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星河の覇皇

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第八十四部第四章 続く会談その四十四

「あの御仁は手段を選ばないわ」
「その能力を活かして」
「そのうえで、ですね」
「アウトカースト層をマウリアの支配階級にする」
「そう考えているからこそ」
「何をするかわからないわ、そしておそらく」
 ここで伊東はジャバルについてこうも言った。
「彼は天才的な政治家ではあるけれど」
「はい、確かに」
「政治家としては素晴らしいですね」
「そうした方ですね」
「内政も外交も天才よ。経済も治安もインフラも福祉もわかっているわ」
 その全てに詳しいというのだ、ジャバルは。
「謀略だけでなくね」
「確かにそうですね」
「アウトカースト政府の主席だった頃から素晴らしい政治を行っています」
「それはその通りですね」
「左様ですね」
「ええ、けれど軍事はね」 
 それはというのだ。
「どうかしら」
「軍事ですか」
「それは、ですか」
「どうなのか、ですか」
「ジャバル副主席に軍事的才能はあるか」
「知識もね」
 これもというのだ。
「どうかしら、とは言ってもないとね」
「首相は見ておられますか」
「ジャバル副主席は軍事的知識はおありでない」
「そうなのですね」
「アウトカースト政府に軍はなかったわ」
 警察はあった、だが軍隊は存在せず持っていなかったのだ。それは表の政府即ちカースト層と他の宗教の者達のものだったのだ。
「そしてこれまで軍事について見たことはないわ」
「そうなりますと」
「あの御仁は軍事的知識はおありでない」
「そこがあの御仁の弱点ですか」
「そうなのですか」
「そうよ、だからね」
 それ故にというのだ。
「そこが出るとね」
「危ういですか」
「そうなりますか」
「ジャバル副主席の弱点ですか」
「そうなのですか」
「私はそう思うわ、ただ今の時点でそれが出ることはないわ」
 ジャバルの弱点である軍事知識の欠如、それも全くないレベルでのそれがというのだ。伊東は冷静な目で話した。
「全くね」
「はい、マウリアも平和です」
「連合と同じく」
「そのことを思いますと」
「全く、ですね」
「連合以上に平和と言っていいわ」
 マウリア、この国はというのだ。
「それならね」
「軍事、軍隊が必要になることはですね」
「考えられないですね」
「そうなることは」
「到底」
「ええ、だからね」
 それ故にというのだ。
「彼を止められる人がマウリアにいないなら」
「もうですね」
「その場合はですね」
「アウトカースト層がマウリアを支配する為に」
「あの御仁は邁進して」
「そして掴みたいものを掴みますか」
「そうなるわね、ただね」
 伊東はこうも言った。 
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