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イベリス

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第百七話 秋がはじまりその十一

「そっちで散財していて」
「お金なかったんですね」
「金銭感覚もなくて」
 モーツァルトはというのだ。
「それでお金なかっただけで」
「報酬は凄かったんですよね」
「そうよ、それでゴッホはね」
 彼はというと。
「評価されだしたところで」
「自殺したんですね」
「あと少しね」
 それこそというのだ。
「生きていたらね」
「凄い評価されて」
「絵もね」
「売れる様になったんですね」
「まあおかしくなっての自殺だったから」
 てんかん説等その原因は色々ある。
「あそこで自殺しなくても」
「近いうちにですね」
「したかも知れないけれどね」 
 そうして人生を終わらせていたというのだ。
「けれどあと少しでね」
「評価が高まって確かになって」
「凄い売れっ子になっていたかもね」
「そう思うと残念ですね」
「けれどこの人も努力をね」
 これをというのだ。
「そうは思わなかったみたいよ」
「ただひたすら絵の勉強をして描く」
「そうした人だったみたいよ」
「そうなんですね」
「本当にこうした人が一番強いのよ」
 努力を努力と思わない人がというのだ。
「何といってもね」
「そうなんですね」
「だからね」
 それでとだ、先輩は咲に話した。
「咲っちも努力して」
「それで最高はですね」
「努力を努力と思わない」
「そうなることですね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「本当にね、まあそんなの出来たら」
「天才ですね」
「偉そうに言う私も出来てないしね」
 先輩はこのことを苦笑いになって述べた。
「それは」
「先輩もですか」
「ええ、とてもね」
 そうだというのだ。
「天才じゃないから、モーツァルトにもゴッホにもね」
「なれないですか」
「目指したいけれど」
 それでもというのだ。
「まあ無理でしょうね」
「そうですか」
「ええ。ただ目指すことはいいことよね」
 先輩は自分で言った。
「そうよね」
「そうですね」94
 咲は先輩のその言葉に頷いて言葉を返した。
「それは」
「目指せばね」
「凄い人を」
「大谷翔平さんでもモーツァルトでもゴッホでもね」
「それだけ努力するから」
「自分がよくなることにはね」
 これにはというのだ。 
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