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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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タブー

 
前書き
本当はシリルとウェンディのイチャイチャをやりたかったけどうまくできなかったので諦めました。 

 
第三者side

「いやぁ、それにしても今回の大会は最初から大荒れだな」
「だな」
「まさか妖精の尻尾(フェアリーテイル)がこんなに苦戦するとは」

一日目を終えたドムス・フラウ。そこから帰路に付いていた観客たちはこの日の出来事を振り返っているようだった。

「ラミアも出遅れるなんて珍しいよな」
「セイバーは安定だなぁ」
「いやいや、やっぱ今回はマーメイドでしょ」

現在の順位と今後の展開を予想し盛り上がっている観客たち。そんな中をフードを目深く被った小さな影がスルスルと抜けていく。

「あ、やっぱり」
「!!」

ようやく人混みを抜けられるかと思ったところ、背後から聞き覚えのある男の声が聞こえそちらを振り向いてしまう。

「あんただったんだな、あの時の」

小さなその人物の目に映っているのは剣咬の虎(セイバートゥース)の一人であるグラシアン。その人物を見るやすぐさまその小さな人物は走り出す。

「あ!!待ってくれ!!」

それを慌てて追いかけようとするが、人が多くてなかなか前に進めない。ようやく人混みを抜け切ったかと思ったが、すでにその人物の姿は見えなくなっていた。

「逃げるってことは・・・やっぱり何かあるんだな」

だが、それにより以前から感じていた疑問にさらに拍車をかけている青年はもう一度周囲を見回した後、この場からゆっくりとした足取りで離れていった。

















コンコンッ

ドムス・フラウにある各ギルドの医療室。そこには三人の妖精が眠っているのだが、その日の大会も終わり人気もなくなってきたところでその部屋の扉が叩かれる。

「誰だい、一体」

そこにいたポーリュシカは眉間にシワを寄せながらも扉を叩いた人物を中へと招き入れる。そこにいたのは赤い色の髪をした青年だった。

「何のようだい」
「ラクサスたちに会いに来た」
「今寝てるよ。わかったらーーー」
「席を外してくれ」

追い返そうとしたはずだったのに青年の突然の言葉に困惑していると、彼の不敵な笑みに何かを感じ取ったポーリュシカは深いタメ息をついた。

「五分だけだよ」
「恩に着るよ」

入れ替わるように外に出た女性を確認してからベッドに横たわっている三人の元へと歩み寄る。彼はそのうちの一人、金髪の青年の頭を叩いて目を覚まさせる。

「チッ・・・なんだよ」
「狸寝入りがうまくなったな、ラクサス」

寝た振りをしていたラクサスを起こしたカミューニはケラケラと笑いながら彼のベッドへと腰掛ける。彼のその様子から、ただの来訪でないことはすぐに察することができた。

「見舞いに来たわけじゃねぇみたいだな」
「一応それも兼ねてるぜ。ただ、メインは違うけどな」

ニヤリと笑ってみせる彼を見てラクサスは目を細くさせる。そんな彼に対し、カミューニは窓の外を見ながら話し始める。

「ラクサス、ここから残りの試合は何があっても出るな」
「何?」

彼が何を言いたいのかわからず身体を起こして問い詰めようとしたが、痛みが走り思ったように動かない。それに気が付いているのかいないのか定かではないが、カミューニは話を続ける。

「お前の力はこれから必要になるからな」
「どういうことだ?」

意味がわからないため問いかけては見たものの、青年は答えようとはしない。それがますます怪しいとは思いつつやり取りを続けるが、結局彼の真意を聞き出すことはできなかった。




















「一日目が終わったようだね」

周囲を見渡しても何もないその空間にいる数人の人影。そう一人が呟くと、他のものたちも同意するように頷いていた。

「最後の余興としては十分なものになっていると思います」
「あいつらは何も知らないんだからな、今のうちに楽しんでおいてもらおうぜ」

冷静に答える存在とこれから起こることを考えただけで笑いが止まらないといった様子の存在。他のものたちもそれに呼応するなか、一人の女性だけは暗い表情をしている。

「何か言いたいことがあるかい?アンクセラム」
「・・・いいえ」

何か言いたげな表情をしていた彼女に対して問いかけたその存在だったが、彼女は何を言っても意味がないことを理解していたため、何かを言う気にはならなかった。

「そっか。ならいい。一応全員現状を確認しながら、何か問題があれば教えてくれ。場合によっては早めるかもしれないからね」

最後の一言を言う際のその存在の表情を見て背筋が凍りついたものも多かった。そのまま引き留められる間もなくそれは姿を消してしまい、後に残ったものたちも続々とその場から立ち去る。

「まだ時間はあるからね。何とかしてみせるわ」

そう呟いた黒髪の女性もその場から姿を消し、残された最後の一人はニヤリと笑みを浮かべて呟いた。

「さてさて。本当にうまくいくのかなぁ?」


















シリルside

大魔闘演武一日目を終えたその夜、俺たちはいつも通り酒場に集まり宴会を開いていた。

「だぁ!!クソッ!!負けたぁ!!」

全員が大騒ぎのそんな中、一際声を張り上げていたのはカナさんだった。ただでさえお酒の量が多い彼女はこの日は敗戦の悔しさからなのか、いつもよりも飲むそれの量が明らかに多い。

「あんまり飲み過ぎるなよ、カナ」
「まだ明日以降もあるんだろ?」
「うるさい!!もっと酒持ってこい!!」

周りにいたウォーレンさんたちが止めるがそれを振り切りなおもお酒を煽るカナさん。相当荒ぶっているのでちょっと近くには寄らないでおこう。

「グレイ様!!可哀想なジュビアを癒してください!!」
「だぁ!!あんまりくっつくな!!」

一方のジュビアは全然負けたダメージなんか無さそうな感じ。負けたことにかこつけてグレイさんに抱き付いている彼女をグレイさんは引き離そうとしている。
もっとも、実はさっきまではグレイさんも優しく彼女を慰めていたのだが、それによりジュビアさんが調子に乗ってしまい要求がエスカレート。今は水になりながら彼を飲み込もうとしている勢いのため反撃していたりする。

「みんな薄情だよなぁ、ナツ兄たちがケガして寝てるのに」
「だからだよ」
「え?」

酒を浴びるように飲みながらどんちゃん騒ぎのみんなを見てロメオくんが頬杖を付きながら呆れたように言葉を漏らす。ただ、みんなの気持ちが俺にもわかる。

「あの三人が意識不明になるなんて、誰も想像できなかったからね」
「少しでも不安な気持ちを消したいんだよ」

ギルダーツさんとラクサスさんの最強候補二人にこういう大舞台に強いナツさんが揃っての敗北。俺たちだって不安で押し潰されそうなわけだし、もっと長い時間一緒に過ごしてきたみんながそれを感じていないわけがない。
それを紛らわせるための宴会なのは俺たちの目から見ても明らかだった。

「そんなもんなのかぁ」
「まぁ、それがなくてもこれはやってただろうけどね」
「あははは・・・」

何かにつけてお酒を飲むのが好きな人たちだからあの三人の件がなくてもこの宴会はやっていたのは間違いないと思う。というか恐らく最終日までこんな感じのどんちゃん騒ぎの連続なんだろうなぁ、と遠い目をしていると、事態をよりややこしくする来客が訪れた。

「グレイはいるか?」

開かれた扉から入ってきたのは銀髪の切れ長の人物であるリオンさん。その後ろからはサクラが入ってきていた。

「リオン」
「リオン様」
「おおっ、ジュビア。グレイはいるか?」
「目の前にいるよ!!」

一緒にくっ付けながら彼の方へとやって来たグレイさんとジュビアさんだったけど、リオンさんにはジュビアさんしか見えていなかったのかはたまた単なるボケなのか、グレイさんが見えていなかったようだ。

「師匠!!今日はお疲れ様でした!!」
「俺、何もしてないけど」
「まぁまぁ」

元気いっぱいでこちらへとやって来たサクラは深々と頭を下げる。そういうのは競技に出た時に言うべきだと思うけど、礼儀正しいとも思えるのでここはスルーしよう。

「あれ?レオンとシェリアは?」
「サクラだけ?」
「はい!!そうであります!!」

こういう場合は必ず一緒にやって来るはずのレオンとシェリアがいないことに驚いてしまう。リオンさんがサクラだけを連れてくるなんて珍しいこともあるもんだ。

「レオンさんとシェリアさんも一緒に行こうと思ったんですけど、なんか二人でベッドにくるまってたので起こそうとしたらリオンさんに止められたので置いてきました」
「「「!!」」」

無垢なサクラだからこそ平然と言ってのけたけど、俺たちは二人が何をしていたのかおおよそ察したため何も言えずに顔を赤くしてしまう。

「そ・・・それで二人は何しに来たの?」

懸命に話題を変えようと問いかけるとサクラはここに来た理由は把握していなかったようで首をかしげていた。じゃあリオンさんに聞こうかと思ったけど、彼は久々のジュビアさんに興奮しているようでグレイさんがそれを引き離そうとしていた。

「リオンさん?今日はどうしたんですか?」

もうしばらく静観してから話しかけようかとも思ったけど、なかなか終わらなそうと察したウェンディが声をかける。それにより本来の目的を思い出したリオンさんは咳払いをしてから話し始めた。

「ナツたちは大丈夫なのか?」
「重症だな。今はポーリュシカさんが看てくれているが・・・」
「そうか」

見知った仲であるためか三人の容態を聞いて暗い顔を見せるリオンさん。そんな彼を見て、グレイさんは笑いながら口を開いた。

「なんだ?お前が他人の心配なんて珍しいな」
「そこまで珍しくないだろ?」

心外と言わんばかりに答えるリオンさん。グレイさんは兄弟子である彼をからかうことができる材料ができたと終始楽しげな笑みを浮かべていた。

「わざわざ見舞いに来てくれたのか?」
「それもある。が、気になったことがあってな」
「気になったこと?」

そう言ったリオンさんは俺に一度視線を向けた後、腕を組みながら言葉を紡ぐ。

「あいつらを見て、何か感じなかったか?」
「何かって・・・なんだよ」

突然の問いのせいでグレイさんは意味がわからずエルザさんと顔を見合わせる。それを見てリオンさんはタメ息をついてから、首を横に振ってからさらに続ける。

「いや・・・俺の気のせいかもしれないからな。それはいい。ただ、あいつらは間違いなく何かがおかしい」

理由はわからないけど確信を持っている様子のリオンさん。その言葉の意味がいまだにわかっていない俺たちは顔を見合わせていた。

「サクラも何か感じた?」
「いいえ?でも、レオンさんが何かニヤニヤしてたのはわかります」

レオンもどうやらリオンさんの言いたいことを察しているらしい。俺たちはいまだによくわかっていないけど、二人は何が言いたいんだろうか。

「恐らく戦ったナツとラクサス、ギルダーツも気が付いているとは思ったが、この場にいないなら確認のしようがないな」
「何に気付いたんだよ」
「それはまだ言えん。もし違ったら逆にやられかねないからな」

ほぼ確定的ではあってもそこはリオンさん。石橋を叩いて渡るといったところなのだろうか、やけに慎重だ。まぁ、あれだけの力を見せられたら万が一にでも間違った情報は渡せない。それを頼ってもし誤っていれば取り返しのつかない事態にもなりかねないからだ。

「ただ・・・これだけは確実に言える」

真剣な表情でそう言ったリオンさん。ただ、次に続けられた言葉に俺たちはますます困惑した。

「あいつらはタブーを犯している」

何のことを言っているかわからず説明を求めようとした俺たちだったが、リオンさんとサクラのことを探しに来たオババ様が乱入して二人を連れ帰ってしまったため詳細を聞くことはできなかった。あとに残された俺たちは顔を見合わせ、首をかしげる。

「なんだよ、タブーって」
大鴉の尻尾(レイヴンテイル)みたいなことをしてるってことか?」

外部から魔法での援助、幻覚魔法を使って多人数での一斉攻撃・・・以前の大会でルールを犯し続けてきたギルドのことが脳裏を過る。だけど・・・

「それは絶対にないです」

俺はそれを真っ向から否定した。あの人がそんなことをするとは思えないし、それをする必要もない。それだけの力が彼にあることはわかっていたからだ。

「だがリオンがウソをつくとは思えん」
「他に何があるって言うんだよ」

リオンさんの言葉には力があった。ただでさえ真剣で生真面目な彼がウソをついて惑わしてくるとは思えない。

「まさか・・・な」

そんな中エルザさんは何か思い付いたようだったが、彼女も確信には至らなかったのか誤魔化すだけで何も教えてはくれなかった。その後、また酔いが回ってきたみんなが大盛り上がりの中、俺とウェンディは明日のことも考えて先にホテルへと戻るのだった。

















第三者side

「ハァ・・・ハァ・・・」

その頃狩猟豹の頭(チーターヘッド)の面々が泊まっている宿の一室には四人の男たちが集まっていた。

「大丈夫か?」
「問題ない。それより、明日は予定通りなんだろうな?」

全身から吹き出す汗を拭いながら大柄の男が赤髪の青年へと問いかける。それを受けた彼は小さく笑みを浮かべ、頷いてみせた。

「あぁ。予定通り明日の競技パートはお前に任せる。しっかりその力を示せよ」
「うむ」

明らかに万全には見えない様子の男だったが、それを気にする素振りを誰も見せない。それどころか、話題は別のところへと進んでいた。

「エリゴ・・・じゃなかった、シルフェは大丈夫か?」

赤髪の青年の隣で壁にもたれ掛かっている、背丈も体格も似たような人物が問いかける。それに青年はニヤリと笑って答えた。

「あぁ。まぁこの大会は無理だろうが、すぐに元通りになると思うぜ。たぶん・・・半年くらいすれば」
「それはすぐとは言わないと思うが・・・」

最後の歯切れの悪さが気になったがそれ以上は追求することはできなかった。そして今度は赤髪の青年が問いかける。

「ただ、バトルパートは変更が入った。本当は三日目に回ってほしかったが、明日のバトルパートをこいつがやりたいって言うからよぉ」

そう言って指をさしたところにいるのは黒装束を纏った人物。彼はすでに明日のことで頭がいっぱいなのか、わずかに見える口元が緩んでいた。

「となると明後日からはどうなる?」
「三日目の競技パートのターゲットを変えるかもな。その時は競技も変えざるを得ないが。それに・・・」

黒装束の人物へ視線を向けた後、深いタメ息をついて再び話し始める青年。

「三日目のバトルパート。ここも変更が必要だ」

大会運営のパンフレットを投げ捨てながら頭を悩ませたように首を振る青年。その気の毒さに大柄の男と隣いる人物は哀れみの視線を向けていた。

「まぁ、気にすることはねぇ。いくらでも対策はあるからな」

ただ、それでも青年は嫌な顔を見せることはしなかった。まるで手立てはいくらでもあると言わんばかりのその姿に三人は唇を結び、頷く。

「明日も重要な戦いになる。特に競技パートは相当難しいが遂行してもらわなければならない。いけるよな?」
「無論」

鋭い眼光を送る青年に静かに答える大男。それに満足げな表情を見せた青年は全員に目配せをすると、扉を開き、周囲に人がいないことを確認してからその場を立ち去った。





 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
次からは二日目に入っていきます。
リュウゼツランドみたいなお遊び要素も入れたいけど現状思い付かないのでパスです。 
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