X ーthe another storyー
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第二十九話 家族その四
「そのことは」
「いえ、それはです」
「確かに嬉しいですが」
「何よりも私達の娘です」
「それで家族ですから」
両親は遊人の問いにこう返した、それも即座に。
「嬉しいです」
「一緒にいてくれることに」
「家族として娘として」
「これからもいて欲しいです」
「二人共私のことをそう思っていたの」
颯姫は両親の言葉を聞いてはじめて知ったという様子で述べた。
「そうなの」
「当たり前だ」
「私達の娘なのよ」
両親は娘にも即座に答えた。
「それならよ」
「言うまでもないことだろう」
「言うまでもない」
颯姫はその言葉にも反応した。
「そうなのね」
「これが親というものよ」
庚はその颯姫に話した。
「絆がね」
「あるの」
「そうよ」
こう話すのだった。
「家族はね」
「そうなの」
「だからね」
それでというのだった。
「人は皆大切にするのよ」
「家族を」
「そして友達にも絆があって」
「今の私達ね」
「恋人同士にもよ」
「そうなの」
「誰でも作ることが出来て持てるわ」
庚はこうも話した。
「絆はね」
「家族の絆も友達の絆も」
「貴女は今は友達の絆を持ったわ」
「自分で作って」
「そしてね」
庚は颯姫にさらに話した。
「家族の絆は最初からあったのよ」
「私が生まれた時から」
「そうよ、そしてね」
さらにだった、庚は颯姫に話した。
「恋人の絆もね」
「作ることが出来るのね」
「そして持てるわ」
「私も」
「貴女も人間だからね」
そうであるからだというのだ。
「必ずね。ひょっとしてだけれど」
「ひょっとして?」
「もう作りはじめているかも知れないわ」
「そうなの」
「若しかしたらね」
ここではだった、庚は悪戯っぽく笑った。そのうえで颯姫に言うのだった。
「そうかも知れないわ」
「私が誰かを好きになっているのね」
「そうかも知れないわね」
「そうか、颯姫もそんな年頃か」
「考えてみればそうね」
彼女の両親は庚の話を聞いて笑って述べた、見れば二人共自分達の娘の友人達をもてなし続けている。様々な料理に酒、飲みものがテーブルの上に次から次にと置かれている。颯姫達はそれ等を口にしつつ話しているのだ。
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