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イベリス

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第百四話 八月の終わりその五

「それに越したことないわよ」
「そうよね」
「あとあんたは大丈夫だけれど」
 母はこう前置きして娘に話した。
「高校だし留年もね」
「あるわよね」
「まあ滅多にね」
「留年はないわよね」
「相当成績が悪くて」
 学業がというのだ。
「生活態度も出席もね」
「悪くないとよね」
「そうはね」
 まさに滅多にはというのだ。
「ならないわよ」
「そうよね」
「けれどね」
 それでもというのだった。
「やっぱりあるにはあるから」
「お勉強もしないとね」
「駄目よ」
 現実としてというのだ。
「また言うけれどあんたはね」
「大丈夫ね」
「成績学年でもいい方でしょ」
「まあね」
 咲も否定しなかった。
「自分で言うのも何だけれど上から数えた方がね」
「いいでしょ、だったらね」
 それならというのだ。
「大丈夫よ」
「私留年よりもね」
「大学ね」
「そっちの方をね」
 即ち進学をというのだ。
「考えてるしね」
「今からよね」
「そうしてね」
 それでというのだ。
「大学を出て」
「就職するのね」
「それで結婚して」
 そうしてというのだ。
「真面目にね」
「生きるのね」
「そうするから」
 だからだというのだ。
「お勉強もしていくわ」
「そうするのね、ただね」
「ただ?」
「あんたって真面目過ぎるわね」
「そうかしら」
「いや、多少のやんちゃもね」
 これもとだ、母は咲に話した。
「いいでしょ」
「やんちゃ?」
「そう、傾くっていうかね」
「悪いこともなの」
「することもね」
 これもというのだ。
「時にはね」
「いいのね」
「多少ね、人の道を踏み外さないなら」
 それならというのだ。
「もうね」
「それでいいのね」
「そうしたらいいのに」
「いや、私はお酒飲んで遊びもしてお洒落もね」
「してるからなの」
「やんちゃって言われたら」
 それはというと。
「もうね」
「他にはないのね」
「これといってね」 
 こう言うのだった。
「もうしてるから」
「いいの」
「私としてはしてるから」
「そうなのね、じゃああんたがそう思うなら」
「それならなの」
「いいわよ」
 それでと言うのだった。 
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