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星河の覇皇

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第八十五部第二章 日本大使館その三十二

「その後はね」
「いよいよですね」
「お鍋よ」
「河豚鍋ですね」
「河豚は素晴らしいお魚ね」
「はい、お刺身も唐揚げも美味しいですが」
「お鍋にしてもね」
 この料理もというのだ。
「実に美味しいわ」
「全くですね」
「これは日本料理だけれど」
 それでもとだ、カバリエは金に話した。
「かつては中国でも食べていたわ」
「唐代の詩でもありましたね」
「ええ、食べていたのよ」
 かつての中国でもというのだ。
「確かに毒があってね」
「多くの犠牲が出ましたね」
「それでもね」
「河豚を食べていましたね、あの国でも」
「確かにね」
「そうでしたね、しかしここまで美味しいと」
 さらに言う金だった。
「毒があろうとも」
「食べたくなるわね」
「恐ろしいまでに美味しいお魚です」
「全く以てね」
「河豚を食べて死ねるのなら」
 金は微笑みこうも言った。
「本望である」
「そうした言葉もあるわね」
「極論だと私は思いますが」
「他にも美味しいものは沢山あるわね」
「お魚にしても」
「そうね、けれどそうした言葉が出るまでにね」
「河豚は美味しいですね」
 金は言った、そして。
 ここでその鍋が来てだった、二人で食べはじめた。そうしつつ今度はカバリエがこんなことを言った。
「まさにね」
「その美味しさですね」
「ええ」
 まさにというのだ。
「河豚はね」
「見事です、では」
「これからですね」
「食べましょう」 
 その河豚鍋もというのだ。
「楽しんでね」
「はい、死にはしませんが」
 それでもというのだ。
「そうしましょう」
「勿論この河豚も毒はないけれど」
「それでもですね」
「河豚を食べると」
 それはというのだ。
「どうしてもね」
「毒のことが意識されますね」
「河豚に毒があることは皆知っているから」
 だからだというのだ。
「だからね」
「どうしても意識してしまいますね」
「そうなのよね」
「これだけ美味しいですが」
「そう、毒があることがね」
「河豚の代名詞にもなっていますね」
「本当にね」
「毒があろうとも」
 それでもとだ、ここで金はさらに言った。 
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