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X ーthe another storyー

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第三十一話 墓参その一

                第三十一話  墓参
 この日は生憎の雨だった、だが。
 星史郎は花を持って青山墓地まで来た、するとその入り口にだった。
 彼等がいた、星史郎は彼等を見て微笑んで言った。
「有り難うございます」
「お礼はいいわ、私達は来たくて来たから」
 庚は星史郎の感謝の言葉に優しい笑顔で応えた。
「だからね」
「そうですか」
「ええ、それではね」
「今からですね」
「行きましょう」
 こうも言うのだった。
「貴方のお母さんのところにね」
「では案内させて頂きます」
 星史郎も応えた、そしてだった。
 彼は仲間達と共に青山墓地に入った、そのうえで。
 ある墓の前に来た、そこには桜塚家の墓と書かれている。星史郎はその墓を見つつ仲間達に対して話した。
「ここがです」
「貴方のお家のお墓ですね」
「はい、僕の両親もです」 
 遊人に話した、皆今はそれぞれ傘をさして立っている。
「ここにいます」
「そうなんですね」
「母も。ただその母は」
 彼女のことを特に話した。
「僕がです」
「そう言われていましたが」
「何もすることなくです」
「貴方にですね」
「そうなりました、そして僕の手の中で息を引き取りました」
「そうでした」
「表向きは事故ということになって」
 そしてというのだ。
「お葬式もしまして」
「今はこうしてですね」
「ここにいます、仲のいい夫婦だったんですよ」
「そうだったんですか」
「はい、そして」
 それにというのだ。
「僕にもとてもいい両親でした」
「優しいお父さんとお母さんだったんですね」
「そうでした」
 哪吒にも答えた。
「誰よりも。いい家庭だったとです」
「言っていいですか」
「自分でもそう思います、ただ母はいつも座敷牢にいまして」
「座敷牢ですか」
「普段はそこから出ませんでした」
「そうだったんですか」
「桜塚家の者は人に知られてはいけない」
 星史郎はこの言葉を出した。
「そうした考えでして」
「桜塚護はですか」
「そう言っていまして」 
 それでというのだ。
「普段はです」
「座敷牢の中で、ですか」
「暮らしていました。桜塚護は母と父で二人でした」
「そしてお父さんが先に、だったのね」 
 颯姫は墓石から星史郎に顔を向けて言った。
「そうだったのね」
「はい、そうでした」
 星史郎は颯姫にも答えた。
「そしてです」
「お母さんは貴方自身で」
「そして跡を継ぎました」
「そういうことね」
「ですが今の僕はです」
「桜塚星史郎ね」
「それでここにいると思って下さい」
 こう言うのだった、そして。
 星史郎は雨に濡れている墓石を洗っていった、それを仲間達も手伝い線香を収め花を代えた、この時にだった。 
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