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ハッピークローバー

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第八十五話 兄に言われてその十一

「まだね」
「行ったことないんだ」
「そうなの」
「僕この前従兄に連れて行ってもらったんだ」
 伊東は何故その店を知っているのかを話した。
「それでなんだ」
「あそこのオムライス食べたのね」
「ハンバーグとね」
「ハンバーグもなの」
「あそこ何でもハンバーグが有名で」
 それでというのだ。
「それで従兄もね」
「ハンバーグ注文したの」
「僕も注文して」
「伊東君オムライスも注文したのね」
「それで食べたんだ」
「そうだったのね」
「従兄はナポリタンを注文して」 
 その店に連れて行った彼はというのだ。
「それでね」
「食べたのね」
「そうなんだ」
「ナポリタンね」
「そちらも美味しいそうだから」
「そうなのね」
「それでハンバーグ美味しかったけれど」 
 それだけでなくというのだ。
「オムライスもね」
「美味しくて」
「それでなんだ」
「私も誘ってくれたのね」
「そうだったんだ」
「じゃあ海遊館の帰りにね」
 留奈はにこりとして応えた。
「一緒にね」
「重亭でね」
「食べましょう」
「そうしようね」
「ええ、あと昨日阪神勝ったけれど」 
 留奈はここで野球の話をした。
「これで六連勝ね」
「今年もいけそうだね、阪神」
「優勝ね」
「それで巨人はね」 
 伊東はその名を口にしただけでおぞましい瘴気が宿るとさえ言われている邪悪に満ちたチームの話をした。
「今年二度目の十三連敗だね」
「相変わらず弱いわね」
「今年も勝率一割台で」
「負けまくってるわね」
「あそこはどうしようもないね」
 こうも言うのだった。
「観客席いつもガラガラだし」
「東京ドームでもね」
「一塁側巨人ファンいなくて」
 それでというのだ。
「そのうえでね」
「他のチームのファンばかりなのよね」
「巨人の負ける姿観る為にね」
「巨人負けるの観ると元気出るからね」
「そうそう、痛快なのよね」
 留奈は笑って語った。
「巨人が負けると」
「あんなに負ける姿が絵になるチームないね」
「そうよね、無様に負ける姿がね」
 それがというのだ。
「最高に似合うのがね」
「巨人だね」
「恰好悪くて情けなくて恥ずかしくて」
「みっともない姿こそがね」
「巨人って似合うのよね」
「僕もそう思うよ」
 心からとだ、伊東は答えた。 
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