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イベリス

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第百十四話 近付きたいその六

「堀内が監督になることになって」
「それで、ですか」
「中日に現役で、です」
「移ったんですか」
「そうなりました」
 そうだったというのだ。
「自分にそうした理不尽な暴力を振るう様な」
「そんな人のところにいたくないですね」
「それで巨人からです」
「出たんですね」
「堀内がチームにいる間は」
「そうなんですね」
「尚人望はです」
 これはというと。
「おわかりですね」
「言うまでもないですね」
「私もこの輩は嫌いでして」
 だからだというのだ。
「今こうしてです」
「お話してくれたんですね」
「はい、人間こうなってはです」
「そんな暴力を振るう様だと」
「昭和でもまともな人はです」
 そうした人物はというと。
「まずロッカーで動いている時にです」
「何をしているか聞きますね」
「そうします、またその人を見て」
「そんなことする人かどうかですね」
「考えます、しかも後ろから蹴るなぞ」
 相手が背を見せている時にだ。
「暴力はそれ自体が最低ですが」
「その中でも酷いものですね」
「はい」 
 まさにというのだ。
「その様な行為を行うなぞです」
「まともな人じゃないですね」
「間違っても。紳士どころか」
「ならず者ですね」
「十代二十代でも論外ですが」 
 こうした行為を行う輩はというのだ。
「別に喧嘩をしている訳でもなく」
「喧嘩でも卑怯じゃないですか?」
「否定しません」
 これが速水の返事だった。
「そう言っていいです、まして喧嘩でもない」
「そうした状況で、ですね」
「いきなりそうするなぞ。コーチになってからです」
「コーチって四十代位ですよね」
「その頃五十代だったかも知れません」
「かなりいい歳ですね」
「それでそんな行為を行うなぞ」
 それこそというのだ。
「もう論外です」
「最低の人ですか」
「全く以て。紳士であるなぞ有り得ないです」
「ゴロツキみたいなものですか」
「こうした暴力は相手が自分より立場や腕力が弱く」
「絶対に反撃出来ないからですね」
「振るうものです」
 振るう方がそれがわかっているからだというのだ。
「野蛮なだけなく卑怯な」
「そうした行為ですね」
「成績、結果を出すならです」
 堀内にそれがあったことは紛れもない事実である、名球会に入っていたことからもそれは証明されていると言える。
「こうした輩も監督にまでなれる」
「巨人はその時点でおかしかったんですね」
「ですから今のです」
「あのマナーもですね」
「既に腐敗していて」
「その結果ですね」
「そうです」 
 まさにというのだ。 
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