イベリス
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第百五話 何の為に学ぶかその六
「出来ないだろ」
「そうよね」
咲もそれはわかった、毒親という言葉があるがこれは今出来た言葉だ、しかし以前からそう呼ばれるべき親はいたのだと内心思いつつだ。
「絶対にね」
「子供は親の背中見て育つって言うな」
「若し碌でもない毒親だと」
「まともに育つことはな」
「ないのね」
「反面教師にでもしないとな」
そうでもない限りはというのだ。
「もうな」
「そうなるのね」
「ああ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「今話している人もな」
「そうなったのね」
「それで働かない、つまりずっと引きこもりみたいな」
「ニートだったのね」
「昔で言うとヒモか」
「奥さんに食べさせてもらっていたから」
「そんな風で五十年以上生きて来たんだ」
そうだったというのだ。
「それじゃあな」
「子供のままだったのね」
「碌でもない親に育てられた」
「だからそんな人になって」
「それでここまで酷いとな」
それならというのだ。
「救われるなんてな」
「どんな宗教でも思想でも」
「ない、その宗教にお世話になっても」
「文句ばかりで」
「他の宗教はどうか言うがな」
「どうせ他の宗教にいっても」
「同じに決まってるんだ」
救われないというのだ。
「何処でも感謝しないで文句ばかりだ」
「いいと思わないのね」
「何かをいいと思うにもな」
こうしたことについてもというのだ。
「経験が必要なんだ」
「いいものをいいと思う」
「今話している人は野球のことでもな」
「文句言ってたの」
「ある選手がいい活躍をしても」
それでもというのだ。
「一年や二年だったとかばかりでな」
「駄目だって言ってたのね」
「それこそ長嶋さんみたいな」
「活躍しないとなの」
「いいと言わなかったんだ」
「長嶋さんみたいって」
咲もそう聞いて眉を顰めさせた。
「普通の人はね」
「無理だな」
「そうよね、それにそう言う自分は」
「今話している通りの人だ」
「何もないのよね」
「それでそう言うんだ」
野球についてもというのだ。
「長嶋さんみたいな活躍をしないとな」
「駄目だって」
「ちなみに巨人ファンだったらしい」
「ああ、あのチームね」
咲はそう聞いて急激に冷めた目になって言った。
「それで長嶋さんみたいでないと」
「一シーズン二十勝しても一年や二年だと駄目とかな」
「自分は何も出来ないのに」
「そう言ってたんだ」
「そうした人ね」
「兎に角活躍をしてもな」
それでもというのだ。
「普通に文句を言うんだ」
「自分は何もしないし出来ないのに」
「それでそう言ってたんだ」
「そんな人だったら」
「今いる場所に文句を言ってな」
それでというのだ。
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