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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第115話 罠だらけのグルメピラミッドを進め!隠された謎の本と謎の襲撃者!?

 
前書き
 原作に登場した一部の猛獣が原作にはないパワーアップをしているのと、ニトロと人間が共存していたという内容の書かれた壁画などはオリジナル設定ですのでお願いします。 

 
side:小猫


「……うにゃ」


 私が目を覚ますとそこは遺跡のような場所でした、体にこびりついていた砂を払いながら私は痛む頭を抑えながら立ち上がります。


「なにがあったんだっけ……あっそうだ、私とアーシアさんは流砂に流されて……」


 流砂の中で猛獣たちに襲われて必死で逃げて……気が付いたらここにいたことを私は思い出しました。


「そうだ、アーシアさんは……」


 一緒にいたアーシアさんの姿がないことに気が付いた私はアーシアさんの氣を探って彼女を探します。幸いそんなに離れた場所にいなかったので安心しましたがその近くに大きな氣を感じた私は急いでそこに向かいました。


「アーシアさん!」


 私が駆けつけた場所には横たわるアーシアさんを食べようとする紫色の獅子のような猛獣でした。


「フライング・レッグ・ラリアート!」


 それを見た私は透かさず猛獣の目に飛び蹴りを浴びせました、意識していなかった突然の攻撃に猛獣は痛みで雄たけびを上げました。


 その隙に私はアーシアさんを連れて逃げだしました、それを見た猛獣は当然追いかけてきます。


「くっ、巨体の割に動きが早い……!」


 猛獣は中々に早く振り切れません、猛獣は口から紫色の火球を吐き出してきました。


「わわっ!?」


 私はジャンプしたり左右に飛んで裂けますが徐々に追い込まれてしまいます。


「し、しまった!」


 そして行き止まりに追い込まれてしまいました、引き返そうにも通路は猛獣に防がれて逃げ場がありません。


「戦うしか……」


 私は覚悟を決めて猛獣と戦おうとします、アーシアさんを床に横たわらせて仙術で大きくなりました。


「ガァァァッ!!」


 猛獣は大きな足を私に叩きつけようとしました、それを防ごうとしたのですが……


『失せろ、雑魚』
「ッ!?」


 突然ゼブラさんの声が聞こえたかと思うと猛獣は逃げ出してしまいました。


「ゼ、ゼブラさん……近くにいるんですか?」
『おい小娘、時間が無いから手短に話すぞ』


 私は近くにゼブラさんがいるのかと思い氣を探りましたがいませんでした、どうやら音弾を飛ばしてくれたようです。


 そして私はゼブラさんに今の状況を教えてもらいました。どうやらここはグルメピラミッドの地下のようでイッセー先輩達も到着したそうです。


 でも直ぐには合流することは難しいようでこのグルメピラミッドは複雑な構造をしているらしく強い猛獣もウジャウジャいるそうです。


『いいか小娘、お前は俺の報酬だ。もし死んだりでもしたらあの世まで行ってお前をぶっ飛ばしてやる。だから精々死なねえように立ち回りな』
「は、はい!」
『後メロウコーラを手に入れたら食う飯の献立も考えておけ』
「あはは……勿論です、期待していてください」


 私がそう言うともう音弾は飛んでこなくなりました。


「ゼブラさん、ありがとうございます」


 今思い出したのですがゼブラさんは流砂の中にいたときも私を励ましてくれました。『死んだら許さねぇ』とか『ドジしやがって、手間かけさせんな』とか荒っぽいモノでしたが……


「うーん……」
「アーシアさん!」


 その時でした、アーシアさんが目を覚まして起き上がったんです。私は急いで彼女に駆け寄りました。


「小猫ちゃん?ここは一体……」
「説明しますね」


 私はゼブラさんから教えてもらった情報をアーシアさんに教えました。


「なるほど、今私達はグルメピラミッドの地下にいてイッセーさん達ももう来ているんですね」
「はい、ただ合流するにはかなり時間がかかりそうです。その間私達は自分で身を守らないといけません」
「ううっ、私も何かお役に立てればよかったのですが……」
「気にしないでください、戦いは私達のお仕事です」


 戦えないアーシアさんが落ち込んでしまいましたが私はフォローの言葉を彼女にかけました。


「貴方は私が守ります、だから安心してください」
「はい、私は小猫ちゃんを信じてますね」


 私はアーシアさんの手を握ってそう言うと彼女も笑みを浮かべて頷きました。


 アーシアさんは私にとっても一番の友達で一緒にイッセー先輩とお嫁さんになるって約束した大切な人です、皆と合流するまで彼女を絶対に守って見せます。


「とにかく先に進みましょう、ここにいたらまた猛獣に襲われてしまいますから」


 私達はグルメピラミッドの地下を進むことにしました、幸い仙術があるので通路の角で猛獣と鉢合わせるというハプニングは起きませんでした。


「しかし相当広いですね、このグルメピラミッドって……」
「はい、ラクダをレンタルしてくれたお婆さんが言っていた通り誰も解明できない謎だらけの場所なんでしょうね」


 私とアーシアさんはラクダをレンタルしてくれたお婆さんの話を思い出していました。このピラミッドが作られたのは今から何千年も昔らしいのですが当時の技術では到底できない作られ方をしているらしく謎に包まれているとの事らしいです。


 噂では伝説の食材が眠っているともあるらしいのですが恐らくそれがメロウコーラなのでしょう。


「アーシアさん、こっちに……」


 すると前の通路の一部から氣を感じたので身を隠しました。するとその通路から猛獣が現れました。


「危なかったですね、こっちに行きましょう」


 私は違う通路の先に進もうとしましたが床の一部を踏むとそこが沈んでしまいました。


「へっ……?」


 何が起きたのか分からなかったのですが背後からズシンと大きな音がしました、振り返ってみると何と巨大な鉄球がいつの間にか落ちて来ていて私達の方に転がろうとしていたんです。


「に、逃げましょう!」


 私はアーシアさんを抱きかかえると急いで逃げだしました、その瞬間鉄球も転がり始めました。


「何であんな鉄球が!?」
「多分侵入者を排除するトラップじゃないかと……!」
「なるほど、ここはピラミッドですからそういう罠もあるはずですよね!」


 ピラミッドとは本来王族などの墓として建てられる物で財宝なども一緒に入れられます、それを狙った墓荒らしもあったそうですがそういった招かれざる者を排除するために罠もあったらしいです。


 私達はグルメピラミッドを荒らしに来たようなものなので死者の怒りを買ってしまったのでしょうか?とにかく今は逃げないと!


 私は全速力で逃げますが何故か鉄球の速度の方が早くなっていき徐々に追いつかれそうになってしまいます、このままでは二人仲良くハンバーグみたいな平べったいお肉になってしまいます!


「そ、そんな!?」


 しかし私の目の前には壁が立ちはだかりました、このままでは押しつぶされてしまいます!


「小猫ちゃん、あそこに!」


 アーシアさんが指を刺した上の方、そこに小部屋の入り口がありました。私はそれを見た瞬間直にそこに逃げ込もうとして大きくジャンプしました。


 潰される間一髪のところで逃げる事に成功した私達は下の壁に激突した鉄球を見てゾッとしました。もし判断が遅れて逃げるのがあと一歩遅かったら……ううっ想像もしたくないです。


「ふう、何とかなりましたね」
「はい、ありがとうございます。小猫ちゃん」


 無事に逃げ切れた私達は一息を付きました、猛獣だけではなくああいったトラップも警戒しないといけませんね。


「……アーシアさん、こちらこそありがとうございました。あの時私は冷静じゃなかったです、もしアーシアさんが気が付いてくれなかったら死んでいました」


 私はアーシアさんが小部屋の入り口を教えてくれたことに感謝しました、もしそれが無かったから今頃ペシャンコになっていたはずです。


「私が落ち着いていられたのは小猫ちゃんが守ってくれるって信じていたからですよ、だからお礼なんて言う必要はありません」
「アーシアさん……」


 屈託のない笑みを浮かべてそう言うアーシアさんに私は胸の中が温かくなりました。


「二人で必ず生き残りましょう、そして皆と合流してメロウコーラをゲットするんです!」
「はい、頑張りましょうね」


 私はそう言ってアーシアさんと握手を交わしました。


「それにしてもここはどこらへんなのでしょうか?氣を探っても先輩達の気配はないしまだまだ離れていそうですけど……」
「あれ、小猫ちゃん。あそこに何か絵のような物がありますよ」
「絵ですか?」


 アーシアさんの視線の先には古い壁画が掘られていました、大きなピラミッドの前で人間のような生物がニトロのような生き物と一緒に食事をしている絵でした。


「これってニトロですよね……?なんで人間と食事を?」
「昔は仲が良かった……とかですかね?」


 私はニトロが人間をさらっているという一龍さんの話からニトロにとって人間は捕食対象なのかと思っていましたが、この絵からは人間と友好的な関係を築いていたようにも見えます。


「それにしてもどうしてグルメピラミッドの中にニトロに関係する絵があるんでしょうか?もしかしてこのピラミッドはニトロと何かしらの関係が……?」
「ニトロも悪魔さんや天使様と同じかそれ以上に長生きするみたいですし関係はあると思います」


 私たちはこの絵を見てニトロがグルメピラミッドに関係があると思いました、知能も高いって聞きましたしもしかしたらこのグルメピラミッドはニトロが作った、もしくは人間に建設技術を教えた……という可能性があるのかもしれませんね。


「アーシアさん……」
「小猫ちゃん、どうし……!」


 その時でした、背後から何者かの気配を感じ取って振り返るとそこにはカタツムリのような猛獣がいたのです。


 私はアーシアさんを物陰に隠すと猛獣と向き合いました、一瞬逃げようかと思いましたがカタツムリの殻の部分から勢いよく触手のような牙が伸びて襲い掛かってきたんです。


「はっ!」


 私はパンチで触手を逸らしました、そしてその隙にグルメスティックセンサーを触手に当てていました。


「エスカルアゴ、捕獲レベル38の軟体獣類……強いですね」


 エスカルアゴは再び触手を伸ばして攻撃してきました。私はそれをかわして今度は掴んで引き寄せようとしましたが触手全体が粘液で濡れていて手を滑らせてしまいました。


 すると殻の下側、ナメクジのような軟体生物が酸を吐き出してきました。私は素早くバックステップで回避しますが酸の当たった床が見る見るうちに溶けてしまいます。


 そして左右の鋭い棘を振り回して襲い掛かって来ました、私は両手でそれを掴み防ぎましたがまた触手を伸ばして攻撃してきました。


 私は持っていた棘を引きちぎって触手に突き刺してやりました、そして痛がるエスカルアゴに攻撃を仕掛けようとしましたがまた酸を吐かれてしまい私は後ろに退避します。


 するとエスカルアゴの触手が再生してまた鋭い棘が生えてきました、再生能力もあるのですか……


「上の殻と下の生物のコンビネーションが厄介ですね、それにチマチマ攻撃しても回復されてしまう。なら二重の極みでまずは殻を……!」


 その時でした、頭上から大きな斬撃のような物が飛んできて私達のいた部屋を斬り裂いてしまったんです、私は物陰に隠れていたアーシアさんを庇おうとしました。


「わわっ!?」
「きゃあっ!!」


 しかしその時でした、地面に亀裂が走って私とアーシアさんのいた場所が崩れてしまったんです。私はアーシアさんを抱えて地面に着地しました。


「わっ!?」


 しかし着地したところが濡れていたので尻もちを付いてしまいました、そのせいで二人ともびしょぬれになってしまいます。


「なんでこんなところに水が……?」
「多分さっきの衝撃で砂漠の地下水が流れてきてしまったんじゃないでしょうか」


 私の疑問にアーシアさんが答えてくれました。確かに先程の衝撃はかなりの物でした、まるでゼノヴィアさんの月牙天衝みたいでしたね。


 まあまさかゼノヴィアさんが脳筋でもこんな古い遺跡の中でそんな大技は使わないですよね、最悪生き埋めになってしまいますし。


「ううっ、服がビショビショです……」
「アーシアさん、服が透けてますよ。意外と大胆な下着を付けているんですね」
「えっ……きゃっ!」


 アーシアさんの服が地下水で濡れて結構きわどい下着が浮かんでいました、所謂勝負下着って奴ですね。


「こ、これはその……桐生さんに女は下着で男を誘惑するものだって言われたから……」
「なるほど、そう言う事ですか」


 イッセー先輩の友人の一人である桐生先輩は結構なオープンスケベだと聞いています。その人からのアドバイスでこんな下着を付けるようになったのですね。


「でも羨ましいですね、私の胸ではそういった下着は着れないので」
「あはは、小猫ちゃんも成長していますよ……」
「アーシアさんに言われても説得力が無いです、イリナさんやゼノヴィアさんくらいに大きくなってますし……」
「えっと……」


 私は成長してるアーシアさんの胸を見て自分の胸を触り溜息を吐きました。姉さまに私も成長してるとは言われましたが微々たるものです、早く仙術を使わなくてもあのナイスバディを維持できる体になりたいものですよ。


「そ、それよりもここは何処でしょうか?さらに下に落ちてしまったようですが……」
「仙術で探っても他の氣は感じないですね、一先ず安心です」


 私は仙術で辺りを探りましたが私達以外の氣は感じませんでした。


「あっ小猫ちゃん!これって……」
「棺……ですね」


 私達は部屋の隅に置かれた大きな棺を見つけて顔を青くしました。ここはピラミッドですしそういう物もあるんじゃないのかなとは思ってましたがいざ見つけると……


「や、やっぱりミイラとか入ってるんでしょうか?」
「仙術では何も感じないので生き物は入ってないと思いますが……」
「……と、とにかく先を進みませんか?死者の眠りを荒らすなんてシスターとしてあり得ませんし……」
「そ、そうですね。手を合わせて先を進みましょうか」


 私達は怖くなったので祟りが無いように手を合わせて死者の魂を弔いました。そしてその部屋を後にしようとしたのですが……


「……あれ?」


 一瞬あの棺から氣を感じた私は振り返りましたが直ぐに何も感じなくなりました。棺には上から漏れてきていた地下水が当たっていて中に染み込んでいますね。


「どうしました、小猫ちゃん?」
「いえ、何でもないです。先に進みましょう」


 私はそう言ってアーシアさんと共に先を目指すべく部屋を後にしました。しかしこの時私は気が付きませんでした、私達のいなくなった部屋にあった棺から鋭い視線が向けられていたことを……



―――――――――

――――――

―――


side:イッセー


「んぐ……んぐ……ご馳走様でした」


 俺はユニコーンケルベロスの肉を平らげてカロリーを補給した所だ、そこまで美味くなかったがまあこれで少しは回復出来たな。


「ゼブラ兄はどうだ?少しは声戻ったか?」


 俺はゼブラ兄にそう聞くが彼は首を横に振った、肉の量からして10万キロカロリーは摂取できたはずだけどゼブラ兄には物足りないらしいな。


「イッセー君、僕達もユニコーンケルベロスの肉を食べてよかったのかな?」
「イッセーやゼブラさんに回した方が良かったんじゃないのかしら?」
「気遣いは嬉しいが皆も消耗しているだろう?特に祐斗と朱乃、二人はグルメ細胞を持っているんだ。慣れない内は立ってるだけでもカロリーを消耗するからな、二人もしっかり食っていざという時に万全に戦えるようにしておけよ」


 祐斗と朱乃がそう言ってきたが俺は首を横に振った。皆も疲れているだろうし栄養補給は大事だ、特にグルメ細胞を得てそんなに時間が立っていない祐斗と朱乃は慣れている俺達より消耗は大きいだろう。だからしっかり食ってもらわないとな。


「うん、分かったよ。僕もしっかり食べておくね」
「いざという時はわたくし達も全力で戦いますわ」


 二人はそう言うと残っていた肉に齧りついた、良い食いっぷりだな。


「ゼブラさんの声はまだ戻らないのでしょうか?」
「体力ならともかくゼブラ兄の声は一回切れると回復まで時間がかかるからな、まだまだかかりそうだ」


 ルフェイの質問に俺はそう答えた。体力なら食えば瞬間的に回復するが声はそうはいかない、完全復活まで時間がかかるだろうな。


「ははっ、声が出せないならゼブラもそこまで怖くねえな」
「……」
「うおっ!急に殴りかかってくるんじゃねえよ!」
「何で煽るんですか……」


 ゼブラ兄を煽ったアザゼル先生が無言でゼブラ兄に殴りかかられている、俺はそれを見てため息をついた。


「ゼブラ兄、アザゼル先生をぶち殺すのは後にしてくれ。小猫ちゃん達に声を送ったって事は結構危険な状況なんだろう?早めに合流したい」


 俺がそう言うとゼブラ兄は渋々進み始めた、だがその目は後で殺すと鋭かった。


「おいイッセー、止めるなら完全に止めてくれよ」
「知りませんよ、貴方がゼブラ兄を煽った結果でしょう?」
「いっそ一回ぶっ殺された方が良いんじゃないのかしら?そうすればその軽い口も少しは閉じるでしょうね」
「冷てぇな……俺はあいつを怒らせてエネルギーを回復させてやろうと思っただけだぜ?そんな献身的な心を何とも思わないのか?」
「余計にエネルギーを使わせるだけだと思いますよ、貴方の場合は」
「がっくし……」


 俺とリアスさんの言葉にアザゼル先生は拗ねてしまった、でも自業自得だ。


「さて、何処に進めばいいんだ?ゼブラ兄」


 俺がそう言うとゼブラ兄は指を使ったジェスチャーで答えた。あれは声が切れた時に俺達と意思疎通するためのオリジナルの合図だったな。


「皆行くぞ、ゼブラ兄は付いて来いって言ってる」
「えっ、もしかして今の良くわかんないジェスチャーの事……嘘嘘、すっごくオリジナリティがあって良いと思うわ。だから睨まないで……」


 余計な事を言ったティナがゼブラ兄に睨まれていた、コイツも結構怖いもの知らずだよな……


「この壁を壊せばいいのか?」


 ゼブラ兄は部屋の一角にあったブロックを指差した。


「3連釘パンチ!」


 俺はそのブロックを釘パンチで破壊する、するとそこから隠された階段が現れた。


「隠し階段か!」


 ゼブラ兄じゃなきゃ見つけられなかったな、ゼブラ兄が先行して階段を降りていくので俺達も黙って後に続いた。


「……何か来るな」


 ゼブラ兄が突然立ち止まったので匂いを嗅いでみると前方から複数の匂いがした、目を凝らしてみると何か丸い物体が複数転がってくるのが見えた。


「なんだありゃ!?」
「大きなダンゴムシ!?」


 アザゼル先生とリン姉が転がってきた物体を見て声を上げた、それはダンゴムシのような猛獣だったからだ。


「ケーッ!」


 猛獣達は雄たけびを上げながら襲い掛かってきた。


「フライング・フォーク!」


 俺はフライング・フォ―クで攻撃するが硬い殻に弾かれてしまった。


「きゃあっ!」
「ごふっ!?」


 猛獣の突進が俺達を襲う。祐斗がティナを庇って背中に体当たりを喰らったり、イリナやゼノヴィアが胸やお尻を体当たりされたり、アザゼル先生が股間とお尻に同時に激突を喰らったりと阿鼻叫喚だ。


「皆大丈夫か!?」
「な、なんとか……」
「また来るぞ!」


 俺の問いかけにリアスさんが息を切らしながら答えるが直ぐにゼノヴィアの叫び声で緊張が走った。


 猛獣達は再びこちらに向かって転がってきていたんだ、あの硬い殻が厄介だな。


「僕に任せてください!」


 ギャスパーがそう言うと彼の目が赤く光った、すると猛獣達の動きが止まった。


「おお!やるなギャスパー!」


 ギャスパーは神器の力を使って時間を止めて猛獣達の動きを止めてくれた。


「皆、今の内に柔らかそうな腹を狙え!」
『応っ!』


 ギャスパーの作ってくれたチャンスを生かして俺達は猛獣に攻撃を仕掛けた。


「おらっ!」
「ギャアッ!?」


 俺は猛獣の一匹の腹にパンチを打ち込んだ、やはり殻の内側は脆かったな。


「はっ!」
「やあっ!」
「喰らいなさい!」


 朱乃がのの様棒で猛獣の腹を打ちイリナが蹴りを浴びせる、リアスさんのかかと落としが猛獣を地面にめり込ませた。


「はあっ!」


 祐斗が痺れ効果のある魔剣で腹を斬っていき動けなくする、出来るだけカロリーを得たいから今回は大目に駆らせてもらうぜ!


「ギャーッ!」


 神器によって仲間達の動きを止められたのを見た別の個体たちは恐れをなして逃げ出した。


「逃げちゃったわね」
「これ以上は無益な殺生になるからな、丁度いい」


 リアスさんは安堵の溜息を吐き俺は十分に獲物を狩れたので逃げてくれて良かったと話す。


「えーん、イッセー君ー!胸を体当たりされていたいよー!」
「だ、大丈夫か?」


 イリナが胸を抑えながらそう言ってきたので確認してみたが幸い大きな怪我はしていなかった、この教会の服はハレンチにしか見えないが防御力は凄いな。



「一応薬を塗っておけ、ほらこれだ」


 俺はルフェイに作ってもらった薬を取り出した、ルフェイの回復魔法や祐斗の回復の魔剣でもいいが出来るだけ魔力や精神力は温存しておきたいからな。


 因みにこの薬、唯の塗り薬ではなく口内の傷にも濡れる食べれる薬だ、味もそこそこ良いんだぞ。


「イッセー君が塗って」
「はっ?」
「手が痛くて塗れないよー、お願い……」


 イリナは上目遣いでそう言ってきた、いや流石にここでは……


「あっちに物陰がありますしそこでやったらどうでしょうか?」
「お、おいルフェイ!」
「時間がないので早くしてください」


 余計な事を言うルフェイに文句を言おうとしたが冷たくそう返された、反抗期なのかな……


「じゃ、じゃあそっち行って塗るか……」
「待てイッセー、私も尻をやられた。私の尻にも薬を塗ってくれ」
「えっ!?」
「イッセー、わたくしも先程口の中を切ってしまいましたわ。イッセーの太い指で薬を塗ってください♡」
「ええっ!?」
「イッセー、私も太ももに怪我したからお薬塗ってにゃん♡」
「えええっ!?」


 ゾロゾロと詰め寄ってそう言ってくる女性陣に俺は圧倒されてしまう。そもそも黒歌は当たってねえだろうが!?


 結局俺は皆に言われた箇所に薬を塗った。イリナの胸を触りゼノヴィアのお尻を撫でて朱乃の口の中に指を入れて黒歌の太ももを撫でまわす……俺は一体何をしているんだ?


「やん♡イッセー君の指気持ちいい……♡」
「イッセーに触れられるとドキドキするな……あっ♡」
「んんっ……♡イッセー君の指がわたくしの舌を触ってますわぁ……♡」
「ごめんね白音……♡あんまりイッセーとの絡みが無かったから我慢できなかったにゃん♡ダメなお姉ちゃんを許して……ひゃっ!?そこは尻尾の付け根だよぉ……!!」
(ああ、アーシアがいてくれればな……)


 俺はアーシアがいてくれることの重要さを思い知りながら無言で作業を進めるのだった。


「ケ、ケツが……ケツが割れちまった……」
「アザゼル先生、お尻は最初から割れていますよ。お薬置いておきますね」
「ゆ、祐斗……薬をケツに塗ってくれ……」
「嫌です」
「ならギャスパー……」
「嫌ですぅ」
「俺の扱い雑過ぎじゃねえか……?」


 後端の方でそんなやり取りが聞こえたような気がした。



―――――――――

――――――

―――


side:小猫


 それから私達はイッセー先輩達と合流すべくグルメピラミッドの内部を進んでいました。今のところ猛獣や罠には引っかからずに進めています。


「あっ、また壁画がありますね」
「今度は大きな猛獣が泣いている絵ですね」


 私達はまた壁画を見つけました、その内容は大きな猛獣が泣いている絵でした。それ以外にも猛獣を捕獲してるニトロや人間の絵もたくさんあります。


「これって最初に出会ったあの獅子みたいな猛獣でしょうか?こっちはエスカルアゴ……他にもチラッと見かけた猛獣に似た絵がありますね」
「舌を切ったり蛇みたいな髪を順番に切ってる……これはダンゴムシみたいな猛獣の殻を剥いでる絵でしょうか?なんだか調理してる絵のように見えますね」


 壁画の絵がまるで猛獣を下ごしらえして調理しているようにも見えました、もしかしてここに生息している猛獣はこのやり方で捕獲すると美味しくなるのでしょうか?


「小猫ちゃん、あそこに何かありますよ」
「本でしょうか?」


 部屋の奥に何かが置かれていたので近づいてみるとそれは古ぼけた本でした。


「何が書いてあるんでしょうか?」


 内容が気になった私は本を手に取って中身を読んでみます。


「これは……料理のレシピでしょうか?」


 本の中には色々な食材の調理方法や捕獲方法などが書かれていました、殆どが私の知らない食材や技術、あと単語も多くて意味までは分からないのですがこの本が凄く価値のあるモノだと私は本能的に察しました。


「何が書いてあるか分からないですね……」
「えっ、アーシアさんは分からないんですか?」
「私には見た事もない文字にしか見えないです。小猫ちゃんは読めるんですか?」


 アーシアさんはこの本の文字が読めないらしいです、それを知った私は悪魔の特殊能力を思い出しました。


「悪魔は自分が知らない言葉や文字も自動的に翻訳して理解できるようになる能力があるんです、それのお蔭でこの本を読めるのだと思います」
「なるほど、そんな能力があるんですね」


 私は悪魔の持つ能力をアーシアさんに説明しました。


「それでその本には一体何が書いてあるんですか?」
「理解は出来ないんですけど色んな食材の調理方法や捕獲方法などが載ってますね、レシピ本だと思います……!」


 その時でした、背後から何か弾かれる音が聞こえたんです。私が振り返るとそこには……


「ニ、ニトロ……!?」


 そこにいたのはまるでミイラのようにやせ細ったニトロでした。


(まったく気が付かなかった……!)


 ちょっと油断していたのもありましたが気配も一切感じなかった、でもどうして無事なのでしょうか?おそらく攻撃されたはずですが……


「(とにかくアーシアさんを下げないと……)アーシアさん、後ろに下がってください!」
「は、はい!」


 私はアーシアさんを後ろに下げてニトロと対峙します、こうしてニトロと戦うのは初めてですがこのやせ細った肉体からは想像もできない恐怖が私を押しつぶそうとします。


「先手必勝です!」


 焦った私は仙術で成長してニトロに攻撃を仕掛けます、その一撃はニトロの腹部に直撃しましたが……


「うそっ……!」


 その細い肉体は傷一つありませんでした。こんな細いのにまるで山を殴ったような質量……!


「……!」


 ニトロは音もなく私に噛みつこうとしました、あまりの速さに反応が遅れた私は防御もままならずにその牙を受けて……!


 しかし牙が肉体に刺さることはありませんでした、まるで鎧に弾かれたかのようにニトロの攻撃を防いでくれたんです。


「いったい何が起きたんですか……?」


 その時私は自分の体に何かが纏っている事に気が付きました。


「これは音の鎧……?」


 私は体に纏う音の鎧を見てこれはゼブラさんがしてくれたのだと気が付きました。


「ゼブラさん、ありがとうございます!」


 私はゼブラさんに感謝しながらニトロの方に視線を向けます。ニトロは何かを咀嚼するような動作をしていましたが自分が何も食べていないことを理解すると再び牙をむいて襲い掛かってきました。


「ベルリンの赤い雨!」


 私はニトロの攻撃をわざと受けて音の鎧で弾き体勢を崩させました、その隙に鉄を切り裂く手刀でニトロを攻撃します。しかし体を切断するには至りませんでした。


「フライング・レッグ・ラリアート!」


 そのまま顎に目掛けて飛び蹴りを放ちますがニトロはそれをかわしてまた噛みついてきました。しかも今度は弾かれつつも素早く首を動かして連続して噛みついてきたんです。


「この……!カーフ・ブランディング!!」


 私は強引にニトロの首を掴んで背後に回り込みます、そして片膝をニトロの頭に当ててそのまま地面に押し付けるように叩きつけました。


「はぁ……はぁ……」


 私は直にニトロから離れます、この程度で倒せるとは思っていませんが……


「……」
「流石に答えますね、渾身の一撃を浴びせて無言で平然と立ち上がられるのを見ると……」


 ニトロは何事もなかったように立ち上がりました。そして……


「きゃあっ!?」
「えっ!?」


 背後から悲鳴が聞こえたので振り返るとなんとニトロがアーシアさんを襲っていたのです、そして目の前にいたニトロは影のように消えてしまいました。


「残像!?いつのまに……!」


 私は自分の目を欺かれたことを驚きながらもアーシアさんを助けに向かいました。


「アーシアさんから離れろ!」


 私が殴りかかるとニトロは大きく跳躍して回避しました。


「アーシアさん、大丈夫ですか!?」
「はい、音の鎧が守ってくれました」


 よく見るとアーシアさんの体にも音の鎧が纏われていました、ゼブラさんは私だけでなくアーシアさんにも音の鎧を付けてくれていたんですね。


(ゼブラさんが音の鎧を付けてくれていなかったらアーシアさんは殺されていた……ニトロがこんなにも恐ろしい奴だったなんて……)


 私は目の前にいるミイラのニトロに心底恐怖しました。こんな状態でこの強さならもし本来の肉体を取り戻したら……


(この音の鎧、攻撃を受けるにつれて薄くなっていってる……このまま攻撃を受け続けたら……)


 さっきは音の鎧のお蔭で戦いになっていましたがこの鎧が無くなったらもうまともには戦えないでしょう。逃げようにも背を向けたらあの攻撃をもろに受けてしまう、どうしたら……


「ゲガァァァッ!」


 そこに一つ目のプテラノドンが陸上で歩けるようになったような猛獣が部屋に入ってきました。ニトロは猛獣を認識した瞬間猛獣の喉元に噛みつきます。


「今だ!」


 私はその隙に本を回収しつつアーシアさんを連れて逃げだしました。


(ニトロが襲ってきたのは栄養を得るため?だとしたら今はまだ逃げられるかもしれない!)


 ニトロの目的が栄養補給なら距離を取れば他の猛獣に目がいってしばらくは襲ってこないはずです、その間にイッセー先輩と合流してニトロの事を話さないと!


 しかし私達はまだ知りませんでした、このニトロとの出会いはほんの序章に過ぎず更なる絶望が迫ってきていたことを……

  
 

 
後書き
 イッセーだ、ゼブラ兄の声はまだ戻らねぇし小猫ちゃん達も未だ見つからない。嫌な予感がするから早く合流したいんだが……こういう時自分の力不足が嫌になるな。


 だが嘆いても何も始まらない、俺に出来るのは猛獣を倒してゼブラ兄の食わせて一刻も早く声を回復してもらう事だ。


 どうやらそろそろこのグルメピラミッドの主も出てきそうだな、今までで一番の強敵になりそうだ。


 次回第116話『遂に合流、イッセーと小猫!メロウコーラの鍵はサラマンダースフィンクスに在り!』で会おうな。


 次回も美味しくいただきます! 
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