ハッピークローバー
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第八十六話 海遊館に二人でその四
「そうした人の言うことってね」
「聞いてもいいことないわね」
「自分が嫌でもね」
「まあ除夜の鐘が嫌って相当よね」
「公園で遊ぶ声が五月蠅いっていうのもね」
「それもよね」
「真夜中に不良が暴れているなら夜はね」
「閉鎖ね」
「警察に言ってもいいし」
その場合もというのだ。
「いいけれど」
「それでもよね」
「一人が言って皆で遊ぶ場所がなくなったり」
「最悪言い掛かりだったりするし」
「一人のおかしな意見が通るとか」
「間違ってるわね」
「そんなの民主主義じゃないよ」
伊東はこうも言い切った。
「クレーマー至上主義だよ」
「クレーマー天下ね」
「こんなのごく一部の人達が贅沢している社会とね」
「一緒よね」
「そうだよ、自分が気に入らないからって文句言って」
「それが何でも通ったら」
「世の中滅茶苦茶になるよ」
伊東は真剣な顔で言った。
「実際に公園とかなくなって」
「除夜の鐘がなくなって」
「一人が手を挙げたら勝ち」
それがどんな暴論でもというのだ。
「そんなことは許したらいけないね」
「本当にそうね」
「しかしそう言う人は大抵身体壊すけれど」
「嫌なことばかり考えて言ってるから」
「それが毒になってね」
病は気からという言葉の通りにというのだ。
「そうなるけれど」
「自業自得ね」
「そうだよ、まあ身体悪くしても文句ばかりでね」
その性根は変わらずというのだ。
「周りに迷惑をかけ続けるだろうけれど」
「そうした人が少しでも減ればいいわね」
「そうだね、世の為人の為にね」
是非にとだ、伊東は留奈の言葉に頷いた。そうして海遊館の中の様々な生きもの達を観ていきお昼にだった。
留奈が持って来た弁当を食べたが伊東は食べて言った。
「美味しいね」
「そう?お母さんが昨日の夜作ってね」
留奈は自分も食べつつ笑顔で応えた。
「私が入れたけれど」
「お握りもかな」
「お握りは私が作ったの」
その俵型のものはというのだ、それぞれの弁当箱に六つずつ小さいそれが入っていて海苔に覆われている。
「お塩付けてね」
「そっちも美味しいよ、お握りが美味しいと」
伊東はにこりとして言った。
「その分いいよ」
「そうなの」
「うん、これはいいね」
「喜んでくれて何よりよ、私お握り好きなのよ」
留奈は自分も食べつつ話した。
「だから時間があったらね」
「お弁当に入れてるんだ」
「自分で作ってね」
「そうなんだ」
「いや、普通のご飯より」
それを弁当箱に入れるよりもというのだ。
「お握りはね」
「好きで」
「入れると嬉しくなるのよ」
「そうなんだね」
「それでね」
留奈はさらに話した。
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