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イベリス

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第百十一話 喫茶店での出会いその十

「むしろ休みがないとな」
「駄目ですね」
「どんな仕事でもそうだしな」
「このお店もですね」
「お店自体は年中無休でもな」
 それでもというのだ。
「俺が休む時もあるよ」
「そうですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「俺だってな」
「お休みの時があるんですね」
「誰だってずっと働けないさ」
 マスターは確かな声で話した。
「だからな」
「それで、ですね」
「そうした日は女房とか息子がな」
「お店で、ですか」
「ここに立ってな」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「お店やっておられますか」
「そうだよ、本当にな」
「お休みはですね」
「必要だからな」 
 誰でもというのだ。
「俺だってな」
「休日はありますか」
「毎日働くなんてな」
 マスターは苦笑いで話した。
「もうな」
「出来ることじゃないですね」
「身体も心も参るよ」
 そんなことをすればというのだ。
「絶対にな」
「だからすべきじゃないですね」
「ああ、ブラック企業なんてな」
 こう呼ばれる企業はというのだ、残念なことに世の中にはそう呼ばれる企業も存在しているのだ。
「もうほとんど休みがないだろ」
「それでブラックって言われますね」
「一日の仕事時間も長くてな」
「休日もないですね」
「そんな会社はどんどん人が潰れてな」 
 そうなってというのだ。
「それが悪評にもなってな」
「世間に知られてですね」
「叩かれてな」
「誰も来なくなりますね」
「長い目で見たらブラック企業は駄目なんだよ」
「人が潰れてですね」
「評判も落ちてな」
 そうしてというのだ。
「結果として人も来なくなってな」
「最後潰れるんですね」
「会社自体もな」
 人だけでなくというのだ。
「噂じゃ一日二十時間労働とかな」
「あっ、ネットで聞いたことあります」
 咲もその話に乗った。
「もうそれで死にそうになって辞めたって」
「辞めるまでも大変でな」
「無茶苦茶ですよね」
「そんな会社いてもな」 
「駄目ですね」
「どうせ何があっても何もしてくれないしな」
 社員に対してというのだ。
「だからな」
「いないことですね」
「結構色々な業種であるけれどな」
 そうしたブラック企業はというのだ。
「いてもな」
「いいことはないですね」
「他に仕事がないとか言ってもな」
 それでもというのだ。
「潰れたら元も子もないだろ」
「そうですね、身体あってですし」
「最悪死んだらな」
「終わりですね」
「過労死だってあるしな」
 マスターは真面目な顔で話した。 
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