| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

X ーthe another storyー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十二話 虚無その六

「悲しい、辛い気持ちははじめてです」
「あの」
 哪吒がここで封真に言った。
「封真さん、今」
「どうした」
「泣いています」
「そう言うお前もな」
 見れば二人共涙を流していた。
「泣いている」
「僕が、ですか」
「そうだ、悲しいな」
「これが悲しいという気持ちですか」
「そうだ」
 その通りだと答えた。
「今の俺達の感情がな」
「不思議ね」
 颯姫も言ってきた、見れば彼女もだった。
「悲しいと思ったこともなくて」
「今の様にですか」
「泣いたことなんてなかったわ」
 こう遊人に答えた。
「一度も。けれど」
「それでもですね」
「今は悲しくて」
 そしてというのだ。
「涙が自然に」
「そうですね、僕も泣いていないですが」
 遊人は確かにそうだった、だが。
「この通りです」
「悲しいのね」
「はい」
 颯姫に答えた。
「心から」
「全くだな、友達だったんだ」
 草薙も言って来た、その顔で。
「死んで悲しい筈はないさ、ただな」
「それでもですか」
「星史郎さんは自分から死にに行ったんだろ」
 封真にこのことを話した。
「だったらな」
「それならですね」
「相手を怨むつもりにはなれないな」 
 こう言うのだった。
「それに相手の人は」
「はい、お姉さんをです」
「星史郎さんに殺されてたな」
「そうでした」
「そうだよな、だったらな」
「お互い様ですか」
「尚更怨む気にはなれないな」
 そうだというのだった。
「とても」
「そうですね。それに星史郎さんは相手を攻撃すれば」
「自分が死ぬことをわかっていてな」
「そうしました」
 攻撃を出したというのだ。
「ですから」
「自殺みたいなものだな」
「そうですね」
 哪吒もそれはと答えた。
「僕も相手の人を怨めません」
「そうです、怨んでも何もなりません」
 遊人も言ってきた。
「ですから」
「相手の天の龍を怨まず」
「今は星史郎さんを弔いましょう」
「そうすべきですね」
「連れて帰ったうえで」
 今はもの言わぬ身となった星史郎を見て話した。
「そうしましょう」
「ええ、では戻りましょう」
 颯姫は涙を拭ってから応えた。
「ここにいても何にもならないわ」
「そうだな、まずは戻ろう」
 封真は颯姫のその言葉に応えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧