星河の覇皇
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第八十四部第三章 円明園の会議その六
「もうね」
「変わりないですね」
「そこはエウロパとは違いますね」
「エウロパは階級があり」
「貴族は必ず高位にいますね」
「例え騎士や紳士でも貴族ならいきなり課長からはじまるわ」
官公庁での役職ではそうなるというのだ。
「一般企業でも管理職、大学でも准教授からはじまるわ」
「いきなり違いますね」
「やはり階級社会ということですね」
「普通の学校でも学年副主任からはじまるといいますし」
「軍隊では士官から」
「少なくとも一般からはじまることはないですね」
「それが階級社会ということよ」
エウロパのそれだというのだ。
「まさにね」
「階級故の歪みですね」
「あってはならないものを入れています」
「あの様な社会こそ打倒すべきであり」
「連合では許してはならないですね」
「断じてね、そして政治の話に戻すけれど」
こう前置きして再び話すのだった。
「政治家は国益を求め手に入れるものであり」
「首相もですね」
「それは同じですね」
「やはり」
「それで今こちらにおられますね」
「そうよ、日本の国益を得て」
そしてというのだ。
「日本という国家にも日本市民にもですね」
「手に入れた国益を分配する」
「それも公平に」
「そうされますね」
「必ずね、ただその求める国益はね」
その国益自体の話もするのだった。
「近視眼的なものであってはいけないわ」
「左様ですね」
「広く遠くですね」
「求め手に入れるもので」
「目先のものであってはいけないですね」
「目先の十の利益を得て先の百の国益を失う」
伊東は冷めた口調で述べた。
「それはもうね」
「失格ですね」
「政治家として」
「国益を最初から求めない政治家は論外ですが」
中にはそうした政治家も存在する、私利私欲だけを求める政治家というものも何時でも何処でも存在しているのだ。
「しかしです」
「それでもですね」
「国益を求めるにしても」
「それでもですね」
「それが目先のものであってはならないですね」
「目の前の鰯を獲ってその後の鯨を逃す」
伊東はこうも言った。
「それはかなりの損ね」
「左様ですね」
「鰯は一人の一食のおかず程度です」
「それ位でしかないです」
「しかし鯨は違います」
「より大きいです」
「それこそ何百人もの食事になって」
そしてというのだ。
「骨も髭も使えるわね」
「鯨はその全てが使えます」
「まさに役立たないものはありません」
「鯨油も燃料になります」
「まさに捨てるところがありません」
「その鯨を逃す位なら」
それこそというのだ。
「鰯はね」
「逃してもいいですね」
「そうしてもですね」
「それでもいいですね」
「そうよ、その鰯をあえて見逃して」
目先のそれを放置してというのだ。
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