DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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別世界より⑦
<グランバニア>
一同が集まり静まりかえる室内…
ここはグランバニア城の会議室。
リュカ一家に関わりのある者を呼び寄せ、今後の事を話し合おうと言うのだ。
顔触れは以下の通り…
招集を命じた女王リュリュを筆頭に、国務大臣のオジロンや宰相のポピー、グランバニア軍務大臣のピピンと妻のドリス、リュカの愛人スノウとピエール…
更にはラインハットより兄王のヘンリーと息子のコリンズ、リュリュの母フレアとサンチョ…そしてマーサ。
皆が暗い表情の中、スノウが気の抜けた声で話し出す。
「ねぇ、何なの…ワザワザみんなを集めて!リュー君がまだ戻って来れないのは知ってるわよ!」
リュカ達の情報は随時知らされる事になっており、此処に集まった者全員が既に把握している。
「そうですね………でも、だからこそ話し合わなければならない事があります!」
めんどくさそうな態度のスノウを無視して、リュリュは真面目な表情で話を続ける。
「スノウさんの仰った通り、お父さん…リュカ陛下は未だ戻る事は出来ず、異世界の騒動に巻き込まれたままです。私達は、異世界の騒動が収まれば、リュカ陛下が戻ってくると考えてました…しかし、その確証は何もなく、またこちらから救出する方法も見えておりません!」
一同が視線を集中する中、物怖じすることなく危機感を語るリュリュ…
誰もが事態の深刻さに顔を歪めている。
「ごめんなさい…私が不甲斐ないばかりに…皆様にご迷惑をかけてしまって…」
リュリュの『救出する方法が無い』との言葉に、マーサが悲しそうに謝罪する。
「マーサ様…お気になさらないで下さい!マーサ様の所為ではございません!」
「ありがとうサンチョ…」
此処に居る誰もが、マーサを責める事はない。
彼女だけにどうにか出来る問題では無いから。
マーサもそれは分かっている…それでも謝らざるを得ないのだ。
「………それでリュリュ陛下。今後の事と言うのは、どういう意味ですかな?」
友好国ラインハットの兄王ヘンリーが、リュリュに向き直り問いかける。
「はい。当初、この事態がこれ程に長期化するとは思ってませんでした。また、多少長期化しても、国政は安定させてられると考えておりましたので、長期化への対策は講じておりませんでした」
「確かにそうですが…しかし、その点は現状においては大丈夫だと思われますが…?」
「いいえ、ピピン大臣。リュカ陛下の打ち出した城下町の開発事業が滞り始め、住民に不満が出始めております!このままだと口だけ達者な貴族等に頼り出すかもしれません」
リュカが進める城下町開発事業とは、グランバニアの城下町を拡張し、民の生活向上を行う事である。
詳しく説明すると…
グランバニア城から北へ15キロ程にある海に、大規模な港を建設し、更には南に聳える山脈に流れる川を集約し、海まで巨大な運河を通した。
また運河と平行して、城と港を結ぶ大きな街道を造り、人々がそこを中心に生活・発展する様に整備した。
大きな港と運河を使い物資を運搬する為、町は瞬く間に発展し、人口も爆発的に増えているのだ。
ある程度人口も増え町が発展してきた所で、リュカは新たな事業を展開させ民の暮らし向上に寄与する。
それは移動手段の確保である。
リュカ曰く「南北に発展するだけじゃ中途半端だし、見た目格好悪いよね!だから東西にも発展する様に、大人数の移動と、大量の物資を移動できるようにしようと思うんだ。その為に、どっかの洞窟で見かけたトロッコを応用しようと思うんだよ。アレに動力を付けて連ねれば…ほ~ら、列車の完成さ!」と言って、大まかな蒸気機関車の設計図を大臣や官僚・その他専門家に見せて、急ピッチで制作させたのだ。
列車はグランバニアの城下町を大きく回る様に円を描いて走っており、正式に運行を開始して3年になる。
南北に通る街道沿いに人口が密集していたのが、瞬く間に東西にも広がり、グランバニアの人口は増加していった。
そうなると、更なる生活向上を要望するのが住民であり、列車という便利な乗り物を増やして欲しい…つまり、路線を増やす事を望み出す。
都市開発事業及び、沿線開発事業は莫大な利権が関わる為、企業等と手を組んだ官僚や貴族が、自己の利益のみを求めて国王に開発計画案を持ち込む………
世間一般 (?)の国王なら彼等の口車に乗り、誰も必要としてない沿線開発を行ってしまうのだろうが、グランバニアの場合はそうは行かない。
国王であるリュカは、自らの足で現地を見ており、自らの耳で住民の声を聞いている。
どんなに口の達者な官僚が説得しても、無駄な開発計画を了承する事はなく、城下町造りは完全にリュカの監督下で進められているのだ。
しかしリュカが居ない今、開発計画を現在進行している現場以外で、新たに開発を行う事が出来ないでいるのだ。
リュカの持つビジョンに則さない開発を行う訳にもいかず、住民が増える一方で住みづらい町のまま放置されているのが、現在のグランバニア城下町なのである。
「しかし…現状で勝手に開発計画を進める訳にもいくまい…」
「私もそう思ってましたピエールさん。でも住民さん達と直接お話をして思ったんです。このままでは、グランバニアの城下町が住みづらい町になってしまうのでは…と!」
一同が真剣な表情になりリュリュを見つめる。
「で…では、どうしようと言うのですか?」
「はい、ドリスさん。お父さんがやろうとしていた開発計画を、私達で進めて行こうと思います!」
決意を込めたリュリュの発言…誰もが容易ならざる事だと考える。
「し、しかしリュリュ様…坊ちゃんが戻ってきた時に、勝手に国家事業を進めていたと知ったら、お怒りになるのではありませんか!?」
(ドン!!)
リュリュはサンチョの言葉を聞くや、急に机を叩いて立ち上がり、怒りの含んだ瞳でサンチョを睨む!
「いくらサンチョさんでも、私のお父さんの事を侮辱するのは許しませんよ!お父さんはそんな事で怒ったりはしません!むしろ頑張った事を褒めてくれるはずですし、成功させれば尚更です!」
リュリュの勢いに、愛人等以外がたじろいでいる。
「皆さん勘違いしてます!お父さんは国家開発事業を、誰にも手出しさせない様にはしてません!ただ、お父さんの思考に追いつく様な人が居らず、手を出しづらい状況になっているだけですから!」
「良く言いました!流石は私とリュー君の娘です!必ずリュー君は帰ってきます。その時までにグランバニアをより良く発展させましょう!その為に私も尽力します」
リュリュの母、シスター・フレアが目を輝かせ立ち上がり、娘を褒めちぎる。
「その通りだ!私達が協力して取り組めば、リュカの行おうとしていた事の一部くらいは手伝えるはずだ!リュカが帰ってきて、民の国に対する不満を聞いたら、奴は悲しむはずだ…私達でそれを回避させようではないか!」
ピエールがシスター・フレアに続き立ち上がり吠える。
「わ、私もリュー君に褒められたいから頑張るわ!」
何やら不純な動機だが、スノウもやる気を出し強力を誓った。
リュカが思い描いている効率的で理想の町造りを、お飾りのハズの女王が意志を汲み取り進めようとし始めた。
「皆さんありがとうございます。ではマーサ様…マーサ様にはポピーちゃんに協力して宰相のサポートをお願いします…お父さんの救出が上手くいかない以上、そちらよりもこちらの世界の事を優先して下さい」
リュカが異世界へ吸い込まれてから1年半が経過している…
その間、何ら進展のないマーサにはキツイ台詞であるのだが、グランバニアを放置して混迷させるワケにもいかない。
だがリュリュが嫌味を言ったのでない事は分かっているマーサ…
それでも複雑な表情で受けるしか出来ない。
今や完全に女王としての権威を手に入れたリュリュは、決意も新たに動き出す。
大好きな父が行おうとしている、偉業を成就させる為に。
後書き
あれ?
リュカ…もう要らなくね?
リュカとかけまして、娘のリュリュと解く、
その心は、
どちらも大きなチチ(父・乳)が大好きです!
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