嫌いな相手でもそうなると
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第二章
「行かないとな」
「駄目ですか」
「それが礼儀だしどんな嫌な奴でもな」
それでもというのだ。
「死ねば仏って言うだろ」
「そのこともあって」
「ここはな」
「どっちかに行くことですか」
「そうだよ、じゃあな」
「行きますか」
「そうしような」
斎藤は甲斐に言った、そしてだった。
二人でお通夜に出た、その時に死んだ者の両親にも挨拶をした。お通夜が終わると二人で帰ったが。
その帰り道でだ、斎藤は甲斐にこんなことを言った。
「それなりに人来てたな」
「そうでしたね」
「やっぱりな」
「ご近所の礼儀で」
「あとな」
「死んだら誰も仏さんですね」
「だからな」
「結構な数の人が来たんですね」
「確かに嫌われ者だったさ」
今日お通夜に行ったその相手はというのだ。
「お前が言う通り人間の屑って言ってもな」
「その通りって奴でしたね」
「けれどな」
「そんな奴でも死ぬとですね」
「それなりの礼儀を払うものでな」
それでというのだ。
「やっぱり仏さんだからな」
「お通夜でもお葬式でもですね」
「出て冥福はな」
「祈らせてもらうことですね」
「生まれ変わったらもうちょっとでもな」
斎藤はこうも言った。
「ましな奴になる様にもな」
「祈ることですか」
「ああ、そうしてやろうな」
「せめてですね」
「死んだ時位はな」
「だからお通夜やお葬式に行くんですね」
「どんな嫌な奴でも死んだらな」
その時はというのだ。
「これからもな」
「それも人間のやることですね」
「そうだよ、じゃあこれからもな」
「行きます、付き合いがあったら」
甲斐もこう返した。
「やっぱり」
「ああ、冥福位はな」
「祈るべきですね」
「最低でもな」
「そうしてやるべきですね」
「人間ならな」
こう言ってだった。
二人で帰った、以後彼のことを話すことはなかった。だがせめてもと冥福を祈ったことは事実であった。
嫌いな相手もそうなると 完
2023・9・20
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