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博士の挑戦状

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第八十五話

                第八十五話  思い出した人
 小田切君も本を読みだした、彼が読んでいるのは科学それもロボット工学のものだったその本を読みながらだった。
 博士の読書を見てだ、こんなことを言った。
「芥川みたいですね」
「芥川龍之介じゃな」
「はい、あの作家の」
「彼とは会ったことがある」
 博士はぱらぱらと読みつつ応えた。
「生前にな」
「そうなんですか」
「物凄く頭がよくてじゃ」
 芥川がどんな人間かも話した。
「教養が凄かった」
「伝え聞く通りですね」
「歴史に書かれてある通りな」
「そんな人だったんですね」
「若し学者になれば生きている限り名を馳せたな」
 そうしたというのだ。
「大学者になっておった」
「作家じゃなかったらですね」
「そして作家としてもじゃ」
「あそこまでになりましたね」
「うむ、それで顔もな」
 こちらもというのだ。
「写真に残っておるであろう」
「イケメンですよね」
「太宰治と並んでおったな」
「ああ、太宰もイケメンでしたね」
「太宰治にも会ったことがあるが」
「やっぱりイケメンですか」
「頭がよくてな」
 それと共にというのだ。
「そうであった、それで芥川の様にというのは」
「はい、読む速さが」
「それも見た、芥川はただ頭がいいだけでなくな」
「読むの速かったんですよね」
「日本語の本でなくとも凄い速さで読んでおった」
「そのお話聞いたことありますが」
「事実であったわ」
「その芥川思い出しました」
「わしはおそらくもっと速いぞ」
 今も読みながら言うのだった。
「どんな言語もこの調子でな」
「読めますか」
「伊達に二百億年生きておる訳ではない」
 言いながらさらに読んでいく。
「だから言語も強いのじゃ」
「長生きするとですか」
「それだけ学べる機会があるからな」
 こう小田切君に話した、そして博士はまた一冊読んで別の本を手に取ってそちらもぱらぱらと読んでいくのだった。


第八十五話   完


                   2023・8・3 
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