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ドリトル先生と桜島

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第十一幕その十

「陰謀家じゃないからね」
「それじゃあ勝さんじゃないね」
「それはよかったよ」
「勝さんが黒幕じゃなかったら」
「それなら」
「けれど」
 それならそれで、です。皆は暗い顔になってお話しました。
「だとするとね」
「薩摩藩?」
「それで当時薩摩藩を動かしていた西郷さん?」
「そして西郷さんの盟友で軍師だった大久保さんかな」
「実は以前から言われているんだ」
 西郷さん達が龍馬さん暗殺の黒幕ではないか、というのです。
「薩摩藩はどうも龍馬さんが邪魔になっていたみたいだから」
「それならなんだ」
「西郷さんが大久保さんとお話して」
「それで暗殺を命じた」
「そうかも知れないんだ」
「西郷さんの下には薩摩藩の志士の人達が集まっていてね」
 大久保さんを筆頭としてというのです。
「西郷さんがやってくれって言われたら」
「その通りに動く」
「例えそれが暗殺でも」
「そうしていたんだ」
「薩摩藩の志士の人達は」
「西郷さんには人を惹き付けるカリスマもあってね」
 それでというのです。
「後に明治帝も気に入られた位だから」
「それで西南戦争が終わってもだね」
「西郷は逆賊ではないと言われたんだったね」
「西郷さんの人柄に帝も魅了されていて」
「どんな人かご存知だったからこそ」
「それで死後すぐに名誉を回復されてね」 
 明治帝ご自身がというのです。
「高い位を与えられているよ」
「凄いね」
「流石西郷さんだね」
「器が大きくてカリスマも備えていた」
「そんな人だったんだね」
「だからその西郷さんが龍馬さんが薩摩藩にとって邪魔だと判断して」
 そうしてというのです。
「暗殺を命じたらね」
「その佐々木さんも動いたんだ」
「そうしたんだ」
「その可能性があるんだ」
「佐々木さんは京都見廻組にいて幕府の方にいたけれど」
 そうであってもというのです。
「それでもね」
「直新陰流の縁で」
「薩摩藩のお家芸の」
「その可能性もあるんだ」
「西郷さんが黒幕だって」
「佐々木さんが実行犯でなくてもね」
 そうであってもというのです。 
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