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イベリス

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第百二十二話 知れば知る程その十二

「幾ら謀略家でな」
「忠誠心がなくて」
「それで裏切ってもな」
 それも何度もだ。
「けれどな」
「用いざるを得なかったんですね」
「そうだったんだよ」
「それも凄いですね」
「けれどな」
 それでもというのだ。
「有能でもな」
「最後はですね」
「行いが酷過ぎてな」
 それが為にというのだ。
「もうな」
「信用されなくなって」
「いいものじゃなかったんだよ」
 その最期はというのだ。
「二人共な」
「そうですか」
「ああ」
「幾ら有能でもですね」
 咲はそれでもと言った。
「信用出来ないなら」
「そうした人間はな」
「最期はいいものじゃないですね」
「それで言われることはな」
 それはというと。
「自業自得とかな」
「そうした言葉ですか」
「それでその片割れがな」
 タレーランがというのだ。
「言った言葉がな」
「その言葉ですね」
「ああ、だからよかったらな」
 咲にさらに話したのだった。
「甘さもな」
「コーヒーのですね」
「そっちもな」
 是非にというのだった。
「楽しんでくれよ」
「お砂糖入れましたし」
「ああ、あとな」
 マスターは笑ってさらに話した。
「お菓子もな」
「一緒にですか」
「口にすればいいさ」
 こちらもというのだ。
「コーヒー飲む時はな」
「欠かせないですね」
「紅茶だってそうだけれどな」
 こちらの飲みもののに関してもというのだ。
「コーヒーを飲む時はな」
「お菓子を食べてもですね」
「いいんだよ、それでも甘さをな」
「感じられるんですね」
「だからそうした意味でもな」
「恋の様に甘い、ですね」
「そうなんだよ」
 こう言うのだった。
「その甘さを楽しんでくれよ、そしてな」
「そして?」
「恋ってのはな」  
 こちらもというのだ。
「例えられるみたいにな」
「甘いんですね」
「そうだよ、その甘さもな」
「味わうことですね」
「そっちは心でな」
「コーヒーは舌で」
「ああ、そっちもな」
 恋の甘さもというのだ。
「味わってな」
「楽しむことですね」
「わかりました」
 砂糖を入れて甘くなっているコーヒーを味わって頷いた、そして実際に近藤への気持ちに甘さを感じだしていたのだった。


第百二十二話   完


                  2023・8・8 
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