イベリス
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第百十一話 喫茶店での出会いその七
店の中に入ってだ、咲と少し離れた席に座った。その警察官を見てだった。
咲は見たことがない位の美形だと思った、それでだ。
暫く彼を見ていたが警官はマスターとコーヒーを飲みながら話をしてそれからすぐに席を立った。それでだった。
マスターにだ、思わず聞いた。
「あの、今の」
「お巡りさんかい?」
「はい、物凄く恰好いいですね」
「実はうちは警察官の人達もね」
「巡回してくれますか」
「東京それもこの辺りとか新宿は色々な人がいるだろ」
マスターは自分に聞いてきた咲に答えた。
「そうだろ」
「人が多いだけに」
「だからなんだよ」
「悪い人が来たりもするので」
「こっそりと悪い話なんかもな」
店の中でというのだ。
「されたら物騒だろ」
「悪いことを放っておいても駄目ですね」
「だからな」
それでというのだ。
「警官さん達にもな」
「来てもらってますか」
「巡回でな、それで時々ああしてな」
「コーヒーも飲まれますか」
「ちゃんと金払ってくれるんだよ」
咲に笑ってこのことも話した。
「頼んで来てもらってるからサービスするって言ってもな」
それでもとだ、笑って話した。
「そういう訳にはいかないってな」
「コーヒー代払ってるんですか」
「そうなんだよ」
「しっかりしてるんですね」
「お巡りさんってのは大体そうだよ」
「真面目なんですね」
「そうだよ、というか普通警官や自衛官の人達警戒しないだろ」
こうもだ、マスターは咲に話した。
「大抵の人達はな」
「自分達を守ってくれますしね」
「いるだろ、いつもデモやってる」
「プロ市民とかですね」
「活動家とかな、ああした連中は嫌ってるけどな」
警察官や自衛隊ひいては彼等が所属しているそれぞれの組織をというのだ。
「何で嫌うか」
「よくないことしているからですね」
「親父や祖父さんが言ってたさ、活動家は元々過激派でな」
「学生運動とかしていた」
「そんな連中なんだよ」
「元はそうですね」
「革命だとか言って暴れ回ってた」
マスターは忌々し気に言った。
「そんな連中でな」
「まともじゃないですね」
「そんな暴れ回ってたらな」
当時はゲバ棒とかいうものを振り回して革命だと騒ぐことがいいとされていたのだ、それが昭和の学生運動であった。
「そこから一歩も成長しないなら」
「只の馬鹿ですか」
「そう言ってたよ、大学生でもな」
それでもというのだ。
「暴力は駄目だってな」
「わからないと駄目ですね」
「そもそも日本は選挙あるからな」
「それで投票したらいいですね」
「主張はいいさ」
政治的なそれはというのだ。
「けれど暴力は駄目だろ」
「その通りですよね」
「そんなこともわからなくてだよ」
そうした世の中の初歩の初歩がというのだ。
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