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X ーthe another storyー

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第三十七話 退院その十六

「まさにな」
「そう言ってくれますか」
「おかしいか。お前はしっかりとな」
「お父さんとお母さんから生まれていますか」
「生まれ方が少し違うだけでな」
 それだけでというのだ。
「お前は紛れもなく人間でだ」
「この塔城家の家族ですか」
「私のな」
「そうですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「この家にいてくれ、そして私ともな」
「こうしてですね」
「同じ家の中にいてな」 
「お話もですか」
「食事もな」
 こちらもというのだ。
「してくれるか」
「嬉しいです」
 素直にだった。
 哪吒はこの言葉を出した、そうして自然と微笑んで答えた。
「そう言ってもらって」
「そうなのか」
「はい、地の龍の皆さんと」  
 戦いを知る祖父に彼等のことも話した。
「それに学校に行っても」
「聞いている、友達がだな」
「出来てきています」
 微笑んだまま答えた。
「そうです」
「そうだな」
「そして家に帰れば」
 今の様にというのだ。
「お祖父様にそう言って頂いて」
「お前は幸せか」
「とても。昨日よりも今日は」
「幸せか」
「そうなっていることをです」
 まさにというのだ。
「感じています」
「それは何よりだ。夕食は摂ったか」
「はい、もう」
「そうか、私もだ」
 祖父はいささか残念そうに応えた。
「もうな。だが飲めるか」
「お酒ですね」
「二人でな。どうだろうか」
「はい」
 哪吒はここでも微笑んで答えた。
「それならです」
「これからだな」
「お願いします」
「それではな。いいブランデーがある」
 どの酒があるかの話もしたのだった。
「それをだ」
「これからですね」
「飲もう、二人で」
「僕とお祖父様で」
「家族でな、つまみはハムや胡桃があるからな」
「そうしたものを食べながらですね」
「飲もう。夢だった」 
 祖父はこうも言った。
「ずっとな」
「夢ですか」
「そうだ、孫と共に酒を飲んで語り合う」
「そうすることがですか」
「私の夢でな」 
 それでというのだ。
「それが適う様になってな」
「お祖父様は嬉しいですか」
「心からな」
 そうだというのだ。
「そうなっている」
「そうですか」
「それでだ」
 哪吒にあらためて言った。
「飲もう」
「そうしましょう。お祖父様がそう言われるなら」
 ここでもだった、哪吒は微笑んで話した。
「僕もです」
「嬉しいか」
「はい」
 心から答えた。
「本当に」
「そうか。それならな」
「これからですね」
「飲むとしよう」
「僕とお祖父様で」
「いい酒にだ」
 そのブランデーの話もした。
「それにだ」
「二人なので」
「尚更な」
「美味しくなるのですね」
「一人で飲んでも美味い」
「お酒は」
「だが絆があるとな」
 飲む時にというのだ。
「尚更な」
「美味しいですか」
「それもこれからだ」
「わかりますか」
「そうなる、ではな」
「はい、これから」
「飲もう」
 確かな声で言った。
「今からな」
「それじゃあ」
 哪吒も頷いてだった。
 祖父と二人で飲んで話をして楽しんだ、そして庚の言葉に心の中で頷いたのだった。


第三十七話   完


                    2023・7・23 
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