イベリス
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第百十五話 知りたいことその三
「出動なんてこともな」
「よくあるんですね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「ご苦労様だよ」
こう咲に話した。
「いつもな」
「街の治安を守ってくれて」
「あの人もな」
「そうですね、それであの人は近くの交番にですか」
「普段はいるよ」
咲にこのことも話した。
「ここに来ない時はな」
「そうなんですね」
「パトロールに出てなかったりな」
「事件が起こっていないとですね」
「普段はな」
それこそというのだ。
「そこにいるよ」
「わかりました、それで所属はですね」
「渋谷署だよ」
「そちらですね」
「そうだよ」
「覚えました」
「覚えた?まさか」
マスターはここで気付いて言った。
「お嬢ちゃん」
「何ですか?」
「何でもないさ」
何か言おうとして止めたのだった。
「気にしないでくれよ」
「そうですか」
「ああ、それでだけれどな」
「それで?」
「コーヒーもう一杯いるかい?」
話を誤魔化す様にして言ってきた。
「どうだい?」
「いえ、これで」
咲は微笑んで応えた。
「充分です」
「そうなんだな」
「はい、別に」
「そうか、いいか」
「今日は」
「わかったよ、じゃあな」
マスターも納得して応えた。
「その一杯だけでな」
「今日は終わります」
「それ飲んだらか」
「帰らせてもらいます」
「ゆっくりしていってもいいんだぜ」
咲に笑ってこうも言った。
「そうするのもな」
「喫茶店ですか」
「コーヒーや紅茶を飲んでな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「ゆっくりする場所でもありますか」
「それ一杯だけで何時間も店にいるのもだよ」
これもというのだ。
「喫茶店の過ごし方なんだよ」
「そうですか」
「店が込んでないとな」
そうでない限りはというのだ。
「こっちも言わないよ」
「ずっとお店にいても」
「喫茶店はそうした場所だからな」
それ故にというのだ。
「いいんだよ」
「そうですか」
「だからお嬢ちゃんもな」
咲もというのだ。
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