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X ーthe another storyー

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第四十二話 虚無その十二

「そうなりますね」
「だから」
「忘れていいんですよ、僕のことは」
「いいんだね」
「昴流君を傷付けて北都さんを殺した人間ですから」
「けれど彼は」
「忘れられないで、ですね」
「そして」
 そのうえでというのだ。
「今もだよ」
「心を縛るつもりはないですよ」
「前に向かって欲しいんだね」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「僕はです」
「このままだね」
「地獄に行って」
 そしてというのだ。
「過ごすだけですから」
「地獄に落ちる様な人間のことは思うことはない」
「そうです、昴流君は天国に行きますし」
 死ねばというのだ。
「ですから」
「君のことは忘れて」
「そして生きて欲しいです」
 こう言うのだった。
「あの方々と一緒に」
「天の龍のだね」
「そうです、もうです」
「彼はだね」
「僕のことは忘れて」
「そうしてだね」
「生きて欲しいです、縛ってしまいましたが」
 これまでそうしてきたがというのだ。
「これからはです」
「もう解放されたから」
「そうして欲しいです、それに」
「さらにだね」
「幸せになって欲しいです」
「そうなんだね」
「目は治りますね」 
 昴流のこのことも話した。
「そうですね」
「この戦いが終わる頃には手術をね」
「受けられますね」
「彼女の目があるから」
「北都さんの」
「アイバンクに登録されていて」
 北都の目がというのだ。
「その目がね」
「それは何よりです」
「けれど本来は」
 牙暁は自分の話に笑顔になった星史郎に言った。
「君の為にね」
「北都さんは登録してくれていましたね」
「そして目は保管されていたけれど」
「知っていましたよ」
 星史郎は正直に答えた。
「そのことも」
「それなら」
「僕は北都さんを殺したんですから」
 だからだというのだ。
「命という大切なものを奪いました」
「それで目までというのは」
「しませんでした、そしてやがては」
「彼がああすると思っていて」
「置いてもらっていました」
 北都の目をというのだ。
「そうでした」
「そうだったんだね」
「はい、そして」 
「彼女の目はだね」
「一つは昴流君に。そして」
「もう一つの目は」
「どなたか。困っている方が」
 そうした者がというのだ。
「使って頂ければ」
「そう思っているんだね」
「そうです。しかしあの時から十年経っても」
「北都さんの目は生きていてね」
「使えるのですね」
「きっと。彼女の想いがね」
 北都のそれがというのだ。 
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