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イベリス

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第百十五話 知りたいことその六

「機会があれば」
「文章は昔のものでそれが読みにくいけれどな」
「口語ですか」
「それが入ってるな」
「そうですか」
「だから今からしてみるとな」
 今生きている人間としてはというのだ。
「どうもな」
「読みにくいんですね」
「どうしてもな」
「そうですか」
「明治の頃でも漱石さんは読みやすいんだよ」
 この作家の文章はというのだ。
「鴎外さんは作品によるな」
「舞姫は昔の文章ですね」
 咲はこの作品を読んだことがあるのですぐに言えた。
「そうですね」
「それが鴈とかだとな」
「読みやすいですね」
「俺達から見てもな」
「そうですよね」
「けれどな」
 それがというのだ。
「鴎外さんも初期の作品はな」
「その舞姫ですね」
「そうした作品はな」
 どうしてもというのだ。
「読みにくいんだよ、それでな」
「金色夜叉もですか」
「そうだよ」 
 読みにくいというのだ。
「どうもな」
「そうなんですね」
「けれどそれに慣れて読んでいったらな」
「面白いですか」
「俺はそう思ったよ」
 マスターとしてはというのだ。
「本当にな」
「そうですか」
「ああ、それでよかったら最後までな」
 他の作家が書いた結末までというのだ。
「読んでくれよ」
「わかりました」
「まあな、本人さんが完結させてくれたらな」
「それに越したことはないですね」
「それでもそれが出来ないならな」
「他の人がですね」
「音楽だったら結構あるんだよ」
 咲にこうも話した。
「歌劇とか途中で作曲者さんが亡くなってな」
「最後までは別の人がですか」
「作曲したってこともな」
 例えばプッチーニの最後の作品トゥーランドットである、最後の方はプッチーニが残した楽譜を元に関係者が最後まで作曲している。
「あるんだよ」
「そうですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「小説だってな」
「そうしていいですか」
「漫画だってな、折角だから終わらせないとな」
「作品としてですね」
「駄目だよ」
 こう咲に話した。
「しっくりいかないよ」
「そうですか」
「俺が思にな」
「ウェブ小説ですと」
 ここで咲はこちら側の話をした。
「結構終わらない作品がです」
「多いいのかい」
「はい、そっちは」
「それがわかってない作者さんが多いってことか」 
 マスターはその話を聞いてこう言った。 
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