クライマックスが終わって

「もうね」
「そうなんだ」
「阪神のマーク見て笑うのは」
「ついつい嬉しくてね」
「それはわかるけれど」
「それでもなんだ」
「顔に出し過ぎなのは」
　それはというのだ。
「やっぱりね」
「気持ち悪いから」
「抑えてね」
「そうしないと駄目だね」
「うん、それでね」
　部長は寿にさらに言った。
「これから部活だけれど」
「部活に集中だね」
「集中しないと」　
　さもないと、というのだ。
「怪我するからね」
「うん、それはね」　
　寿もそれはと答えた。
「切り替えてね」
「それでだね」
「そしてね」　
　そのうえでというのだ。
「やっていくよ」
「そこ頼むよ」
「塾に行ってもね」
「そっちでは勉強に専念だよ」
「そうしていくよ」
　寿はこのこともわかっていた、そしてだった。
　部活の時は部活に専念し塾それに勉強でもだった。
　そちらに専念していた、そうした分別は備えていた。だが一旦そうしたところから離れるとこれがだった。
　頭の中は阪神で一杯であり言うのだった。
「シリーズで終わりじゃないぞ」
「ああ、そうなのね」　
　家の中で言うと妹の千佳に言われた。
「よかったわね」
「随分冷たい言葉だな」
「暖かく言うと思う？」　
　見れば妹は視線も冷たかった。
「思わないでしょ」
「それはな」
　寿もそれはと応えた。
「お前広島ファンだからな」
「クライマックス三連敗したからね」
「その阪神に」
「それで暖かく言う筈ないでしょ」
「言ったら凄いな」
「私絶対に転ばないから」
　千佳はこうも言った。
「あくまでカープ一筋よ」
「僕が阪神でな」
「そこは何があってもね」
「変わらないな」
「私の血が赤いことも」
「人間なら普通だな」
「いや、生きものならでしょ」
　千佳はそれはと返した。
「血は赤いでしょ」
「何か白い血の魚もいるらしいぞ」
「そうなの」
「あと異世界だとな」
「悪魔とか青とか緑ね」
「そうだろ」
「それもそうね、ただこの世界の人間ならね」
　千佳はあらためて言った。