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傀儡

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第一章

                傀儡
 その会社では次の社長を誰かにすべきかということで社内で色々と言われていた、その中で専務の渡部亘男、吊り上がった小さな目と陰険そうな曲がった口元に高い鼻を持つ白髪の男は社内の重役達に言った。
「あれだ、どうせ次の社長はな」
「はい、傀儡ですね」
「実際に会社を動かすのは我々ですから」
「只のお飾りですね」
「それに過ぎないですね」
「むしろ有能な奴が社長になってな」
 そうなりというのだ。
「色々やってもらった方がな」
「嫌ですね」
「我々としては」
「もうそれならです」
「社長の椅子に座っているだけでいいですね」
「そうした人間で」
「そんなの誰でも出来る」
 渡部は軽い気持ちで言い切った。
「だからな」
「はい、適当な人を選んで」
「それで社長に据えますね」
「そうしますね」
「ああ、創業者一族や株主は五月蠅いけれどな」 
 それでもというのだ。
「もうな」
「ただ座っているだけ」
「それだけの人にしますね」
「次の社長は」
「ああ、誰でもいいさ」
 渡部はここでも軽い気持ちで言ってだった。
 そのうえで自分の言葉通りに社内で適当な人間を選んだ、値頃康允という社員だったがその彼が社長になってだ。
 彼を知る者は驚いてだ、誰もが言った。
「えっ、あいつが社長!?」
「嘘だろ」
「あんな奴が社長か」
「うちの会社大丈夫か」
「潰れるんじゃないか、うちの会社」
「何で社長になったんだ」
 こう口々に言う、だが。
 渡部は安心しきってだ、重役達にまた言った。
「座ってるだけなんだぞ」
「はい、今度の社長は」
「そんなこと誰でも出来ますからね」
「問題ないですね」
「本当に」
「あいつ国立大出て総合職なんだ」
 即ち会社では出世する学歴と職種だというのだ。
「だったらな」
「まあ社長にしてもです」
「抜擢ということで説明がつきます」
「周りが幾ら言ってもです」
「それで格好がつきますし」
「あいつが社長だ」
 渡部は態度を変えず述べた。
「社内で色々言う連中がいてもな」
「傀儡ですからね」
「実際に会社動かすのは私達ですし」
「本当に誰でもいい」
「そういうことですね」
「ああ、だからあいつでいいんだ」
 誰が社長でも問題ないからとだ、こう言ってだった。
 渡部は会社の中で値頃を知る者が色々言っても全く気にせず彼を正式に社長に就けた、だが会社は何かと問題が起こるものであり。
 彼が社長になってすぐに不祥事が起こった、それで会社自体が世間の批判に晒されることになったが。 
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