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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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18話 Hate【愛】とLogic【非情】

 
前書き
今回は神話パート&前作の登場人物(本編に登場予定)の話になっております。



 

 
アイドル———誰もが目を奪われていく完璧な偶像。

本来それは女性の神格を持つ者にこそふさわしい称号だ。なぜなら、アイドルのオリジン……それは巫女———人という「実像のように思わせる」形をした偶像であるから、人は魅了され信仰するのだ。



神世の時代。

地上における、記念すべきアイドル第一号は、ユエルの2番目の妻にして妹 ナンナエルだった。


彼女の言霊は圧倒的だった。それこそアユムエルが生み出した怪物たちすら、彼女の言葉と踊りに心身ともに癒された。

ユエルの創造したムーと、アユムエルの創造したアトランティスの民が、今、小競り合いで済んでいるのはひとえに、彼女のおかげに他ならなかった。





だが————






彼女は何者かに惨殺されてしまった。


ハイパーロード2人の娘であるゆえに、不死を得ている彼女だったが、遺体をバラバラにされた上で封印されたことで、その魂は地球から高次元へと至る中間地点 冥界に閉じ込められ、彷徨うことになった。

ユエルは運命に決められた妻のこのような最後に、49日間泣き叫んだ。


この凄惨な事件にムーの人々は怒り狂い、アトランティスの犯行と決めつけた。アトランティスもまた、癒す者がいなくなったことで怒りが爆発する。


もう戦争を止める者は誰もいなかった。



こうして神々の意に反して、第一次古代戦争は起こってしまう。


超魔術のムーと超科学のアトランティス———戦況は拮抗していたが、天界の天使たちがムー側に加勢したことでムー大陸が徐々に優勢に進んでいったま。



ところで……この戦争に兄のミハエルとともに参加していた最高位天使たる叡智のエル サタエル。

ある時、彼の双子の妹である精神のエル リエルに問われた。


「ねぇ……サーくん?」
「あ?」
「あなたなんでしょ———ナナお姉ちゃんをあんな風にしたの。」
「言いがかりはよせ。何を証拠にそんなこと。」


父から受け継いだ冷酷さを伴った、青と金の瞳で彼女を睨む。しかしリエルは引き下がらない。その『赤と青の瞳』が輝く。


『言いがかりじゃない———あなたの心と私の心は繋がっている。あなたの嘘はお見通しなんだから!」
「……」
「ねぇ!なんでそんな残酷なことやったの!?!?」
「ふっ……くははははははっ!!」


鼻で笑った刹那、邪悪な高笑いがその場を支配する。まるで人が変わってしまったかのようなその態度にリエルは怯む。


「あの女は邪魔だったんだよ……あのアイドルがいる限り戦争は起こらない。ユーとアユムの戦争は起こってもらわないと困るのさ。」
「何言ってるの……そのためなら人間がどうなってもいいわけ!?」


邪悪なマッチポンプ……しかしサタエルは、リエルの糾弾を子供の戯言のように鼻で笑って一蹴する。


「アユム姉さんを完全に抹消するためさ———アイツは神に逆らった堕天使……そんな奴をハイパーロード様のせめてもの慈悲が助けた。しかし俺は知っている…あの女怪が世界のガンになっていること。神々の愛は我々には無用なんだ。あの女には何としても、神の名の下に討伐されてもらうのさ。」
「そんな……そんなことのために——酷すぎるよ!!」
「全ては神が創りし均衡のため———そのための天使の犠牲なんてどうでもいい事だ。」
「あなたって人は…!」


天使———とは名ばかり。もはやその性格は悪魔……いや、それ以上だろう。

リエルは彼にビンタしようとした———その瞬間、リエルの胸にドクンという音ともに、苦しみがもたらされる。


「/////!!!——何を……!?」
「俺の心とお前の心は繋がっている……そうだったか。なら俺の意思によって、お前の心も多少動かせるわけだ。」
「!!!」
「リエル。お前には俺の孕み袋になってもらう———子ができれば、そいつらもこっちの戦力になるからな。」
「そ、そんな……誰があなたの子供なんか……!」
「お前に拒否権はない…」
「くっ———♡」



リエルはサタエルには逆らえない。彼女は……心では彼を深く愛しているのだから。


この2人の子たちもまた、壮絶な運命に導かれる子どもとなる。

だが彼は1つだけ考慮に入れていなかった———それはリエルも、またあの最高神たるハイパーロードAの娘であり、アユムエルの妹である……つまりは妄執の愛を持っているということだ。

リエルの心は一生…いや永遠に、彼に執着することになるだろう———子という鎹を通じて。



—————※—————



リエルは不本意ながら、サタエルとの間に3つ子の娘を孕んだ。

彼女ら3人を現界を現界させようとしたサタエルは、兄のユエルの息子たるナユタへと3人を娶せようと画策し、そうなるようにその智慧の力をもって、3人の魂に、ナユタとその身の回りへの信心を刷り込ませた。

リエルへの仕打ちと娘を道具のように扱う傍若さに、激昂したハイパーロード/Aqoursはサタエルの魂を抹消して造り直そうとした———が、それを夫たるハイパーロード/ムテキに阻止された。


しかし娘への洗脳まがいの行為は、神々の怒りを買ったことで処分されることになる。


「天界からの一時追放」と「妹妻 リエルとの接触禁止」


これが神によって下された罰———彼は堕天したわけでもなく、娘たちは予定通り地上に送られる……彼の計画通り。


そのジャッジメントに納得がいかないリエルは、世界を維持管理する神 オーヴァーロード/ユオスに不満を訴える。


「何であの人の罪をあの程度で済ますのですか!?しかも私の子供達まで連れていかれて……」
『……その言葉は本当に心からの言葉なのですか?』
「?」
『本来、母上の怒りを買ったサタエルは魂ごと抹消される予定でした。しかしそれを父上はやめさせた……その理由はリエル、君の心にはサタエルへの愛があるからです。』
「それは……」
『でなければ、人の自由を奪うことを嫌う父上がサタエルを助けるわけがないのですよ。君の望む罰とは「サタエルをこの天に監禁しておく」ことだろう?』
「………」
『それは残念ながらできません———それに。』


神 ユオスは両隣に侍っているセフィオス・グリフォスの双子にアイコンタクトで事情を話すように促すと、2人は話し始める。


「おねえちゃんのおなかの子はキケン。」
「世界のことわり、みだす。」
「……何言ってるの?」
『君とサタエルの子たちは世界のバランスの崩壊を加速させる。仮にこの先崩壊が止まっても、また次の崩壊を呼び起こす———その子たちは産むべきではありません。』
「はぁ…?」


リエルはその美しい青と赤のオッドアイで神々を睨む。その目はまるで、自らの母たるハイパーロード/Aqoursが夫を睨むような、憎しみと愛が絡み合ったようなモノ。


「この子はあの人の子……それをこのお腹に留めておけというのですか?」
『ええ。』
「ふふふ……あぁ、残酷。これが母上様と父上様が作り上げた世界ですか————そんなの絶対認めませんから。」


現存する世界全てを管理する神 ユオスとセフィオス・グリフォスは、リエルに1年の360日のどの日にもその子を産むことができない呪詛をかけた。

リエルは、闇に塗られた瞳で神々を…この世界の無情を憎んだ。

そこで不憫に思った神 ユオスは、最愛のサタエルとの接触を1日だけ許すことにした。



1日———人間界における1日で、リエルは地上に赴く。

そして神にかけられた呪いについて相談した。彼の知恵がこの呪いを解くと信じてのこと。


「なるほど……これが神の試練か。」
「?」
「兄さんの力が必要だな———」


サタエルは、時と月のエルであるミハエルにギャンブルを提案———コイントスで勝った方が、時の支配権と叡智の力を得る。


このコイントス勝負———制したのは


「俺の勝ちだ。」
「バカな……なぜコインが立つ——!?」


サタエルだった。

いや、これも必然———このコインはそもそもがイカサマコイン。絶対に表裏が決められない、「必ず立つコイン」によってサタエルは兄から時の支配権の半分を譲り受ける。

この力で1年の360日に5日増やしたことで、リエルは出産できるようになった。




リエルが産んだ、不死の三姉妹。

長女 カナーダ、次女 リーナー、三女 アイ。

彼女らは永遠に老いない妖精……三女のアイを除いては。ただし彼女には、皆を照らす快活さといった姉2人とは異なる分野の美貌が備わっていた。


しかしリエルは1年しか会えぬ彼女らを心配し、自ら作った泥人形に精神を吹き込んで生命とし、彼女らの保護を頼んだ。

これをハルージャと名付けた。



—————※—————



現代……温暖湿潤なリゾート地の一角にある、オーシャンビューが楽しめる豪邸にて。

大和撫子のようでいながら、その人間離れを体現するかのような、白がかった玉虫色の長髪の女性がその双子たちに分厚い絵本——先ほど語った神話の描かれたそれを読み聞かせた。


『どうだった?あなたたち?』
「「続き気になるー」」
『その続きはまた後でね♡』
「「えー」」


と、分厚い絵本を閉じてしまうのは、母なる最高神 ハイパーロード/Aqours。

その母の対応に落胆の表情を見せる神が創造せし双子 セフィオス・グリフォス。


『急ぐ必要はありませんわ。絵本は順を追って読むモノ……そうしないと、この世で1番美しいモノが読み取れませんから♪』
「でも父上さまが……」
「答えはしってこそおもしろいって……」
『———はぁ?』


驚き呆れたAqours様。突如として誰かを呼ぶように指パッチンすると……


「「はっ……」」
『「こっち」ではお久しぶりですね———アトエル、ディエル……』
「「勿体無いお言葉。」」


現れたのは最高位天使———空間の天使 アトエルと魂の天使 ディエル……ハイパーロードに仕える「原初の天使」

「エルロード」と呼ばれる神の子たちとは異なる、最高位天使だ。

【早速だけどこの子たち……まさか、「あの人」が何か吹き込んでるんじゃないでしょうね?』
「はぁ———特に、そんなことは……」


お茶を濁そうとするディエルだったが、それは悪手——闇に染まったエメラルドの瞳孔がクワッと開く。


『おかしいですわ。この双子は私達の子どもである世界樹、その「意思が具現化した」存在……物事を教えぬ限り、学習することはあり得ない。違いますか?』
「はっ——返す言葉も…ございません……」


寡黙な性格のアトエルが、真摯とも適当とも取れる陳謝をする。

当然そんなことでAqours様の機嫌は良くならない。


『困りましたわ……あぁ困ったわ。このままでは世界はあの人の思惑通り、破壊の道を進んでしまう———そうならないように、友である2人から注意してよ!!』
「そう言われましても、M様は自由を至高とする御方…進言しても相手にはしてもらえないでしょう。」
『—————ふーん。』


琥珀色に変わったAqours様はジト目で、2人の赤と青の天使を睨むAqours様。


『私に逆らうんだ……ねぇ、2人とも。そんなに私に食べられたいんですか…?』
「「それは勘弁してください。」」


気味の悪い笑顔と共に舌なめずりするAqours様————前にも言ったが、彼女の「食べる」とは隠喩でも何でもない。

そのままの意——彼女は大蛇のように呑み込み、腹の中で無限の安心感と快楽のままにその存在を溶かしてゆく……

その怖さは側に侍る者たちにしか理解し得ないだろう。


『嫌なら私のお願い聞きなさいよ———代わりに……一回だけ———』
「「……!!」」


Aqours様が代わりに提示した条件……アトエルとディエルはすぐさまその場に跪き、その話に乗るという意を示す。


『約束は絶対よ?もしあのサイコパス男みたいに、私を裏切ったら———わかってるわね?』
「「はっ!!」」
『いい返事♡』


〜〜〜〜〜



「まさかこんな日が来るとは……あぁ、あの頃を思い出す。」


飛翔する赤と青の翼たち。

ディエルの呟きに、赤翼のアトエルは気怠そうなジト目で彼に話しかける。


「だけど…いいのか…?ハイパーロード/Aqours様の約束、果たせるとは思えん———」
「それはそうだな……全く、人間に転生しても神になってもめんどくさいカップルだ。」
「おいやめろ。Aqours様に知られたら今度こそ本気で殺されるぞ。」
「その時はハイパーロード/ムテキ……いや、『伊口才』に任せよう。」
「あの御方の気まぐれ【Logic】が、そっちに向いてくれればいいが。」


赤き天使 アトエル……我々の知る名では——仮面ライダークウガ スーパーライジングアルティメットフォーム。

青き天使 ディエル……その名は——仮面ライダーシンスペクター。


空間の天使と魂の天使———宇宙の空間を管理し、彷徨える魂を断罪する。

最高神たるハイパーロードの最側近。


2人は———異形の姿【仮面ライダー】へと変身する。天高く登った彼らはエネルギーを貯め始める……


「原初、その全てが空虚に始まる。梵たる法則は究極にして不変の法。」


キューブ状の何かを創造するアトエル。その詩唱にディエルは続く。


「母なる法こそ世界の原理、人の魂もまたこれに還る……それゆえに魂は不滅なり!!」


鎌の形をした武器が青いエネルギーをチャージしてゆく……そして。


「「合技 梵我一如!!」」


合技と称したその技は、アトエルの放った巨大なキューブに青いピラミッドを入り込ませた———そしてそのピラミッド入りの立方体はバラバラと分裂して地上へと迫っていく。


〜〜〜〜〜



「まさか……ふっ、アイツらも降りてきたか———」


地上で原初の天使たちが放った合技。それを不敵な笑みで迎えるエルシャム王 小原魁———仮面ライダーダークキバ。


「子供たちは眠っているんだ。なら大人になった俺たちが、遊んでも申し分ない———そういう事だな?」


【ウェイクアップ・ツー!】


無数の巨大な紋章から顕現するは、とんでもない大きさのザンバットソード……この剣が落下するだけでも一都市が全滅する勢いのブツ。

それが数百、数千……ひょっとすれば数百万や億すらあるかもしれない。


「さぁ……始めようぜ。」



〜〜〜〜〜



「この神の才能に楯突くのは……たとえ君たちでも許さんぞぉぉ!!!」


変人のように天に吠えるは銀髪の男 伊口イフト……またの名を仮面ライダーゲンム。

取り出したのは白いマキシマムガシャット、そしてムテキの形状をした特殊なガシャット。

【マキシマムゾンビ!】

【ガシャット! ガッチャーン! ゾンビマキシマム!!】

【ボーン!ボーン!アンデッドボディ!ヴェハハハー!ヴェハハハー!】


「見るがいい。私の才能が生み出した最終到達点———『神によって不滅の肉体になった主人公が敵を次々と倒して無双する究極のチートゲーム』……それがハイパー不滅だ。」

【ハイパー不滅!】

「グレード不滅———変身!」

【コーリング!】

ドッキングしたハイパー不滅ガシャットの天面ボタンを———押す!

【フッカーツ!フゥゥメェェツゥゥ!】

【蘇れ!尽きぬ命!アンチェイン最強ゲーマー!ハイパー不滅!ゲ・ン・ムー!】

「あぁ……!」

低い吐息と共に降臨したのはゾンビゲーマーの如くフェイスにM字の前髪が特徴的なロングヘア。ピクセルの造形にも見える白い星が張り付いた不死身にして不滅の最強ゲーマー。

仮面ライダーゲンム…ハイパー不滅ゲーマー!



〜〜〜〜〜



「…….アイツら。」


苦笑のようながら、喜びを隠しきれない様子でそう呟く1人の男。

モノクロのガジェットが挿さった、金と赤で装飾されたドライバーを装着する。

【エボルドライバー!】

【オーバー・ザ・エボリューション!】


エボルドライバー、そしてエボルトリガー。宇宙を統べるパワーを秘めた究極のドライバー……

そして特殊な形の缶を取り出し、起動する。


【マッチョ! フィーバー!】

【マッスルギャラクシー!!】

【『ブラ!』「チャオ!」 】


ドライバーに付いているレバーを回すと、透明なパイプに蒼い液体のような物が流れている。そしてそれは、人型を形成した。

【Are you ready?】

彼は一度、「両腕をクロスさせて」掌で拳を受け止めて戦闘ポーズをとる。


「変身!!!」


【銀河無敵の筋肉ヤロー!! クローズエボル!!】

【『パネーイ!』 「マジパネーイ!!」】


————蒼黒の竜蛇……仮面ライダークローズエボル。


【READY,GO!】

【「ギャラクシーフィニッシュ!!」】


黒が滲む蒼きブラックホールが無数に現れる。この穴1つ1つが星1つを呑み込み、自らのエネルギーへと換えてしまう恐ろしいモノ。

それを天高く……


「うぉぉぉぉぉ!!!」


放つ。








天と地———その中間地点で大きく打つかる無数の力。



「「「「「俺が……最強だ!!」」」」」




世界は今日も平和である。


何故なら……神の命を受けた「最強の仮面ライダー達」がいるから。





 
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