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浅いプールに飛び込むな

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第二章

「飛び込む前に浅いか深いか見て」
「浅いとなのね」
「飛び込まないでそのまま入るんだ」 
 また妙子に言った。
「お水があってもね」
「浅いと駄目なのね」
「底が浅い川に石を投げ込んだら跳ね返るよ」
 今度は例えを用いた。
「それだけの衝撃が身体に来るから」
「底が浅いと飛び込まない」
「怪我をしない為にね」
 まさにその為にというのだ。
「くれぐれもだよ」
「怪我をしないことね」
「最悪一生影響が残るから。いいね」
 二人の娘に優しいが確かな声で告げた。
「飛び込むなら深いところでだよ」
「前以て見て」
「そうして」
「そうだよ」
 こう言ってだった。
 父として娘達に迂闊な飛び込みはさせなかった、そのうえで一家でプールでの休日を心から楽しんだ。
 淳史は家に帰ると夕食と風呂そして妻の身体を楽しんだ、だが。
 妻はベッドの中でだ、夫に言った。
「あなたプールに入る時とか日焼け止めクリーム欠かさないわね」
「そこも慎重にだよ」
 見事な身体を今は白の下着で覆っているだけの妻に答えた。
「していないとね」
「こうした時日焼けしてたら」
「そう、痛いからね」
「日焼けしたお肌が」
「いや、結婚前に一緒に海に行って」
 夫は妻に苦笑いで答えた。彼はもう寝間着を着ている。
「それでね」
「日焼けしてね」
「夜凄く痛かったから」
「さっきみたいにして」
「だからね」
「その時にわかったわね」
「慎重にいかないと」
 さもないと、というのだ。
「飛び込みだけでなくてね」
「お肌のことも」
「勿論準備体操も忘れないで」
 このこともというのだ。
「お水で遊ぶ時はね」
「色々と慎重にいかないと」
「痛い目を見るよ」
「あの時の日焼けがいい教訓になったのね」
「それであの娘達にも言ってるけれど」
 弓香と妙子にもというのだ。
「どうして教訓になったかはね」
「あの娘達には言えないわね」
「こうしたことからだからね」
 妻に夜一緒に寝ているベッドの中で言うのだった、そうして夫婦で寝た。かつて得た教訓を頭の中で反芻しつつそうした。


浅いプールに飛び込むな   完


                   2023・7・22 
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