X ーthe another storyー
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第二十四話 未来その九
「一人だよ」
「彼だけの」
「前の代からね」
「確か彼のお母さんの」
「星ちゃんのお母さんは星ちゃんを愛していたから」
それ故にというのだ。
「桜塚護になったら先代の関係者を皆殺さないといけないの」
「口封じでしょうか」
「それと清めかしらね」
「先代の血の穢れを清める」
「その為にね、けれど血の穢れを清めても」
「殺めるのでは」
「殺した人が穢れるわね」
血の穢れ、それでというのだ。
「それでね」
「自分の息子さんに必要以上に穢れて欲しくないので」
「お母さんは一人でね」
「桜塚護となったのですね」
「そして誰よりも愛していた星ちゃんにね」
「息子であるあの人に」
「進んで殺されたんだ」
そうだったというのだ。
「星ちゃんがそれに相応しい力を備えた時に」
「抵抗しないで」
「そうだったの、そして星ちゃんもね」
「自分が殺されても」
「その殺した人が自分以外の誰も殺さない様にね」
そうなる為にというのだ。
「星ちゃん一人だよ」
「桜塚護は」
「そうなのよ」
「そうなんだね」
「今の桜塚護は星ちゃんだけだっていうのは知ってたよね」
「けれどそうした事情があったとは」
それはとだ、牙暁も答えた。
「知らなかったよ」
「星ちゃんはね、自分では誰も愛していないって言ってるよね」
「人を傷付けても何も思わないとも」
「違うから。星ちゃんが気付いていないだけで」
「実はだね」
「昴流ちゃんも私もね」
二人共というのだ。
「愛していてね、自分の活動の中で見代わりになった生きもの達もね」
「そういえば獣医でしたね」
「手遅れの子だけ。楽にそうなる様にして」
「配慮していて」
「そして皆ちゃんと葬ってたんだよ」
「そうでしたか」
「愛するものがない、痛みを感じないんじゃないんだ」
彼、桜塚星史郎はというのだ。
「気付いていない、いなかったかな」
「今はだね」
「気付いてるかも知れない、桜塚護は自分を最も愛してくれている、愛している人にね」
「殺されるんだね」
「殺してなるものよ、運命では昴流ちゃんが星ちゃんを殺して」
そしてというのだ。
「桜塚護になる筈だったの」
「それを君がだね」
「昴流ちゃんの代わりに行ってね」
「君が彼を殺せば」
「それならそうなっていたわ」
「君が桜塚護に」
「そうだったけれどね」
北斗は牙暁ににこりと笑って話した。
「敢えてね」
「彼に殺されたんだね」
「そうしたの、それでね」
そのうえでというのだ。
「彼に術をかけたし」
「術?」
「うん、星ちゃんも助かって欲しいから」
「けれど彼は君を」
「そうだけれどね」
殺した張本人だがというのだ。
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