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イベリス

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第百九話 生と死その五

「あるから」
「そうした時も」
「そうした時は絶対に終わるし」
「諦めないことですね」
「戦争に負けてもね」
 今度はこう言った。
「国があったら復興してね」
「また繁栄出来ますね」
「実際に日本もね」
 自分達の国もというのだ、副部長も日本人なのだ。
「復興したでしょ」
「それで今がありますね」
「あの戦争でボロボロになったけれどね」
「それでもでしたね」
「復興したでしょ、東京なんかね」
 自分達が暮らしているこの街はというのだ。
「何度焼け野原や瓦礫の山になったか」
「火事に地震に空襲に」
「台風もあったしね」
「何度もボロボロになってますね」
「けれど生き残ってきて」 
 そうしてというのだ。
「その都度復興してきたでしょ」
「そうでしたね」
「街として生きていたから」
 だからだというのだ。
「復興してきたのよ」
「そういうことですね」
「だからね」
「まずはですね」
「生きることよ」
「それが第一ですね」
「そうよ」
 こう言うのだった。
「私もそう思うわ」
「生きてこそですね」
「何か出来るの、楽しいこともあって」 
 そしてというのだ。
「人間としてよくなることもね」
「出来ますね」
「そうよ」
「全部生きてこそですね」
「漫画家でも自殺する人いるけれどね」
「そうですか」
「そうよ、キャプテンとかプレイボールの作者さんはね」
 ちばあきおという、ちばてつやの実の弟であった。
「自殺してるのよ」
「そうなんですか」
「連載中の作品もあったけれど」
 その時ボクシング漫画を描いていた、実はそれ以前からアルコール依存症になってしまっていたという。
「その作品終わらせないでね」
「それは残念ですね」
「結構絶筆の作品もあるけれど」
「自殺してが一番残念ですよね」
「そうでなくても絶筆はね」
 そうした作品はというのだ。
「残念だしね」
「作者さんがお亡くなりになって未完は」
「それも作者さんが若くしてだと」
「尚更ですよね」
「やっぱりその時描いている作品を完結させて」
 そうしてというのだ。
「作者さんご自身が一番思うことでしょうね」
「それからお亡くなりになったら悔いないでしょうし」
「ええ、完結させられることも」
「生きてこそですね」
「本当に命があれば」
 それでというのだ。
「何かが出来るわ」
「面白い作品も詠めて」
「そしてね」
「完結もさせられますね」
「そういうことよ」
「そうですよね」
「兎に角生きてこそよ」 
 副部長は強い声でだった、咲に語った。 
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