彭侯
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第二章
「何ならこれから自転車に乗って」
「古い木のある場所に行けるの」
「流石に大阪城の辺りはないと思うけれどね」
葵はこの地域の可能性は否定した。
「大坂の陣で全部焼け落ちて」
「天守閣までね」
「それで空襲もあったし」
二次大戦の頃というのだ。
「天守閣は残ったけれど」
「周りボロボロになったのよね」
「だから古い木なんてね」
何百年も生きている様なものはというのだ。
「あそこにはね」
「ないわね」
「あるとしたらお寺か神社か」
「茶臼山ね」
「そうしたところでしょ」
「じゃあ茶臼山行く?」
仁美は今の自分達の話に何度か出ているこの山にと言った。
「そうする?」
「そうね、それじゃあね」
葵もそれならと頷いた。
「今からね」
「ええ、ちょっと行って」
「古い木があるかどうかね」
「観に行きましょう」
二人でこうした話をしてだった。
それぞれの親にちょっとコンビニに行くとメールをしてから自転車に乗って茶臼山の方に行った。そこは天王寺公園であり。
夜が近付く中に多くの木々が見えた、二人は古墳のところに行ってそこにある木々を自転車から下りて引きながら見ていたが。
その木々を見てだ、仁美は葵に言った。
「ああ、古墳ならね」
「古い木一杯あるわね」
「普通に千数百年だからね」
「そうね、あの中にね」
古墳の木々を見つつだ、葵も言った。
「古い数百年どころか千年の木だってね」
「あるかも知れないのね」
「そうじゃない?」
こう言うのだった。
「やっぱり」
「そうなのね」
「いや、大阪も古い木あるわね」
「そうね、街だけれど」
「そのことがわかったわね」
「そうよね」
「何だ?五月蠅いおなご達がおるな」
ここで古墳の方からだ。
こう言って人の顔をした犬が来た、二人はその犬が自分達の前に来てそのうえで顔を見合わせて話した。
「人面犬?」
「大阪にもいるのね」
「うちの学校にいるかも知れないけれど」
「大阪にもいるのね」
「いや、そこは驚くところだろう」
人面犬と言われた彼は自分を見ても平然としている二人にこう告げた。
「妖怪だ何だのと言って」
「いや、私達八条学園の生徒で」
「学校妖怪や幽霊のお話めっちゃ多いんで」
「別に妖怪見てもです」
「驚かないです」
「ああ、神戸のあの学校か」
彼もそう言われて納得した。
「あそこは世界一幽霊や妖怪が多いからな」
「私達は見たことないですけれど」
「お話はよく聞きますので」
「別に怖くないです」
「見ても」
「自乗はわかった、しかしわしは人面犬ではない」
このことは断るのだった。
「わしは彭侯という」
「そうした妖怪さんですか」
「左様、人面犬と似ておるが」
妖怪自身このことを否定しない。
「しかしな」
「また違う種類ですね」
「わしは古い木の精霊になる」
そうした種類の妖怪だというのだ。
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