シュレディンガーの鼠
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第二章
「この鼠は五十パーセントの確率で、です」
「助かりましたね」
「原子が崩壊しないで」
「そうですね」
「はい、しかしです」
教授はその助かった鼠を見つつ話した。
「二度目はどうか」
「それですね」
「二度目は助かるか」
「それが問題ですね」
「その実験も行います」
こう言ってだった。
もう一度鼠を箱に入れてボタンを押した、それから一分経ち。
箱から出したが生きていた、そこで教授はまた言った。
「また五十パーセントの確率で、です」
「鼠は生きましたね」
「原子が崩壊しないで」
「そうなりましたね」
「そうなりました」
「いや、百パーセントだよ」
ここで何処からかこうした声がきた。
「これはな」
「百パーセント?」
「今誰が言ったんだ?」
「百パーセントって」
「誰がなんだ」
「俺だよ」
こう言ってだった。
鼠は後ろ足で立って右の前足を挙げて言ってきた、そしてこう言うのだった。
「実は俺鉄鼠なんだよな」
「鉄鼠?妖怪のかね」
「そうだよ、先生よく知ってるな」
「量子力学が専門だが妖怪にも興味があってね」
教授は実験用のテーブルの上で言う鼠に応えた。
「知っているよ」
「そうなんだな、じゃあ鉄鼠も知ってるな」
「確か毛が鉄の様に硬くなる鼠だな」
「そうだよ、俺はそうでな」
鼠はこの言葉と共にだった。
猫位の大きさの鼠色も真っ黒のそれになってだ、教授に言った。
「この通りの姿なんだよ」
「それで実験用のマウスの中に入っていたのか」
「遊びに行ってな、それで実験用に出されてな」
「私に使われたのか」
「ああ、それで俺は妖怪だろ」
鉄鼠は自分から言った。
「だからな」
「電気ショックでは死なないか」
「妖怪は滅多なことじゃ死なないからな」
その為にというのだ。
「俺もだよ」
「死なないか」
「そういうことだよ」
「ふむ、だからか」
「俺はこの実験でも死なないからな」
「何度しても無駄か」
「そうなんだよ、これが」
こう教授に話した。
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