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ストーカー出来る筈がない

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第一章

               ストーカー出来る筈がない
 金田茂樹は海上自衛官である、色黒で面長で顎が少し出た顔をしている、目は小さく笑った感じで黒髪は短く背は一七二位で引き締まった体格である。二十五歳でありこの前三等海曹になったばかりである。
 舞鶴で護衛艦に乗っている、その彼が昼休みに電話が鳴って出たが。
「あの、俺秋田の人から警告されました」
「秋田?何でだ」
 艦内に戻って艦内の自分の仕事の事務所の中で上司の車田智樹丸い顔で太い眉にきりっとした目で大きな唇の長身痩躯の彼に話すと彼は眉を顰めさせて応えた。青い作業服の階級は一等海曹である。金田も同じ作業服を着ている。
「ここ舞鶴だぞ」
「何かストーカーで」
「ストーカーか」
「弁護士さんが出て来て」
 船の中で話した。
「それでなんです」
「ストーカーでか」
「はい、俺も訳がわからないです」
「確か四月に秋田行ったな」
「ええ、寄港しました」 
 出港してとだ、金田は答えた。
「車田さん来られる前でした」
「そうだよな」
「それで二日停泊しましたけど」
「その時何かやったのか?お前」
「夜にいいバー見付けて二日飲んでました」
 そうしていたとだ、金田は正直に答えた。
「そうでした」
「夜にか」
「それでお店の娘にいい娘いて」
「その娘に声かけたか」
「いやいや、俺彼女いますから」
 やはり率直に答えた。
「見てただけですよ」
「声もかけなかったか」
「けれどその娘がストーカー被害に遭ってるそうで」
 それでというのだ。
「俺がです」
「ストーカーにか」
「思われてるんです、俺店で自衛官って言って」
 そしてというのだ。
「寄港したから来たって話したんですが」
「そこから?」
「みたいです」
 首を傾げさせつつ車田に対して話した。
「どうも」
「物凄いところからわかったな」
「で俺が二日間ずっと店で飲んでいて」
「その娘見ていたからか」
「その時停泊していた船がこの船ってことを弁護士さんが突き止めて」
 そうしてというのだ。
「俺の顔の特徴からです」
「お前だってわかってか」
「今連絡来ました、ずっと秋田でストーカーされてるそうです」
「お前の筈がないな」 
 車田は腕を組んで言い切った。
「絶対に」
「そうですよね」
「ここ舞鶴だからな」
「それで現在進行形で秋田でストーカーなんてな」
「ちょっとそれ弁護士さんに言っていいですね」
「というか言え、絶対に冤罪だろ」
 言うまでもないというのだ。
「それじゃあな」
「はい、言います」 
 金田は即座に答えた。 
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