| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

地域の活性化と抗えぬ血筋

(ラインハット王国:アルカパ)
ビアンカSIDE

「……さて、落ち着いたかい?」
笑いに侵食された娘夫婦の落ち着きを待って、リュカの優しい声が部屋に満ちる。
先程までの騒がしさからは真逆で静けさが支配する。

「アルカパ活性化への道筋が大まかにだが決まった所で、僕から重大な提案がある」
リュカが重大と言うからにはかなりの事であろう。
身内等は解ってるから当然真剣な顔になるが、ここまで実力を見せつけられてきたスネイ町長側からも真剣さが伝わってきた。

「ここまでした話し合い……全部無効にしてくれる」
「「「はぁ!?」」」
うん。『はぁ!?』である。
コレまでの時間は何だったのか……今更無効と言われてもスネイ町長側は納得しない。

「まぁ聞いてよ」
ざわめくスネイ町長側の面々を手で制し、何が何なのか説明するつもりだ。
当然だわ。私も説明を求める!

「実は僕……グランバニアでは税金で飯を食ってる身なんだよね」
間違いでは無いわね。
リュカお得意の、相手に勘違いさせる物言いだわ。

「でね、そんな立場の人間が、地方とは言え他国に干渉する事は結構な問題なんだよ」
「確かにそうですね。内政干渉は国際問題になりますね」
流石は王子様。私なんかより解ってるわね。

「取り敢えず誰もが考えそうな大まかな案の提出と、それに必要な人材が存在する事の証明は終わったわけだし、僕が居なくても良くないかなって思うわけ」
「で、ですが……現にもう関わってしまってるじゃないですか」
この活性化規格を遂行したいスネイ町長は必死に食い下がる。

「そうかなぁ……僕、関わってるかなぁ? 今日は別に合コンしたと思えば良いじゃん。ほら丁度男4人女4人で楽しくお喋りしたワケだし。そんなさぁ、合コン中に出てきたくだらないお喋りの内容なんて誰も真に受けやしないよねぇ……きっとここに居る皆は今日の事は忘れてしまうと思うんだ」

「そうね……皆で“彼氏”“彼女”や“夫”“妻”を自慢し合っただけの会でしたし、何も気にせず明日からは日常を送ればいいわけですもんね」
「でもポピー……ここでの出来事は事実で、俺等はラインハット王都から無理矢理連れてこられたワケだし、ここでの会合は忘れてても会合の内容……特に活性化計画は、何らかの拍子に町長が思い出すかも知れないよ。誰からの提案だったのかは思い出せずに」

「そうしたら……町長自らが私達を集めて、活性化計画を発表して計画進行させれば良いじゃない。その時は、そこのデカい猫と飼い主夫婦が居ないかも知れないけど、記憶違いで元々居なかったかも……いえ、居たという記憶が間違いになるかも知れないわね」

「そうですね……私もウソを吐けと言われたくないし、ウソを吐きたくも無いです。純粋にフェルマーの実力を世間に広めたいだけですからね。それに……下手に多数の人間が関わっていると手数料とかリベートとか言って毟られる恐れがありますからね。必要の無い人材は関わらせない方が賢明ですわ」

「じゃぁ宴もたけなわではございますが、本日の合コンはこれにてお開きと……」
「あ、一つ良いですかリュカさん」
私にも理解出来る形で終わろうとしたが、コリンズ君が何やら疑問を呈してきた。あれ……貴方には理解出来なかったのかしら?

「すみません。この質問だけで終わりで、俺も皆さんも夢から覚めて現実に戻りますけど、如何しても気になる事があるんです」
「何だよ今更ぁ……オヤジそっくりでうるせーなぁ」
オヤジさんがうるさいのはリュカに対してだけよ、きっと。

「今回の夢の内容ですけど、資金は如何されるんですか? 金がない事には本当に夢物語で終わりますけど?」
「馬鹿ねぇアナタ……お義父様に似すぎよ」
嫁の貴女はフォローしなさいよ!

「コリンズ様……間違いなくあのハゲの商人さんが被害に遭います。知らないで良い事を善良な人々が知らない方が良いと思います」
「なるほど……大変失礼致しました。フレイちゃんもゴメンね……考えたくも無かったよね」

「ハ、ハゲの商人ってのは世間の共通認識なのか!?」
スネイ町長の呟きに状況が解っている者等が肩を竦めて返事をする。
ちょっと安心したのはフェルマー君はまだリュカ毒に侵食されてなかった事だ。彼も状況を把握し切れてない。

「さて……」
今度こそ終わったから立ち上がるリュカ……
私も一緒に立ち上がる。

「おっと……皆はまだ座ってなさい。夢から覚めるんでしょ」
と言って礼儀正しく立ち上がろうとしたスネイ町長側を手で制し、先程までの話し合いを夢から現実にさせようとした。格好いい。

「忙しいわねお父さんも……今からサラボナに行かなきゃならないなんて」
「え……行かないよ? 流石に今日は帰らないと……仕事の途中で来ちゃったから、部下が『仕事が進まねーだろ!』って怒るし」

「部下って……あの金髪の生意気なガキでしょ?」
「部下って……あの金髪の生意気なガキだねぇ!」
名前で呼んであげなさいよ。

「怒らせても問題は無くなぁい?」
「怒らせても問題は……無いなぁ」
可哀想でしょ、真面目に仕事をしてくれてるのに。

「よし、じゃぁサラボナに直行だ。おいスネイ。余ってる手斧ってある?」
何で手斧?
「また……」
何でフレイが頭を抱えるの?

「さ、探せばあるとは思いますが……」
「必要無いでしょ! 話し合いに行くだけなんだから武器なんて不要よ!」
何かを知っているフレイは必死に手斧持参を止めさせる。きっとどっちでも同じなのに。

「そうだなぁ……男だったら拳で勝負だね! うん、流石フレイちゃん……何時(いつ)も良い事を言う! よ~し、話し合いで解決するぞー!」
そうは言いながらも拳を握りしめシャドウボクシングするリュカ。

「もう……嫌」
両手で顔を覆って項垂れるフレイ。可哀想……
「お姉ちゃん……趣味悪い!」
遠回しに私の男の趣味もディスってくる。可愛くない……

ビアンカSIDE END



(ラインハット王国:アルカパ)
ポピーSIDE

「あ~あ……サンタローズにした悪戯、バレちゃった。誰よぉ密告(チク)ったの」
愛しの両親が完全に帰った事を確認して、白々しい口調で目撃者(フレイ)に視線を移す。
勿論、彼女が言ってない事は解っているわよ。

「あんな事する人間は限られてますから、あの人になら直ぐにバレますよ。侮りすぎじゃぁないですか?」
私の視線をモノともせず、寧ろ蔑んだ目で睨んでくる。
怖いわぁ~(笑)

「ゴホンっ……さて町長。分け前を与える相手が減った所で、再度今回の企画の話しをしましょうか」
私達の可愛らしい姉妹喧嘩を止めるべく、マイダ~リンが司会進行役に躍り出る。
う~ん、格好いい!

「その前に……私と妻の事をもう少し知ってもらった方が、今後に支障が出ないと思います。騒がずに聞いて下さい」
「え……あ……はぁ……先程の方(リュカさん)の娘さん夫婦……ですよね?」
まぁウソは吐いてないわ。詳しく言ってないだけで。

「申し遅れました、私はコリンズ。ラインハット王国ヘンリー副王の子……第一王位継承権を持っている者です」
「「「えええええぇぇぇ!!!!!」」」
当然だが町長等から驚きの声が響き渡る。騒がしくなった!

「ども、妻ッス」
もう長ったらしく説明する必要も無いだろうから、気さくに簡略して自己紹介は終える。
突然目の前に王族が現れたから硬直してなさる(笑)

「あ、あの……では先程の方……リュカ様は……グランバニアの……」
「ストップ!!」
町長夫人が事実から導き出した現実に辿り着き発言をしそうになった瞬間にフレイちゃんが大声でストップ・ザ・マダムする。

「町長夫人……先程の方とは誰の事ですか? 何か夢でも見ておられたのですか? ここには私達しかいませんけど?」
王族のお家事情に詳しい平民は少ない。
でも気にしないで居たけど、知ってる噂好きも居るのね。

「あ、あのさ……フレイのお父「フェルマーは私の事キライ?」
あら……フェルマー君は知らなかったのかしら?
フレイちゃんは知られたく無かったのかしら?

「す、好きだよ!」
「じゃぁあの人が何者かなんて関係なくない?」
真実に辿り着かせたくない娘っ子は、無い乳押し当ててセクシーに迫る。

「う、うん……」
「じゃぁ私だけを見て♥」
腕を抱きしめ、顔を近付け、耳を甘噛み、甘く囁く。

こんな高度な色仕掛けを知っているとは……田舎娘と侮るわけにもいかないわ。
でも……迫り方が父親に迫る姉にそっくりね。
言ったら絶対に激怒するわね(笑)

「アレを私がお兄ちゃんにやったら、如何(どん)な反応するかしらねぇ?」
「アイツ娘一筋だから効果無いと思う」
流石に他者には聞かれない様に小声でコリンズに聞いてみた……私もそう思う。つまらん、止めとこう。

「さて、話しを戻しますがよろしいですか町長?」
「は、はい殿下!!」
急に背筋を整えて緊張を露わにしたわ。無理もないか……

「大筋は先程夢の中で決まった通りで良いと思います。異論はないですよね?」
「微塵もございません!」
やりやすいけど、やりにくいわねこの男。

「では追加項目があるのですが……よろしいですか?」
「はい。何でもよろしいでございます!」
内容を聞けよ!

「ゴホンっ……内容は、出来上がった名産品を売り出すのに、パッケージやらポスターやらが必要になると思います。そのパッケージやらポスターのデザインを、私の知り合いに委託したいのですが……問題無いでしょうか?」
「全くございません!」
だから……話し合いはしようよ。

「では一応その者の事をお伝えします。家柄は問題ありません。犯罪歴もありません。人付き合いが苦手なので、少々会話はしにくいですが、殆どの事柄は私が直接伝えますので、アルカパ側には手間を取らせません」
「はい。宜しくお願いします!」

「……今回の話しが私等にも突然だったので、当然ですがこの者には何も伝わってません。明日以降に話しを持ち込む予定です」
「はい。段取りも完璧でございます!」

「……だから、段取りも何もこれからなんです!」
「そ、そうでした! 申し訳ございません!!」
ダメだ……コイツ小者過ぎる。ミクロン者って表現した方が良いわ。

「兎も角……今後は一緒に仕事をする仲になる予定の者ですから、勝手に彼の事を話します。もう黙って聞いてて下さい!」
「はい。黙ります! 息もしません!!」
死ぬのかな?

「この者は子爵家の三男でして、長男は既に領地経営に尽力していて優秀で、次男は我が城の兵士をしていて、この者も優秀です。先程も言いましたが人付き合いが苦手なので、少々自宅に籠もる事が多く、コミュニケーション能力が壊滅的です。ですが独特な絵を描き、その画力は世界でも通用するレベルだと私を初め王家一同感じております。ですが問題なのがこの家の四男でして……」
昨日のことのように思い出すわねぇ……

「先日、遅くはなりましたが私の妻の懐妊を世に通達する事を目的とした王家主催のパーティーを催したのですが、その席で何を考えたのか四男が私の妻を口説き始めたのです」
「え!? その人、頭大丈夫ですか?」
酷い言い方をするわねフレイちゃん。私の魅力に抗えなかったって思えませんか?

「一般の女性や、一般の王族でしたら大事(おおごと)にせず何とか納められたのですが……私の妻は一般からは遙かに逸脱しておりまして、その場で大声を上げて罵声してしまったのです」
「アナタ、真実は包み隠さず全部言いましょ♥」

「な、何をされたのですかポピレア様?」
雰囲気的に聞きにくい事を聞いてくる辺りは、流石は私の妹。
伊達にパパの血を引き継いでないわね。

「別にそんな大したことは……『身重の人妻をナンパするなんて良い度胸ね。アンタ自分の立場を理解しなさいよ』って優しく言ってやっただけ」
「本当にそれだけですかポピレア様?」
鋭いわねぇ(笑)

「あとぉ~……ちょっとだけぇ~……キン○マ蹴り上げたった(テヘペロ)」
「うわっ最悪」
「そこが最悪だと思うのかいフレイ?」

「ま、まだ底があるんですか殿下?」
「この女……泡吹いて蹲る貴族を足蹴にして大笑いしたんだよ!」
「やだぁ~……高笑いって言ってぇ~!」
下品だと思われちゃうぅ。

「話を戻すが……そういう経緯があるので、この貴族の誰かに名誉回復の機会を与えたい。四男以外は至極真面で、王家にも忠誠熱い者達なんだ」
「お義父様ってば凄く気遣ってましたものね」

「他人事の様に言うな!」
「私は悪くないわよ。もう十分にお腹の大きい女をナンパする方がイカれてるのよ」
イオナズンで木っ端微塵にされなかっただけでも恩を感じるべきよ!

「あの……殿下。よく解りましたわ。その方のお家である子爵家様方にも気を使うのですね」
「あぁ町長夫人は話しが早くて助かる」
旦那は話しも聞かないからね。

「因みに、その子爵家様は何というお名前でしょうか?」
「そうだね。それを伝えなきゃ何も出来ないね」
まぁ平民だから貴族全員に同じ態度をとるでしょうし問題無いと思うけどね。

「家名はネル子爵家。三男の名は“フェザン・ファン・ネル”だ。宜しくお願いする」
「四男以外は問題無いらしいから、そんなに気張らなくても大丈夫よ」
身構えさせたくなかったから、私は軽く伝えたんだけど……余計に皆の顔が強ばった(笑)

「ネル子爵って本当ですか殿下?」
「知ってるのかいフレイ?」
そんなに有名かしら?

「先日……ウチのミサに来て……終了後にお母さんに襲いかかりました、その四男(バカ)
「さ、最悪だ……」
「フ、フレイさん……その事は……プーサンは……存じ上げておりますかしらしら?」
もし知ってたら殺されるわよ、アイツ!

「言いません。私は言いませんし、お母さんも言わないでしょう。幸運な事にお姉ちゃんも丁度居ないタイミングでしたので、知ってません……知ろうともしないでしょう」
「ギリギリセーフか……?」

「ですが人の口に戸は立てられませんよ。何時(いつ)か……もしかしたら……」
「こ、怖い事を言わないでくれよフレイ!」
あの阿呆……何所まで阿呆なんだ!?

ポピーSIDE END



 
 

 
後書き
あちゃさんは
ネル家の四男が大好きです。
キャラも好きだし、名前も大好き。
何よりも作中での扱われ方が一番好きです!

PS:ドン君の軌跡
土曜日の昼前頃にラインハット王都を出立。

同日の夕暮過ぎにサンタローズに到着。

日曜日の昼前にサンタローズ脱出。

同日の夕方頃にアルカパ到着。

月曜日の午後にキラーパンサーに襲撃される。

作者と読者が笑う! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧