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神々の塔

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第四十話 童話の中からその八

「あいつか」
「わかるな」
「川上哲治か」
「そや」
 中里もその通りと答えた。
「あいつやった」
「あいつはそうした奴やな」
「巨人の傾向やが」
 他チームから選手を掠め取るそれはだ。
「あいつはそれをや」
「徹底させてたな」
「それで一年か二年でな」
 強奪した選手達をだ。
「使い捨てにしてた」
「活躍出来ん様になったら切り捨ててな」
「主力の足しにしてや」
 王や長嶋のである。 
「それでや」
「捨ててたんやな」
「そうした奴やった」
 川上哲治という人間はというのだ。
「現役時代も自分だけでな」
「チームプレイはやな」
「せんでな、打つのも」
 これもというのだ。
「打撃の神様と呼ばれたが」
「打つのはよかったな」
「自分の打率がどうかで」
 これが一番の問題でというのだ。
「チームの勝ち負けはな」
「関係なかったか」
「守備かてな」 
 これもというのだ。
「ちょっと捕れんとなると手を伸ばすこともや」
「せんかったか」
「打球は追うことなく回れ右してな」
 そうしてというのだ。
「ベースに入って送球もな」
「少し逸れそうやとか」
「捕球せんでな」
 そうしてというのだ。
「逸れた送球を回れ右してな」
「捕ってたか」
「そんな風でも監督になったら」
 その時はというと。
「チームプレイを言い出した」
「ある意味凄い人やな」
「自分より偉い人にはへらへらして」
 このことは軍隊の中でもだったという、彼も消臭を受けたのだがそこでもその人間性が出たということだ。
「下やとな」
「きつくあたるか」
「それで状況が変われば」 
 その時はというと。
「あの時はああするしかなかったってな」
「謝るんか」
「そうして回って」
 きつくあたった人達のところをだ。
「ことを収めてた」
「頭はええな」 
 シェイルは不機嫌そうに応えた。
「そうした行為は」
「そやな」
「しかし人間としてな」
「どうかって思うな」
「状況に合わせて立ち回って」
「頭下げたら相手が黙るとわかってる」
「何か嫌なものを感じるな」
 中里にだ、シェリルは素直に自分の思ったことを話した。
「少なくともええ人とはな」
「思わんな」
「自分が有利になる為にはか」
「そんなことをもする奴やった、邪魔者はな」 
 自分の巨人の監督の立場を脅かす様なだ。
「どんどんあれこれ理由付けてな」
「追い出したんやな」
「片っ端からな」
「悪い意味で政治家さんやったんやな」
「実際政治家やったら成功してたな」
 中里もそれは認めた。 
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