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七十過ぎの爺の現実

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第六章

「本当にな」
「いいな」
「ああ、それならな」
「これからか」
「孫が出来たらな」
 今度は笑って話した。
「名前もな」
「考えないといけないな」
「そうだな、歳を取ってな」
 そしてというのだ。
「喜びはな」
「孫か」
「早く会いたいな」
 こう言うのだった。
「早くな」
「わしはもうな」
「ああ、お前さんはな」
「娘三人が頑張ってくれてな」
 若尾に笑顔で話した。
「六人だ」
「いいな」
「羨ましいか」
「正直な、だったらな」
「そっちもか」
「息子達とな」
 それにというのだ。
「美沙緒さんと杏奈さんにもな」
「頑張ってもらってか」
「六人でも何人でもな」
「お孫さんをか」
「産んでもらうか」
「そしてすくすくとだな」
「育ってくれたらな」
 そうであればというのだ。
「もうそれでな」
「最高だな」
「ああ」
 そうだというのだ。
「それでな」
「孫が出来てな」
「すくすくと育ってくれたら」
 それならというのだ。
「最高だよ」
「最高の幸せだな」
「それを見るか」
 これからとだ、若尾は笑顔で言った。
「期待してか」
「そうするな」
「これからはな」
 藤田に笑顔で話した、そしてだった。
 後日だ、彼は藤田の家に行って彼に満面の笑顔で話した。
「二人同時にだよ」
「長男さんの嫁さんも次男さんの嫁さんもか」
「ああ、美沙緒さんも杏奈さんもな」
 二人共というのだ。
「おめでただよ」
「それはよかったな」
「倅達が頑張ってな」
 それでというのだ。
「そのうえでな」
「出来たか」
「よかったよ」
「それは何よりだな」
「わしはもう何とも思わなくてもな」
 美人でスタイルがよく服装も刺激的な息子の嫁達をというのだ。
「倅達は違ってな」
「動いたんだな」
「それでな」
「お前さんの孫が出来たんだな」
「そうさ、よかったよ」
「七十過ぎると何も思わなくなってもか」
「若いとな」
 それならというのだ。
「やっぱりな」
「違うな」
「そうさ、しかし人間本当にな」
 若尾はここでしみじみとした口調で言った。
「歳取るとそうした欲はな」
「減るな」
「真っ先にな」
 あらゆる欲の中でというのだ。
「そうなるな」
「漫画とかみたいにはいかないな」
「そんな爺さんいたら教えてくれ」
「七十過ぎてもそっちが元気なか」
「そういないと思うぞ、若い時とは違うんだ」
 全くというのだ。
「だからな」
「それでだな」
「そんな爺さんいるか」
「上原謙さんみたいな人はか」
「あの人で大騒ぎだったんだぞ」
「それならだな」
「ああ、そんな爺さんそういるものか」
 あくまでこう言う若尾だった、そしてだった。
 藤谷孫が出来た喜びを話していった、その顔に欲はなく喜びだけがあった。


七十過ぎの爺の現実   完


               2023・9・29 
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