後ジト目になってミュゼに訊ねた。
「ふふっ、”今回の件に関しては”私は直接は関わっておらず、あくまで”仲介役として”しか関わっておりませんわ。」
「”仲介役として”………?一体何の”仲介”を………」
「!まさか……プリネ皇女殿下かレン皇女殿下に今回の件に関われるように交渉したのですか?」
静かな笑みを浮かべて答えたミュゼの答えの意味がわからないアルティナが戸惑いの表情で考え込んでいる中察しがついたエリゼは驚きの表情で推測を口にしてプリネとレンへと視線を向けた。
「大正解♪サプライズ、大成功ね♪」
「そ、その……すみません……本来でしたら私達に話が来た時点でリィンさん達にも話しておくべきでしたのに、直前まで黙っていて………」
「プリネは謝る必要はないよ。騙された方が悪いからね、キャハッ♪」
視線を向けられたレンは悪びれもなく笑顔で肯定し、プリネは申し訳なさそうな表情で答え、謝罪するプリネにエヴリーヌが口元に笑みを浮かべて指摘した。
「直前まで黙っていた理由を含めてお二人には後で色々と伺わせて頂きますが………――――――みんな、何で今回の件に同行を申し出たんだ!?今回の件はみんなが動く大義名分の”身内の保護”でもなく、エレボニアに関する事でもないのに………」
二人の答えを聞いて片手で頭を抱えながら呆れた表情で呟いたリィンはアリサ達を見回して疲れた表情で指摘した。
「フッ、お前は俺達の事を見くびり過ぎだ。」
「並行世界の話とはいえ、あんな気になり過ぎる話を聞いておいて、僕達が動かない訳がないだろう?」
「並行世界のクロスベルはエレボニアに併合されたと聞く。ならば今から向かう黄昏を越えた後に起こっているクロスベルでの戦いにもエレボニアによる併合が何らかの形で関係しているのだから、我等も”エレボニアの第三の風”として並行世界のエレボニアの償いをするのが”筋”というものだ。」
「クロスベルの件に関する理由は無理矢理感があるかもしれないけど、それ以前にわたし達が動く”大義名分”が発生しているから文句は言わせないよ。」
リィンの指摘に対してユーシスは静かな笑みを浮かべ、マキアスは苦笑しながら、ラウラは静かな表情でそれぞれ答え、フィーは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「クロスベルの件以外での皆さんが動く”大義名分”ですか?それは一体……」
「身内――――――短い間とはいえトールズの教員関係者だった並行世界のリィン達もそうだが、何よりも今でも”トールズにとって身内に当たる”リィン達も関わっているのだから、オレ達が動く大義名分として十分過ぎる。」
「二人の事だから大方トールズの退学届けが正式に受理されたから”トールズの身内じゃなくなった”なんてバカな考えをしていたのでしょうけど………クロウやジョルジュの件を考えれば、”トールズの絆”はその程度では切れない事はあんた達もわかっているでしょう?」
「ぁ……………」
「サラ教官……」
セレーネの疑問に答えたガイウスの答えと口元に笑みを浮かべて答えたサラの話を聞いたリィンは呆けた声を出し、セレーネは感動の表情を浮かべ
「フフッ、私の場合は第三学生寮の管理人としてもそうですが、使い魔の一人として同行しなければならない事をお忘れではありませんか、”旦那様”♪」
「ちょ、ちょっと、シャロン!?」
「メイドのあんたへの態度を見ていたら、あんたとメイドの使い魔契約はベルフェゴールの暗示による強制契約であるという話も怪しくなってきたわね……」
からかいの表情を浮かべてリィンを見つめて声をかけたシャロンの言葉にその場にいる全員が冷や汗をかいている中アリサとセリーヌはジト目になってそれぞれシャロンとリィンに視線を向けて呟いた。
「ま、Ⅶ組のしつこさと諦めの悪さを忘れていたお前が悪いって事だぜ、リィン。」
「アハハ、それはそうだけど、まさかクロウにそれを言われるなんてね。」
「そうだよね~。リィンもクロウにだけは言われたくないだろうね~。」
肩をすくめて指摘したクロウの言葉を聞いたエリオットは苦笑し、ミリアムは口元に笑みを浮かべて指摘した。
「ぐっ……そこで昔の話を掘り返さなくてもいいじゃねぇか!?」
「アハハ……それとリィンさん。私達がこうしてこの場にいるのは”アルノール王家並びにエレボニア政府から正式に出された特別実習の依頼”でもあるんです。」
エリオットとミリアムの指摘にクロウが突っ込むとその様子を苦笑しながら見守っていたエマが説明を続けた。
「え………”王家と政府から正式に出された特別実習の依頼”、ですか?それは一体……」
「それは勿論、並行世界のリィン君達を送り返す為に同行するエレボニアの重要人物――――――”エレボニア総督”であるリィン君自身と皇太子殿下、そしてミュゼ君の護衛さ。」
「リィンさんとセドリック、ミルディーヌの……!?というか今更だけどどうしてセドリックまで、同行する事に………」
セレーネの疑問に答えたアンゼリカの答えを聞いて驚きの表情で声を上げたアルフィンは困惑の表情でセドリックに視線を向け
「僕も”紅き翼”の一員としてⅦ組の皆さんの力になりたいという事もあるけど………並行世界の僕は並行世界のリィンさん達に相当な迷惑をかけたという話だから、”並行世界の僕の代わりの償い”としても並行世界のリィンさん達の力になりたいと思って同行を決めたんだ。」
「……勿体無いお言葉です、皇太子殿下。」
「アハハ、ルーファス達と比べたら皇太子殿下はそんなに大した事はしていないし、そもそも皇太子殿下はボク達の世界の皇太子殿下じゃないんだからあんまり気にする必要はないと思うよ~。」
「クク、今の皇太子殿下の言葉を俺達の世界の皇太子殿下が聞いたらどんな反応をするんだろうな?」
セドリックの説明を聞いた”リィン”は謙遜した様子で答え、”ミリアム”は無邪気に笑い、”クロウ”は口元に笑みを浮かべて呟いた。
「……なるほど。王太子殿下の同行の理由を考えれば王太子殿下御付の護衛のクルトさんは当然として、王太子殿下同様”紅き翼”の一員であったアッシュさんも今回の件に同行している訳ですか。」
「ハッ、”子供達”の二人と比べたら俺がここにいる理由は筋が通っているだろうが。」
「おい、アッシュ……何もそこでわざわざ少佐達を槍玉に挙げる必要はないだろうが……」
アルティナは静かな表情で呟いた後アッシュに視線を向け、視線を向けられたアッシュが不敵な笑みを浮かべて答えるとクルトが真剣な表情でアッシュに注意した。
「クレアさんとレクターさんまで同行している事には本当に驚きましたけど……やはりお二人とも王太子殿下とミュゼの護衛の為ですか?」
「それもあるが、今のエレボニアにとって王太子殿下や公女同様絶対に失う訳にはいかない重要人物となったエレボニア総督であるシュバルツァーが並行世界での”有事”に巻き込まれた際の護衛としてもそうだが、”子供達”としての知恵や力を振るって今回同行していない”灰獅子隊”のメンバーの代わりにシュバルツァー達の力になれと放蕩皇子直々からの”勅命”だ。」
「戦争の件を考えれば、私とレクターさんの事は信用できないでしょうから、いざとなれば私達の事は”捨て駒”として扱っても構いませんので、どうか私達も同行の許可をお願いします、総督閣下。」
「クレア………」
「…………………………」
リィンの質問にレクターは肩をすくめて答え、静かな表情で答えた後リィンに頭を下げたクレアの様子を見たミリアムは心配そうな表情を浮かべ、”リィン”は複雑そうな表情で見守っていた。
「幻想機動要塞でも伝えたように、貴女達はこれからのエレボニアにとって必要な人達なのですから自分達の命を軽々しく扱う考えは止めて下さい。それと改めてにはなりますが、貴女達の乗船も許可しますし、心強くもあります。」
「総督閣下………寛大なお心遣い、ありがとうございます………」
リィンの気遣いにクレアは感動した表情でリィンを見つめた後再び頭を下げて感謝の言葉を口にした。
「クク、よかったな~、クレア。あの様子ならお前もシュバルツァーのハーレムの一員になれる可能性はまだ十分に残っているぜ。」
「レ、レクターさん!?それ以前に私にはそんな資格はありませんし、そもそも総督閣下にとって7歳も年上の女性なんて迷惑でしょうし……」
レクターはからかいの表情を浮かべてクレアをからかい、レクターにからかわれたクレアは頬を僅かに赤らめて反論し
「ニシシ、リィンは年齢差なんて絶対気にしないよ~。だってクレアよりも滅茶苦茶年上のベルフェゴール達を侍らせているし。」
「年齢差の点に関してはミリアムの言う通りリィンも反論は絶対にできないね。」
「そうね。異種族に限らず、人間でもクレア少佐と同じくらい年齢差があるシャロンにも手を出したのだし。」
「う”っ………」
(シャロンさんにまで手を出したって………本当に並行世界の俺は一体何を考えているんだ?)
レクターに続くようにミリアムもクレアをからかい、フィーとアリサはジト目でリィンを見つめ、二人の言葉に反論できないリィンは唸り声を上げ、その様子を見ていた”リィン”は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「うわ~……ロイド君以上の”タラシ”な男ね、リィン君って。」
「いや、何でそこで俺の名前が出てくるんだよ。」
「それとエステルだけは他人の事は言えないよ……」
「フフ、敵だった”氷の乙女”殿をも惹きつけるとはさすが弟弟子かな。」
「敵味方関係なく人を惹きつける――――――まさに”大英雄の器”でござるな。」
一方その様子を見守っていたエステルはジト目で呟き、エステルの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で、ヨシュアは呆れた表情でそれぞれエステルに指摘し、シズナは呑気な様子でリィン達の状況を面白がり、クロガネは静かな口調で今のリィンを現す言葉を口にし
「うふふ、デュバリィもうかうかしていられないわね♪」
「うむ。しかも”氷の乙女”にとってシュバルツァーはかつて忠誠を誓った主の息子でもあるのだから、忠誠心も合わさればかなりの強敵になるだろうな。」
「ちょっ、何でそこで私まで槍玉にあげるんですの!?」
エンネアはからかいの表情でデュバリィに声をかけ、エンネアの言葉に頷いたアイネスはクレアを見つめながら推測し、エンネアにからかわれたデュバリィは驚いた後ジト目になって反論した。
「ア、アハハ……えっと、話を戻しますけどジョルジュ先輩まで同行される理由はもしかして、トールズの技術方面での協力者としてですか?」
「ああ。本当なら僕よりもリベールに帰国したティータ君の方がこの場にいるのが相応しいと思うのだけどね。」
「全く持ってその通りだね。あの可憐なティータ君とジョルジュを比べれば、まさに月とスッポンだよ。」
「もう、アンちゃんったら………ジョルジュ君もクロウ君やリィン君達のように、例えどんな理由があってトールズから離れたとしても、”トールズの絆”は切れないのだから、そんな寂しい事を言ったらダメだよ!」
混沌とした状況になりかけている事に苦笑したセレーネはジョルジュに視線を向けて訊ね、セレーネの疑問に答えたジョルジュは苦笑し、ジョルジュの言葉に頷いたアンゼリカに呆れた表情で溜息を吐いたトワは真剣な表情でジョルジュに注意し
「ああ……勿論それもわかっているよ、トワ。」
トワに注意されたジョルジュは静かな表情で頷いた。
「さて、話は纏まったようですし、そろそろ行きましょう。」
「え、ええ。………その、出発する前にもう一度確認しておきたいのですけど、本当にエイドス様達まで同行する事にされてよかったのですか?」
エイドスに声をかけられたリィンは頷いた後少しの間黙り、エイドスに遠慮気味で訊ねた。
「?どういう意味でしょうか?」
「今までエイドス様達がそれぞれの時代に帰還されなかったのは、並行世界の俺達同様時空間が乱れていた事と聞いています。そしてその時空間の乱れが正常に戻った事で並行世界の俺達を帰還させられるのですから、エイドス様達もわざわざ並行世界で巻き込まれるかもしれない戦いに巻き込まれる前にそれぞれの時代に帰還された方がいいのでは……?」
「それは勿論、”空の女神”として並行世界の方々を無事に元の世界に無事に帰す義務があるからですよ。”黄昏”の件もそうですが”零の至宝”誕生の切っ掛けも元を正せば、私が人々に与えた七の至宝(セプト=テリオン)が原因ですからね。」
「今更”建前”はいいから。で、本音は?」
リィンの疑問にエイドスは苦笑しながら答えたがそこに間髪入れずにエステルがジト目でエイドスに訊ね
「もうすぐお母様達ともお別れしなければならないのですから、並行世界の現代のゼムリア大陸でも少しだけ”ひと暴れ”して、並行世界のゼムリアの人々に”私”の正しい姿を知ってもらう為です♪」
エステルの疑問にエイドスが笑顔で答えるとその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「どうせ、そんなことだろうと思っていましたわ………」
「というかわたし達の世界でもあれだけ”ひと暴れ”をしていながら、まだ暴れたりないんですか。」
「アハハッ!エイドスの存在もそうだけど、エイドスの”ひと暴れ”によって並行世界の僕達がどんな反応をするか今から楽しみだねぇ?」
「笑いごとやないやろうが、ワジ!?」
「お願いしますから、私達の世界の時のように並行世界の七耀教会を混乱させる事もそうですが、西ゼムリアの各国を周ってのコンサートの件のような世界中を騒がせるような大掛かりな事は絶対に止めて下さい、エイドス様……!」
我に返ったフェミリンスは呆れた表情で呟き、ティオはジト目で呟き、腹を抱えて笑っているワジにケビンが疲れた表情で突っ込み、ルフィナは必死の表情でエイドスに注意し
「アドルさん、フィーナさん。いざとなったら、エイドス様を止める事の御協力、お願いします。」
「勿論です。並行世界の方々にまで迷惑をかける訳にはいきませんから。――――――そうですよね、アドルさん?」
「え?う、うん、そうだね、アハハ……」
真剣な表情で頼んで来たリースの頼みに対して頷いたフィーナはアドルに同意を求め、同意を求められたアドルは一瞬呆けたがすぐに苦笑しながら同意し
「フフ、幾らエイドスさんでも自重しますよ。」
「その考えは甘すぎるの。エイドスの事だから、間違いなく”やらかす”の。」
「それと”ただの新妻”を名乗る事もそうだけど、年齢を大幅に誤魔化す事も間違いなくするでしょうね。」
「ク、クレハ、”そこ”は気にすべき所じゃないような気がするんだけど……」
苦笑しながら呟いたエレナの推測にノイがジト目で指摘し、ジト目で呟いたクレハの推測にナユタは冷や汗をかいて指摘した。
(それぞれの時代への帰還で思い出したけど………ミントちゃん、もしかして未来のサティアさんもそうだけどジェダルさん達もそれぞれの時代に帰したの?)
(未来のサティアさんはまだだけど、ジェダルさん達は既に元の時代に帰したよ。)
ある事を思い出したツーヤは小声でミントに訊ね、ツーヤに訊ねられたミントは小声で答えた。
「それにしても今から向かう並行世界でクロスベルを”エレボニアやカルバードでもなく、結社でもない敵勢力”から解放する為の戦闘が起こっているとの事だけど……”本来の歴史の黄昏を越えた半年後のクロスベル”では一体何が起こっているのかしら……?」
「しかも”黄昏を越えた半年後”ですから、あたし達の世界でも発生する可能性があるという事にもなりますからあたし達にとっても他人事ではありませんからね……」
「……ま、それに関しては今から向かう並行世界に着いた際にわかるだろうが………もしかしてキー坊なら何か知っているんじゃねぇのか?」
「あたし達と一緒にいるキーアちゃんは10年後のキーアちゃんなんだから、並行世界での出来事を経験したあたし達が今の時代のキーアちゃんに話していると思うから、多分知っているんじゃないかな~?」
不安そうな表情で疑問を呟いたエリィとノエルに静かな表情で指摘したランディはキーアに視線を向け、ランディに続くように推測を口にしたシャマーラもキーアに視線を向けた。
「確かに知ってはいるけど、未来を改変させない為にキーアは基本的に未来の事は言えないってわかっているのに、聞かないでよ~。」
「え、え~っと……未来のキーアちゃん、あたしの成長した姿も含めて未来のネタバレを既にそこそこしているよね?」
「まあ、ネタバレと言っても”個人”に留まっていて、クロイス家によるクロスベル騒乱や”巨イナル黄昏”等と言った歴史に残るような大事件のネタバレはしていませんが……」
「というか今から向かう並行世界は私達の世界にとってはある意味”未来の世界”でもあるのですから、今更未来云々を気にする必要はないような気もするのですが……」
疲れた表情で反論したキーアに対してユウナは冷や汗をかいて困った表情で指摘し、エリナとセティはそれぞれ苦笑していた。
「フフ、皆既に戦意は十分のようですね。御子殿、そちらの準備は大丈夫ですか?」
「うん、私の方はいつでも大丈夫。」
「並行世界に行く前に一つだけ確認したい事がある。俺達を並行世界に向かわせるのはいいが、俺達を帰還させる際にお前の力の減り具合によってはある程度の期間を並行世界で過ごさなければならないといった事態にはならないだろうな?」
周囲の様子を見て微笑んだリアンヌは”零の至宝”キーアに確認し、リアンヌの確認に”零の至宝”キーアが頷くとレーヴェが真剣な表情で”零の至宝”キーアに訊ねた。
「それってどういう事?」
「彼女が僕達を並行世界に向かわせる際に彼女もそれなりの力を消費すると想定して、その”力の消費”に帰りの分も残っているかどうかを確認の為にレーヴェはあんな質問をしたんだと思う。」
「……確かに幾ら”至宝”の力とはいえ、並行世界に移動させるのだからそれなりの力は消費するでしょうね。」
「そうね……そしてその力の回復の為に長期間私達が向こうの世界に留まる事は向こうの世界にとってもそうだけど、私達にとってもあまりよくない事だろうし……」
レーヴェの確認に対して疑問を抱いたエステルにヨシュアが説明し、目を細めて呟いたセリーヌの推測に頷いたエマは真剣な表情で呟いた。
「その点に関しては大丈夫。……だけど、セリーヌのいう通り並行世界の移動には”力”を結構使うから向こうの世界に行けば、貴方達の帰りの為以外で私を頼る事はできないよ。」
「つまりは俺達の世界のクロスベルで今起こっている戦闘にあんたの力による何らかの助力は期待できないって事か。」
「問題ない。俺達を元の世界に帰してくれるだけで十分だ。」
「そうだね~。それにボク達と一緒に来るこっちの世界の人達の戦力だけでも正直”戦力過剰”と言ってもおかしくないくら戦力が充実しているから、大丈夫だと思うよ~。」
”零の至宝”キーアの説明を聞いて疲れた表情で溜息を吐いた”クロウ”に”リィン”が静かな表情で指摘し、”ミリアム”は呑気そうな様子でリィン達を見回した。
「基本的にそちらにとっては”部外者”である俺達の方から積極的にそちらの世界での出来事に関わらない方針なんだが………それはともかく、そろそろ出発しましょう、レン皇女殿下。」
「ええ。――――――レボリューション、離陸開始。なお、ヘイムダルから出た後はステルスモードを起動させない。」
「イエス・マム!!」
困った表情で”ミリアム”に指摘したリィンは気を取り直してレンに声をかけ、声をかけられたレンはブリッジにいるメンフィル帝国の軍人達に離陸の指示を出した。
そしてレボリューションはヘイムダルの空港から離陸してヘイムダルから離れるとステルスモードを起動させ、更に”零の至宝”キーアの力によって開いた並行世界に移動する為の異空間の大穴へと突入し、並行世界である”リィン”達の世界へと移動した――――――
後書き
前回予告詐欺みたいな事をしてしまい申し訳ありません(冷や汗) 次回こそは創ラストダンジョン突入まで行くと思います……多分(オイッ!?)
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