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柳とシシャモ

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第一章

             柳とシシャモ
 アイヌの古いお話です。 
 雷神、カンナカムイの妹が苔小牧に降り立った時彼女はとんでもないものを見ました。
「何か食べものを」
「食べものを下さい」
「何も食べるものがありません」
「どうかお助け下さい」
「そうして下さい」 
 こう言って餓えに苦しんでいました、それを見てです。
 カンナカムイの妹は驚いて天界に戻って他のカムイ達にお話しました。
「苔小牧はこの通りです」
「鵡川沿いはか」
「そこの者達は餓えに苦しんでいるか」
「そうなのか」
「そうなっているのか」
「はい、ですから」
 それ故にというのです。
「一刻も早くです」
「うむ、救わねばならない」
「それは大変だ」
「すぐに何とかしよう」
「人間達を餓えから救おう」
 カムイ達もすぐに頷きました、そしてすぐに知恵を出しました。
「あの者達は川沿いに暮らしている」
「しかしあの川には魚がいない」
「だから食べるものがない」
「それなら川を魚で満たそう」
「そうしよう」
 こうお話してでした。
 カムイ達は鵡川をお魚で満たすことにしました、それで今度はこうお話しました。
「木の葉達に魂を宿らせ魚に変えよう」
「木の葉が川に入ればすぐに魚になる様にしよう」
「そして彼等の間で増える様にしよう」
「そうなればあの地の人間達は今救われるだけではない」
「これからも魚を食べて生きられる」
「それがいい」
「そうしよう」
 こうお話してでした。
 木の葉達に魂を込めてそのうえで川に入るとすぐにお魚になって彼等の間で増える様にしました、この時お魚が少しでも多くなる様にです。
 カムイ達は木の葉を細長く多く持てる柳のものにしました、そして。
「すぐに送ろう」
「出来るだけ速い者に」
「すぐに川に行って木の葉を送れる者に行ってもらおう」
「そうしよう」
「それなら私が行くわ」 
 梟の女のカムイが名乗り出ました。
「この中で私が最も速いので」
「そうだな、ではだ」
「そなたが行ってくれ」
「そしてあの地の者達を救ってくれ」
「そうしてくれ」
「それでは」
 カムイは頷きすぐにでした。
 飛んで行って持っていた柳の木の葉を川に入れました、すると。 
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