DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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ジンクスを作ろう
台無しだった…
昨晩はお父さんの為になる戦術心理学講座で素晴らしい時を過ごしていたのに、意識を回復させた馬鹿が現れて台無しにしやがった!
終始上から目線の弟子入り志願で、流石のお父さんも辟易状態。
最後はホラ吹いて大冒険に旅立たせましたわ。
永遠に目的を達成出来ない大冒険へ…
翌朝、出立する私達(主にお父さん)に対し、町民達の惜しむ声を聞きながら旅立ちます。
あの馬鹿は、どんだけ嫌われてたのよ…
中途半端に強い馬鹿は厄介よね!
そして4日目…
遂に私達はリムルダール西の突端に辿り着く。
魔の島はもう目前だ。
「ルビス様…ここでよろしいのですか?」
「ええ、この場で虹の雫を天に掲げ、心より祈りを捧げれば虹の橋が架かり、魔の島へと渡る事が出来るでしょう」
アルルさんがルビスちゃんに確認する様に問いかける。
創造主が居るパーティーというのは、何かと便利だな。
何処で何をすれば良いのかを教えて貰える。
そしてアルルさんはルビスちゃんの言われるがまま、虹の雫を掲げてお祈りをする。
………でも、神様が此処にいるのに、誰に祈ってるのだろうか?
やっぱり、現在神様のお家に一人で住んでるアスカリーちゃんかな?
等と、お馬鹿な事を考えていると、突如目の前に大きな橋が現れる!
遥、魔の島まで通じる虹の橋…
別に虹色をしているワケでは無いのだけども、橋になる直前は虹だったので、便宜上そう呼ぼうと思う。
「虹が橋になるなんてメルヘンチックで良いわねリュカ♡」
うん。お母さんも同じ事を考えてくれたわ。
「うん、そうだね。愛し合う者同士で渡ると幸せになれるってジンクスを勝手に作っちゃおう!」
良いジンクスだと思います。夫婦のお邪魔をしちゃ悪いから、一歩後ろを歩く私。
「父さん…これから敵の本拠地に赴く橋なのだから、そんなジンクス駄目でしょ!?」
「あら!?お兄様ちゃんはロマンがありませんですわ!男女に立ちはだかる困難…それに立ち向かう為、愛の絆を強くする!そう言う橋ですわ!」
そうよ…ロマンが大事ですわ。
「なるほど…じゃぁ僕はアルルと共に渡らないと………あれ?どうしたのアルル…渡らないの?」
そんなワケで私はウルフと一緒に渡りたいなぁ………って、あれ?
アルルさんだけでなく、ウルフやハツキさん、カンダタ・モニカさん達までもが呆然と立ち尽くしてますわ?
どういう事でしょうかね?
「わ、渡るわよ!………はぁ~…やっぱりティミーもリュカ一族なのね…」
問われて気付き、慌てて渡り出すその他の皆さん…
一体何を怒ってるのですか?
「な、何でそんな失礼な事を言うの?」
「だって…普通、虹で橋が出来上がったら驚いて直ぐに行動出来ないでしょ!……でもティミーはこう言う不思議な現象に慣れていて、驚きもしないじゃない!リュカ一族の血筋よね…」
いや…ファンタジー世界で不思議も何も無いでしょう…
「えぇ!!?そんな…だって…別に…ねぇ?」
拗ねる彼女に困り切るお兄ちゃん…目でお父さんに助けを求める。
因みに私もチラリとウルフを見たが、呆れているだけで概ね大丈夫そうでした。
「何だ…もう破局したのか!?早いだろうなぁ~…とは思っていたが、これ程までとは…まぁいいんじゃねティミー。グランバニアに戻れば、王子様なお前は引く手数多だ!前向きに行こうよ(笑)」
あはははは、ひでー!
「は、破局なんてしてないわよ!私はティミーと一緒に感動を分かち合いたかっただけなの!ティミーを手放す訳ないでしょ!」
「…何だ…遂に息子の好色時代到来かと思ったのに…残念だなぁ。身に覚えある無しに拘わらず、多数の女性とその子供に囲まれて、家督相続問題で大混乱するティミーの姿を見たかったのになぁ………」
どんな未来予想図だよ!?
「変な願望持たないでください!例えアルルにフラれても、父さんの様に手当たり次第に子孫繁栄する事などありませんから!同系列で考えないでください!」
そうよね、お兄ちゃんに限ってそれはないわ。
むしろ私の彼氏の方が心配なのよねぇ…
「あらあら…リュカ君の家庭には大混乱の兆し有り?」
「そうよ。どっちかつーとお父さんにこそ訪れそうなシチュエーションでしょ!」
私は自分の彼氏が心配ではあるが、悪い見本を見せる意味でお父さんを矢面に立たせる。
「え?僕には訪れないよぉ~…だって欲しい人に家督はあげちゃうもん!先着順で欲しいと言った人にあげちゃうからね(笑)………マリー、要る?」
「いらな~い…お姫様という立場の方が気楽でいい」
そんなめんどくさい地位は要らんがな!
「父さんの統治は完璧すぎるんです!跡を継いだら混乱を起こしそうで、怖くて継げませんよ」
「リュカはそんなに民に慕われる国王なのですか?」
まだお父さんの事を知らないルビスちゃんは、一連の会話を信じられない思いで聞いていたのだろう。じっくり噛み締めれば、とっても失礼なお言葉だ。
「そうなんですよルビス様♡ リュカが統治を初めて10年も経過てないのに、国力は5倍以上に、人口はそれ以上に増大し、周辺諸国を圧倒的に追い越したんですよ!」
お母さんの夫自慢は止まらない。
下手に会話に参加するとめんどくさい事になるので、放っておくのが一番妥当だ。
長い魔の島へ通じる虹の橋を、ほぼお母さんの夫自慢話で聞きながら渡りきる…
すると突如『ヒドラ』現れて襲いかかってきた!
100%を超える勢いで油断していた私達は、ただ驚くばかり!
そんな私達を救ったのは、夫婦ラブラブで先頭を歩いていた旦那さん…我らのお父さんだ!
3つの鎌首擡げたヒドラが、勢い良く炎を吐こうとした瞬間、凄い勢いでヒドラを攻撃して滅ぼしちゃいました。
やっぱつえ~…
やっぱすげ~……
もう最後のダンジョンなんだし、若者の育成なんて事言わず、お父さんが敵を全部駆逐してくれれば助かるのに。
「あ…こ、これからは気を引き締めて行こう!もうここは魔の島で、何時何処から攻撃されるとも限らない。…つーわけで、僕は最後尾を守らせてもらいますぅ~」
やっぱりだ…最後まで戦う気が無いんだな!?
「ちょっとリュカさん!こんなに強い敵が蔓延ってるのだから、リュカさんが先頭で活躍してくださいよ!」
「そうですよ父さん!今まではアルル達の成長を促す為に、あえて戦闘への参加をしなかったのでしょうが、大魔王を倒せばその必要は無くなります。今まで迷惑かけた分、これ以後は先頭で活躍してくださいよ!」
そうだそうだ!
一番強い奴が働くべきだろう!
楽するんじゃねーよ。
「どうかなぁ~…魔王バラモスを倒したら大魔王ゾーマの存在を知る事になった…まだ上が居て、超大魔王ゾラモスとか真大魔王バーマとか要るんじゃね?それからでも良くね?」
ゾラモス・バーマって………何だこの男の屁理屈っぷりは?
「そんな存在居りませんわ!大魔王ゾーマを倒したら、この世界は平和になります!」
ゾーマを倒したらエンディングなんだよ!
最後くらい真面目に冒険してくれよ!
「イヤだ!先頭なんて危険で疲れるじゃんか!実質僕には関係のない事なのだから、僕がそんな思いをしなきゃならない理由は無い!」
「何言ってるんですか!?ゾーマを倒さないとグランバニアに帰れないんですよ…それじゃ父さんはともかく、母さんが悲しむでしょう!」
そうだ!私はグランバニアに帰りたいゾ!
「う…ぐっ……卑怯な……」
「卑怯じゃありませんよ。ご自身でどう思っているのかは知りませんが、実力は間違いなくズバ抜けているのですから、最後くらいは皆に協力してくださいよ」
リムルダールで強さについて語ったじゃんか…アンタ本当に強いんだよ。
「なるほど…最後くらい……うん。そうだね、最後くらいは僕も戦闘に参加するよ!」
「ほ、本当ですか父さん!?あぁ…良かった…これで戦闘が楽になる!」
凄い、珍しくお兄ちゃんが勝ちましたわ!
「うん。最後の大魔王戦だけは僕も戦うけど、それまでは後方で待機させてもらうよ」
「「「「「え?」」」」」
最後って…ゾーマまでは何もしないつもりなの?
ちょ…ふざけんなよ!
私達は慌ててクレームを付けようとしたのだが…
「おいおい…そんな事より敵さん登場だゾ!醜い贅肉まみれのモンスターが現れたゾ!」
お父さんに指摘され振り向くと、そこには『トロルキング』が3匹攻撃態勢で此方を睨んでおります!
致し方なく私達も臨戦態勢に…
結局、お父さんは戦闘に参加する事はありませんでした。
でも、みんなの心に一つの決意が…
“絶対、大魔王戦は奴に押し付けよう!”
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