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第九十四話 暦のうえでは秋だけれどその六

「ずっと一緒の」
「そうよ、ただ家のお仕事は違ってるから」
 聖花は一華に話した。
「私のお家はパン屋さんでね」
「私のお家は食堂なのよ」
 愛実も言ってきた。
「商売は違うのよ」
「そこはね」
「商店街にあってもね、そうよね」
 一華も二人の話を聞いて頷いた。
「それぞれのお仕事は違うわね」
「よかったら来てね」
「うちにもね」
 二人は商売っ気も出してきた。
「それで食べてね」
「美味しいからね」
「二人のお店にも行ったことあるわよ」
 一華は正直に答えた。
「それでどっちも美味しかったわ」
「それは何よりね」
「また来てね」
 二人は一華の返事に笑顔になって応えた。
「そうしてくれたら嬉しいから」
「どんどん来てね」
「それじゃあね、しかしまだ暑いわね」
 一華はここでこうも言った。
「九月に入っても」
「ってまだ九月になったばかりよ」
 愛実は一華の今の言葉にこう返した。
「だからね」
「まだ暑いのね」
「残暑続いてるからね」
 だからだというのだ。
「まだ暑いわよ、というかね」
「というか?」
「あんた大阪でしょ、お家」  
 一華がそちらの団地に住んでいることから話した、一華にとっては生まれ育った最も落ち着く場所である。
「大阪もっと暑いじゃない」
「ここと比べるとね」
 聖花も一華に言った。
「大阪はずっと暑いでしょ」
「それはね」 
 一華も否定せずに答えた。
「確かにね」
「神戸冬寒いけれどね」
「夏涼しいからね」
 二人で一華にお言った。
「確かに暑いけれど」
「大阪と比べたら全然違うわよ」
「海と山に挟まれてて」
「後ろからいつも風吹き下ろしてるからね」
「六甲おろしね」
 阪神タイガース応援歌のタイトルにもなっている。
「あれのお陰でね」
「けれど大阪それないしね」
「熱が籠りやすいのよね」
「それで冬は暖かいけれど」
「夏は暑いのよね」
「ええ、だからこっちに来たらね」
 大阪から神戸にというのだ。
「実感するわ」
「神戸が涼しいって」
「そう感じるのね」
「けれどね」
 それでもというのだ。
「暑いことは暑いでしょ」
「それはね」
「私達もだけれどね」
 神戸に生まれた頃から住んでいる二人もというのだ。
「実際今暑いわ」
「そう感じてるわ」
「そうでしょ、だから早いうちにね」
 一華は心から言った。
「涼しくなって欲しいわよ」
「もう早く残暑が終わって欲しい」
「それで本格的に秋になって欲しいのね」
「そう思ってるわ」
 今現在というのだ。 
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