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第八十八話 通天閣その三

「それでね」
「秀吉さんのお城じゃないよ」
「後で再建したのよね」
「幕府がね」
 一度摂津藩を置いてその藩に大坂の事態の再建をさせている、そして大坂城の再建もさせたのである。
「そうしたんだよ」
「それで天守閣も建てられたのよね」
「そうだよ、二代目のね」
「それが落雷で焼けて」
「三代目なのよね、今の天守閣」
「昭和に建てられたんだよ」
 昭和六年のことである。
「そうなんだよ」
「そうよね、私としてはね」
 理虹は自分の考えを話した。
「秀吉さんの頃からのね」
「天守閣であって欲しかったよね」
「折角だからね」
「そう言われると僕もだけれど」
 ここで古田はこう言った。
「そもそも四百年以上の建物がそのまま残るとかね」
「まずないわね」
「奈良の大仏さんだって三代目だよ」 
 奈良県の象徴の一つとなっているこの巨大な仏像もというのだ。
「あれだってね」
「二回焼かれてね」
「平清盛さんと松永弾正さんにね」
「そうよね」
「それがこの人達の一代の悪行になってるんだよね」
「よく言われるわね」
「この人達実際は然程悪人じゃなかったみたいだけれどね」 
 どうも風聞で特に平清盛は平家物語で誇張されているらしい、平家物語はあくまで『物語』であることを考慮しなくてはいけないのだ。
「歴史にあるね」
「そうよね」
「それで大阪城の天守閣もね」
 これもというのだ。
「三代目でもね」
「いいのね」
「戦争がなくても災害があるじゃない」
「二代目は落雷で焼けたしね」
「日本にいたら災害は絶対にあるから」
 これからは避けられないというのだ。
「落雷どころかね」
「地震も台風もあるわね」
 理虹はこうした災害の話をした。
「洪水も津波も火事もあるし」
「火山も噴火するよね」
「大雪も大雨もあって」
「日本にない災害ってそうはないから」
「戦争より災害が多いくになのよね」 
 日本という国はというのだ。
「それ学校でも言われるわ」
「他の国から来た子達にね」
「日本に行くのが怖かったとかね」
「そうそう、内戦があった国の子も言うんだよね」
「内戦の方が怖いと思うけれどね」
「アフリカとかバルカン半島とかね」
 バルカン半島の内戦は極めて悲惨なものだった、ユーゴスラビアであった国が完全に分裂し血生臭い殺し合いが続いたのだ。
「そうしたところから来て」
「その前に地震や台風がしょっちゅう来るから怖いって」
「あと火山が噴火するとか」
「災害が物凄く多いってね、しかしね」
 古田は考える顔で言った。
「戦争よりね」
「災害の方がいいわよね」
「僕そう思うけれどね」
「私もよ」
 理虹もそれはと応えた。 
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