ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~
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SAO:アインクラッド~神話の勇者と獣の王者~
《聖剣騎士団》
翌日。
朝起きると、キリトの寝床の前には、情報屋やら剣士やらが《二刀流》のことをどこからか聞きつけて湧いていた。
キリトが離脱するのに転移結晶を一つ無駄にしたほどだ。
情報屋から逃げるため、キリトはエギルの店の二階を占領していた。
「あっははははは!!!ひでぇなそりゃ!傑作だ!!」
「笑いごとじゃないぞセモン……」
アスナはギルドに休暇届を出しに行っているので後から来るはずだ。キリトは昨日のデュエルのことを思い出していた。危なかった。ハザードがいなければ死んでいただろう。そのハザードは今日はどこかに行ってしまっていて、ここにはいない。セモンはたまにこういうことがあるんだ、と言っていた。
ハザードはたまに、たった一人で危険なダンジョンにこもったり、何日も帰ってこなかったりすることがあると。
「それにしても……すごい奴だったな、あのシャノンっていうプレイヤー」
「すごい、奴だった。俺達の自慢だったんだ、あいつは。なのに……なのにあいつは……!!」
そういえば、奴は……シャノンは、《聖剣騎士団》なるギルドのリーダーだった、とセモンが言っていた。そして、裏切り者、と、ハザードが叫んでいた。
いったい、《聖剣騎士団》とはなんなのか。
シャノンとは何者なのか。
たしかにセモンとハザード、そしてコハク、さらにはシャノンのHPバーの横には、《聖剣騎士団》のロゴマークと思われるエンブレムが輝いていた。
つまり、彼らはもともと一つのギルドメンバーだったのだ。それが、なぜあのような……。
キリトは最も詳しそうな人間……この部屋にいるもう一人の人物、セモンに聞くことにした。
「セモン、《聖剣騎士団》って、一体なんなんだ?あいつは……シャノンは、何者なんだ……?」
セモンは、数秒迷ったように沈黙すると、今までに見たこともないくらい表情をゆがめると、
「……お前には、話してもいいかもな……」
そうして、セモンは話し始めた。
「俺達《聖剣騎士団》は、たった五人からなるギルドだった。メンバー全てがユニークスキル使い。攻略には参加しなかったけど、最強クラスのギルドだったってことは、俺の小さな自慢だった……」
*
……俺と、ハザードと、シャノンはリアルでも知り合いだったんだ。というか、学校の同級生だった。
シャノンはリアルラックが恐ろしく低くて、ハザードだけがβテストに当選した。二人で、すごく羨ましそうにあいつを見たのを覚えている。
あの、始まりの日。俺達は三人でパーティーを組んで、ゲームを攻略することにした。ハザードはβテスターだし、もともとシャノンは、効率のいい狩り方なんかを、よく思いつくやつでさ。ハザードのβ時代の知識も借りて、ハザードや俺を、レベル面ではどんどん追い越して行ったんだ。
それからしばらくして、コハクが仲間になった。十三層で、槍使いのくせにソロプレイしてて、接近戦に苦戦してたとこを助けたんだ。
助けてなんていってないって……このまえとほとんど同じ感じだぜ?あいつ、ホントかわってなかったんだな……。
そのころから、シャノンが一人で行動するようになった。あまり俺達といなくなって……。たぶん、一人でレベル上げをしていたんだと思う。二十三層くらいの頃の話だった。俺のレベルは五十八、シャノンのレベルは八十を超えていた。
三か月くらいたったかな。シャノンが、急にギルド作ろうぜって言い始めて。
あいつ、いつの間にか新しい仲間を連れてきてた。
ゲイザーさんって言うめちゃくちゃ強い体術スキル使いだった。いつもは無口なんだけどさ。陰で俺たちを励ましてくれたり、ああ、それとすっげー情報通で、いっつもすごい情報を持ってきてくれた。
こうして、できたのが《聖剣騎士団》。効率的な狩場で、チートに近い効率の良さで狩りをして―――ちなみに門外不出だから教えないぜ――――俺達のレベルはどんどんほかのプレイヤーとどんどんかけ離れていった……。
それから半年後。俺達は同時にユニークスキルを習得した。
最初に気づいたのはハザードだった。フィールドボスをテイミングできちゃってさ。
俺の《神話剣》。
ハザードの《獣聖》。
コハクの《妖魔槍》。
シャノンの《太陽剣》。
ゲイザーさんの《流星拳》。
全部、凄まじくて、あり得ないほどの強さで……。
俺達は、34層の時点で全員がレベル70に到達してた。あり得ないだろ?普通この層で最高レベルは50くらいだ。
でも……シャノンはそれだけにとどまらなかった。
あいつは、この時点でレベルが100になっていたに。
それに……いつなのかはわからない。あいつは、もう一つユニークスキルを手に入れてた。
そのスキルが《帝王剣》。あいつは、その力を使って……。暴走を始めた。
キリトも、聞いたことくらいあるだろ。45層の攻略で、先遣隊30人がPKされた事件……。
ラフコフじゃないかって言われたけどさ。あれ……シャノンだったんだ。シャノンは、帝王剣で暴れまわって、最強クラスのレッドプレイヤーになった。知る人ぞ知る狂気の殺戮者。
今アイツが名乗っている《異常存在》の異名は、それを踏まえて、ユニークを2つ持っているっていう意味もかねてハザードがつけたんだ。
あいつは、俺達に笑顔で別れを告げて、去って行った。ギルドは解散に近い存在になった。
最初に、ゲイザーさんが抜けた。俺達三人に、何かあったら言え、と言って、去って行った。次に、コハクが。最後に俺達二人が残って、攻略組になったんだ……。
たった二人、《聖剣騎士団》の名前をひきずって……。
*
「どうだ?……笑えないだろ」
セモンの話はそこで終わりだった。長い、長い沈黙がおり……。
次の瞬間、ドアが、すごい勢いで開き、顔面蒼白になったアスナが顔を出した。
「どうしようキリト君。たいへんなことに、なっちゃった……」
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