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伝教大師の霊木

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第二章

「その光のところまでです」
「案内してくれるのだね」
「宜しいでしょうか」
「願ってもないことだよ」
 最澄は微笑んで答えた。
「それではね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。
 最澄達は雉の案内を受けて山の中を進んでいった、そのうえで。
 一本のムネノキの木の前に来た、その木は苔むしているが。
「何ということか」
「苔むした木から光が放たれている」
「眩いまでの光が」
 金色のその光を見て言うのだった。
「これもまた御仏の力か」
「千手観音様の」
「最澄様が戻られたので」
 雉はその木の前で話した、今は飛ばずその前に立っている。
「ですから」
「御仏はか」
「この木に光を宿らせられたのです」
「そうであるか」
「そうなのです、観音様はです」
 千手観音はというのだ。
「最澄様をお待ちでして」
「それでか」
「ここに迎えられたのです、そして」
 雉はさらに話した。
「最澄様は一つ運命がありまして」
「運命か」
「この山に観音様を祀った」
「寺をか」
「開かれるです」 
 そうしたというのだ。
「運命でして」
「それでか」
「はい、そうしたことからもです」
「拙僧を招いてくれたか」
「こちらに」
「わかった」
 最澄は雉の話をここまで聞いて頷いた。
「ではな」
「はい、この山にですね」
「寺を開こう、それが御仏の望みであり」
「運命ならですね」
「そうしよう、ただその前に」 
 最澄は雉にその光るネムノキを観つつ話した。
「その木を用いていいか」
「どうされますか」
「この木を拙僧が彫って」
 そうしてというのだ。
「千手観音像にしていいか」
「その観音様のですか」
「そうしたいがどうか」
「流石は最澄様です」 
 雉は最長の申し出に驚いて述べた。
「それではです」
「彫らせてくれるか」
「はい、是非。そうしたことをされるとは」
「思わなかったか」
「寺を開かれる運命でしたが」
 最澄はそうだったがというのだ。 
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