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ハッピークローバー

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第九十九話 寝られるだけでもその七

「かなり辛かったのよ」
「不眠症ですか」
「そう、実家が火宅になったのよ」
「浮気ですか」
「お祖父ちゃんがね」
「お祖父さんですか」
「そうよ、七十過ぎてキャバクラにのめり込んで」
 そうなってというのだ。
「三人と浮気したのよ」
「三人ですか」
「二十代のね」
「それは凄いですね」
「それで一家全員怒って」
 その祖父にというのだ。
「いつも右に左にのよ」
「大騒動だったんですか」
「それで先生もよ」
「その中におられて」
「大学生だったけれど」
 その頃のコーチはというのだ。
「三人共妊娠させたとかね」
「七十過ぎのお祖父ちゃんがですか?」
「ええ、三人共違ったけれど」
「何か凄いですね」
「急にね、それまで真面目だったのに」
 その祖父がというのだ。
「シルバーワークもしなくなって」
「定年してからですか」
「お金はあって」
「キャバクラにのめり込んで」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「何でかそうなってよ」
「愛人さん三人もですか」
「作ってね、お祖父ちゃんも怒ったし」
 彼の妻もというのだ。
「お父さんお母さんも。叔父さん叔母さんもで」
「何か凄いですね」
「挙句お祖父ちゃんの兄弟姉妹とそちらの家族も怒って」
 そうしてというのだ。
「毎日朝から晩までよ」
「お家の中大揉めでしたか」
「親戚中でね」
「そこでコーチもですか」
「やっぱりお家の中がそうだとね」
 揉めていてはというのだ。
「学生みたいな立場でもよ」
「影響受けて」
「精神的に参ってよ」 
 そうなってというのだ。
「寝られなくなったの」
「大変だったんですね」
「地獄だったわ」
 コーチはこうまで言った。
「だからよ」
「不眠症にもですか」
「なったのよ」
 そうだったというのだ。
「洒落にならない位揉めて揉めて」
「大変で」
「結局お祖父ちゃんキャバクラの人達全員と別れて」
 そうしてというのだ。
「もう二度とね」
「浮気はしない、ですか」
「キャバクラに行かない、そう約束させられて」
「お話は終わったんですか」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「身内、ご近所お友達の信頼を完全に失って」
 そうなってというのだ。 
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