ドリトル先生の落語
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第八幕その四
「僕も」
「八条芸能の人達の公演ですね」
「お笑いのそれでして」
「実は私お笑いはあまり観ないですが」
それでもというのです。
「これも縁ですね」
「縁ですか」
「先生と一緒なので」
それでというのです。
「行かせてもらいますが」
「お笑いをその目で観られることは」
「はじめてです」
「そうなんですね」
「テレビやユーチューブで観て」
そしてというのです。
「それ位で」
「では僕と一緒に行くのがはじめてで」
「先生と一緒ですから」
「僕ですか」
「楽しみです」
「何かです」
先生は日笠さんのお話を聞いて思いました。
「日笠さん僕と行けて」
「いえ、お笑いを観られるので」
先生のお言葉にです、日笠さんは慌てて言い換えました。
「嬉しいですよ」
「そうですか」
「確かにあまり観ないですが」
それでもというのです。
「お笑い自体は嫌いではないです」
「そうなんですね」
「ですから」
それでというのです。
「楽しみです」
「そうなんですね」
「はい、では」
「それではですね」
「その時また宜しくお願いします」
「こちらこそ」
「それでなのですが」
日笠んさんは先生にあらためて尋ねました。
「落語ですね、先生が一番興味がおありなのは」
「実は春雨亭春琴さんとお知り合いで」
「あのイギリス生まれの女性落語家の」
「あの人とです」
「そうです、同じイギリス生まれということで」
「実はあの人がここに来られて」
先生は日笠さんにこのことを素直にお話しました。
「お話もしました」
「そうですか」
「いい人ですよ、明るくて真面目で」
「そうした人ですか」
「はい、落語だけでなくグラビアでもです」
「人気がおありですね、この前コンビニに行きますと」
日笠さんは先生にお話しました。
「あの人が雑誌に載ってました」
「そうだったんですか」
「グラビアですね、水着になっていましたね」
「どうも写真集も出ているそうで」
「奇麗な人ですからね、ただ」
「ただ?」
「先生は大丈夫ですが」
何か妙に気にする、そんな風で言う日笠さんでした。
「その人は先生に何もないですか」
「何もとは」
「お食事に誘われたとかは」
こうしたことはというのです。
「ないですね」
「いえ、別に」
これといってとです、先生は日笠さんに全く気付かないまま答えました。
「そうしたことは」
「それは何よりです」
日笠さんは先生の返答にほっとしたお顔になって答えました。
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