イベリス
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第百十三話 本格的な秋その十一
「学んでこなかったのね」
「随分偉そうだったみたいだけれどね」
「勝手に天狗になって」
「ふんぞり返って」
「その実はね」
自分で自分をどう思っていてもというのだ。
「中身はね」
「何もなかったのね」
「そうなると何の為に生きていたか」
「わからないわね」
「というか何が偉いのか」
咲は今度は首を傾げさせて言った。
「わからないけれどね」
「本ばかり読んで何かそこで知識得て」
「それでなの」
「勝手にね」
「自分は偉いって思ったの」
「お家じゃ長男さんで」
同級生はこのことも話した。
「それでお母さんに甘やかされて」
「偉いって思い込んだの」
「私そう聞いたわ」
「そうなの」
「それで働かないでお家の中にばかりいて」
「それは聞いたけれどね」
「お家の中で勝手にね」
こう咲に話した。
「思い込んだところもあるみたいよ」
「自分は偉いって」
「いや、私もね」
同級生はここでこう言った。
「この人の何処がどう偉いか」
「わからないわよね」
「全くね、お金も地位も学歴も人望もよ」
「一切ないのよね」
「そうでね」
そしてというのだ。
「特技もね」
「なくて」
「けれどそんな風でね」
「本で変な知識得て甘やかされて外に出なくて」
「もう自分で勝手にね」
「思い込んでいたの」
「そうみたいよ」
こう咲に話した。
「その人はね」
「そうなのね」
「まあね」
こうもだ、同級生は言った。
「世の中そんな人もね」
「いるのね」
「ええ、まあ幾ら何でもね」
「幾ら何でも?」
「こんな人そうそういないと思うわ」
「そうね、そんな人普通はね」
咲もそれはと答えた。
「いないわよね」
「そうよね」
「何ていうか」
咲はさらに言った。
「どうしようもない」
「そんな人よね」
「世の中何をしても救われない人っているっていうけれど」
「そうした人はね」
「誰が何しても」
それでもというのだ。
「全くね」
「救われない人もいるのね」
「そうみたいね」
まさにというのだ。
「駄目過ぎて」
「人間としてね」
「こんなどうにもならない人はね」
「誰が何してもね」
「どんな宗教や哲学でもね」
「救われないわね」
「もうね」
それこそというのだ。
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